CHAPTER44【成し遂げたい事】
フィオのアローガンの弾丸が高速で崖に飛んでいく。弾丸が少し触れただけで、ダークの予想通り崖崩れが起き、雪崩がこっちに向かって流れてくる。
「よし!」
「よしじゃないでしょ!?」
ダークが太刀を正面に構え、フッと微笑む。そんな状況じゃないだろと言わんばかりにフィオが突っ込み、紫音と共に避難する。
「………。」
フィオと紫音が避難したのを確認すると、向こうからどんどん迫ってくる岩雪崩を見つめ、距離を測る。
「(雪崩が俺を潰しに来るまで、後1分……!)」
大きな音を立てて雪崩がどんどん迫ってくる。しかしダークは決して目を背けず、じっと見つめる。
「(あと47秒……!)」
ダークはふと目を閉じ、精神を集中する。その様子を遠くから見ていたフィオはダークがこれからやろうとしている事を何となく察していた。
「ダークのやつ……自分の目じゃなく、心の目で雪崩を感じるつもりなんだ………!」
フィオの言う通り、ダークは自らの目に頼らず、心の目であの雪崩を感じ取ろうとしているのだ。普通に考えればそんなことは並の人間なら出来るはずがないのだが、ダークは並大抵のキーブレード使いではない。それはフィオも紫音もわかっていた。
「(12秒……!3秒……!)」
そして、とうとう雪崩がダークに向かって降り注いだ。
「今だ!!」
そう叫ぶと共にダークは太刀を振りかざす。すると大剣に不思議な力が宿り、ダークがその大剣を振るうと、なんと雪崩の岩が全て跡形もなく砕け散った。
「えぇ!?」
「どういう事なんですか!?」
驚愕する二人。二人はダークの元に駆け寄り、ダークの顔を見る。ダークの表情はとても嬉しそうだった。
「成功だ………!」
「「えっ?」」
突然ダークが呟いた。その言葉の意味がわからない二人は顔を合わせる。どちらも『わからない』と言っているような表情だった。その様子を見たダークは二人の方を向き、言った。
「これが俺の新しい技、【烈火斬】だ!!」
「「烈火斬………!(かっこいい……!)」」
ダークがこのディープジャングルを訪れたのは、実はこの新しい技である烈火斬を修得する為であった。烈火斬のネーミングに思わず『かっこいい』と思ってしまったフィオであったが、ふと気になった事があったので、それをダークに聞いてみる事にした。
「そう言えば、なんで突然特訓するなんて言い出したの?」
確かにあと2日もすればみんな鈴神により下された任務で旅立つ。普通なら身体に無理をさせない為に安静にしているのが基本だが、この2日間でさえもダークは特訓に使うのは流石にわからなかった。ダークはその質問をされると、暫く黙っていたが、やがて口を開いた。
「強くなりたいのさ。みんなを守る為に。」
「えっ?」
突然ダークの口から放たれた言葉。あまりにも突然だった為、フィオは少し戸惑った。だが、ダークが放つ言葉には、何かしらの強い決意が感じられた。
「俺さ、今まで相棒やお前らと一緒にいたろ?その俺がやらなくて、誰がお前らを守るんだ?俺は少なくとも、俺はお前らを守る為に生まれてきたと思ってる。だから、背中は任せとけよ……その、親友だかんな!」
そのダークの言葉にフィオと紫音は勇気をもらった。ダークがいると本当に大丈夫という気持ちになれる。
「よーし、ならみんなで特訓しよう!みんなで強くなるんだ!!」
「「おぉーー!!」」
フィオの提案で、フィオと紫音もダークと共に特訓する事になった。この三人はお互いを信じあっているからこそ、こうして強くなれるのかもしれない。何時までも一緒にいるから、笑顔で楽しめているのかもしれない。特訓中、紫音の脳裏に突然過る声。
大切なのは、毎日会うことじゃなくて、お互いの事を何回想うかだ。記憶したか?