CHAPTER45【心に抱える不安】
一方その頃、ディズニーキャッスルの一室では沈黙が続いていた。先程のソラの発言から、驚くほど誰も話そうとしない。少し前にチップとデールが様子を見に来たが、みんなあまりにも深刻な表情だった為かすぐに去っていった。みんな不安なのだ。暗黒のキーブレード『ブラックパラデス』が現代に甦り、今も暴れているかもしれない恐怖に心が汚染されているのだ。その中でも鈴神は落ち着いており、数分前に読書を始めた。他のメンバーはと言うと、シュージは黙ったまま腕組をして目を閉じており、ライガは髪を少し整えている。だがソラだけはこの四人の中で一番不安感があった。
何故ならこの中でブラックパラデスの今の所持者を知っているのはソラだけだからだ。先程ソラはシュージにブラックパラデスの所持者について聞かれたが、みんなを不安にさせない為にあえて嘘をついた。この嘘が正しい事なのかはソラにはわからない。だが、どうしても引っ掛かる点が1つあった。
「なぁ……。」
長い間沈黙が続いていたこの場でついにソラが口を開き、みんなソラの方を見る。
「どうしても引っ掛かるんだけど、ブラックパラデスって封印されたんだろ?なら、なんで現代に甦ってるんだよ?」
「確かに………。」
「引っ掛かるな……。」
ソラが自分の意見を言うと、ライガとシュージも順に口を開いた。その時鈴神が読んでいた本を閉じ、テーブルの上に置いた。
「考えられる事は1つです。」
とうとう鈴神も口を開き、立ち上がった。みんなの視線はまっすぐ鈴神を見つめており、みんなの目は鈴神に『教えてくれ』と訴えているようだった。それに応えるかのように鈴神が再びゆっくりと口を開き言った
「DEDです。」
その鈴神の発言に衝撃が走ったが、その意見に納得せざるを得なかった。DEDはダークエンドドラゴンを神とする宗教団体。神であるダークエンドを復活させる事が目的ならば、ダークエンドの作り上げた遺物も復活させるのは当然と言えるだろう。
「しかし、これはあくまで仮設にすぎないので、DEDがやったとも言い切れませんがね。」
「という事は、悪い心を持った誰かが?」
「シュージさん、それもありますが、1つ引っ掛かる点があります。」
「引っ掛かる点?」
「はい。ブラックパラデスは先程申した通り、持ち主の心を操る力があります。なので悪い心を持った誰かだとしたら、すぐに手放すとは思えません。だとしたら、そんな簡単にDEDの手に渡るでしょうか……。」
「確かに……そうだな。」
「それにDEDだったとしても、結局は持ち主の心を闇の力で支配するので、DEDの団員だとしても、ブラックパラデスの意志で動くため、手放すのは考えがたいです。という事は、ブラックパラデスを所持しているのは、DEDの団員の誰か………!」
鈴神は落ち着いているようで実はそうとう焦っている。ブラックパラデスの所持者の推察だけですでに汗をかいている程に。ソラはこの時悩んでいた。
もしここで俺が本当の事を言えばこの会議はそこで終わる。だけどそうしたらみんな戦う気力を失ってしまう、それだけは嫌だ。
ソラは震える右手を左手で押さえ、鈴神に聞く。
「あの、ブラックパラデスが操れる心って、なんですか?」
ただ一人真実を知っているソラが鈴神に思いきって聞く。純粋な光の心を持つ彼がブラックパラデスに影響されてああなったのだとしたら、ヘルツと化したカイリももしかしたらブラックパラデスに触れて闇に落ちたのかもしれない。そう思った矢先、鈴神の口から信じられない言葉が発された。
「ブラックパラデスは――――――心に光を持つ者の心を塗り替えて、操ります。」
「えぇっ!?」
「どういう事だ!?」
「つまり、ブラックパラデスは闇以外の心を塗り替えて、そのまま操っているのです!」
「なるほど………。」
「つまり、心に少しでも光があればブラックパラデスに操られるという事か……。」
「ちょっと待てよ!って言う事はカイリは!?」
「かもしれませんね。」
ソラが叫ぶようにして話すと鈴神が口を開き、言った。
「ブラックパラデスは確かに手放すと記憶を消しますが、それは持っている期間が長ければ長いほどです。多分カイリさんはブラックパラデスを握らされ、すぐに手放しましたが、すでに心は塗り替えられ、ソラさんとの楽しい思い出のみが消えたのだと思われます。その上で操られたのかと」
ソラは鈴神の発言にとてつもない絶望感を覚えた。自分との思い出が全て消えたと言われると、悲しくて仕方がない。だが、それと同時に改めてカイリを救うという決意を固められた。
「あのさ……。」
ライガが突然口を開いた。他の三人の視線がライガに集まる。
「さっきのブラックパラデスの話を聞く限りだと、逆に言えばアンチネス見たいに闇の塊なら操られないって事だよな?」
「っ!確かに!」
「(という事はレイは、アンチネスの誰かに渡されたのか………!?)」