CHAPTER49【波瀾】
クロナとリクは不気味な城の城内に出た。辺り一面真っ黒で、物音1つしないこの城からは邪悪な気配を感じる。恐らくDEDの城だろう。
「ここに、ナミネさんがいるんだよね?」
リクは軽く頷き、クロナはキーブレードを出現させ、すぐにでも戦えるように備えた。
「じゃあ、行こう!」
「ちょっと待て。ここにとある仲間達がいる。」
リクがそう言うと同時に何処からか足音が聞こえてくる。やがてその足音の主はこちらにやって来た。それは銀色の断髪で藍色の目、若干クロナより身長の低い少年だった。その後ろから藍色の断髪で銀色の目、身長も先の少年と同じくらいの少年が走ってきた。こうして見ると二人は兄弟みたいに瓜二つであり、片方若干タイミングは遅れた物の、二人はリクの顔を見上げる。
「リク!」
「無事に来れたみたいだな!」
「あぁ。」
二人はどうやらリクの言う仲間のようだ。リクがクロナに二人を紹介する。
「紹介する。フウリとライヤだ。」
「よろしくな!」
「お互い頑張ろうぜ!」
藍色の髪の方がフウリ、もう片方がライヤというらしい。クロナは二人に笑顔で微笑みかけた。するとフウリの顔が突然赤くなった。
「どうした?」
その様子を不思議に思ったライヤがフウリの顔を覗きこむようにして聞く。
「………いや、何でもない(クロナって子、可愛いな)。」
「?」
「まぁ良い。ここからは2手に別れよう。まとめて見つかると面倒だ。俺は単独で行くから、三人は別のルートからナミネのいる牢獄を探してくれ。」
「「「わかった!!」」」
そうして、リクは上に、三人は下の階層へと向かう。途中、アンチネスの襲撃にあった物の、フウリがなんとキーブレードを出し、速攻で倒した。
「そのキーブレード、どうしたの?」
疑問に思ったクロナはフウリに聞く。するとフウリは歩きながら答えた。
「ずっと前に青い髪のお姉さんから継承してもらってな。ライヤもおんなじだぜ。」
「って事は二人とも!?」
「あぁ。キーブレード使いだ。」
リクの仲間である二人はなんとキーブレード使いだった。信じられないが、フウリがキーブレードを出した以上は信じるしか無いだろう。クロナ達三人はそんな話をしながらどんどん下の階層へと降りていく。
一方リクは、アンチネス達を自分の心の闇を象徴する武器、ソウルイーターで蹴散らしながら上へ上へと駆け抜けていた。リクが走っていると、突如目の前にとある人物が現れた。
それはヘルツだった。それにはリクも驚きを隠せず、ソウルイーターを消してしまった。
「リク、久しぶりね。」
「お前、本当にカイリなのか………?」
同様したリクの声。それを嘲笑うかのようにヘルツが高笑いをする。
「リク、違うよ。私は『ヘルツ』。地獄の声を聞くもの。『カイリじゃない』の、生まれ変わったの!」
「違う!お前はカイリだ!!俺達の………親友だっ!!」
リクの訴えにもヘルツは耳を貸さず、闇のキーブレード、デスフェンリルを構える。その時ヘルツの後ろにある階段から黒いコートを着た誰かが降りてきた。それは新入りの機関メンバーの中では三番目のメンバーであり、DEDの幹部の一人、クラクションだった。
「どうしたヘルツ?」
クラクションが茶色いセミロングの髪をいじりながら聞く。ヘルツがリクを指差し、クラクションはリクを見る。その時クラクションはすぐに理解した。
「なるほど。敵ね。」
「そう言う事。」
「よし!じゃあ久しぶりに試合開始と行くか!」
その言葉と共にクラクションが指を鳴らすと、瞬間的にクラクションの足元に鋼で出来た球体のような物が現れた。大きさからするにサッカーボールだろうか。クラクションはよくサッカーの練習をしている為、この武器になったのだろう。
「くっ!」
リクはヘルツに気を取られ攻撃出来ない。仮にも親友なのだから。それにここでカイリを傷つけたとなればソラに怒られかねない。クラクションはその内に鋼のサッカーボールをリクに向けて蹴っ飛ばした。ボールは見事リクの腹に命中し、リクは口から多少の血を吐き出してしまった。
「フッ、まずは一点だ!」
リクは腹を押さえながらもなんとか立ち上がる。だがすぐにヘルツの攻撃が降り注ぎ、また倒れた。立ち上がる度にクラクション、ヘルツの順で攻撃され、成す術が無い。
「あっ、あそこ!」
その頃、クロナ達は牢獄への階段を発見していた。その階段を降りてみると、そこには大量の人が囚われていた。
「なんてこった!」
ライヤはその言葉とほぼ同時に自分のキーブレードを出現させ、1つずつ檻の鍵を開いていく。どんどん檻の扉は開いていき、囚人達は喜びの歓声を上げながら逃げていった。
囚人達が見事に逃げ出し、この地下牢には静かな空気だけが残った。囚人達がいなくなった為に静まり返ったのだろうが、それと同時に張り積めた空気も流れてきた。フウリが奥の方にある扉に気付き、開けると、そこにはナミネがいた。その事を伝える為にフウリは二人に呼び掛ける。
「オーイ!見つかったぞ!」
フウリがその言葉を言い切った瞬間、赤い大鎌がフウリを襲った。フウリは辛うじて避けた物の、ナミネのいる檻への道は大鎌の持ち主、アレクセイによって阻まれてしまった。
「大丈夫!?」
クロナがフウリを心配し、駆け寄る。フウリは冷静に頷き、アレクセイの方を見る。
「いつ現れやがった………!?」
「ヘイそんなこともわかんないのか?待ち伏せだよ、待・ち・伏・せ。」
大変わざとらしく言ったアレクセイ。その挑発的な態度に思わずライヤは激昂したくなったが、冷静さを失っては元も子もないので、とりあえずは自分を落ち着ける。そしてライヤはフウリを見て、フウリは頷き、ライヤはクロナに言った。
「クロナ、ナミネを連れて逃げろ。」
「ここは俺達が引き受ける!」
二人の言葉にクロナは躊躇する。二人は確かに強いようだが、アレクセイはもっと強い。つまり、下手をすれば死んでしまうかもしれないのだ。そんな恐怖がクロナを襲う。クロナは一瞬俯いたが、改めて顔を上げて二人を見た。その表情はやる気で満ち溢れていた。その表情に見ていると、不思議だが安心出来る。
「うん……わかった!!」
そう言ってクロナはフウリとライヤにアレクセイを任せ、ナミネを拘束している鎖をレイピアのようなそのキーブレードで砕いた。
「大丈夫?」
「貴女は?」
「大丈夫。リクの仲間よ。」
「リクの!?」
クロナは頷く。アレクセイと戦っている二人を一瞬だけ見つめ、視線を戻し言った。
「さぁ、行こう!」
そう言ってクロナはナミネの手を引いて走り出す。アレクセイは大きな舌打ちをして後を追いかけようとするが、それはフウリとライヤによって阻まれた。
「邪魔だぁ!!」
大鎌による攻撃の連続に追い詰められる二人。アレクセイが止めの一撃を放とうとしたその時、突如とある黒いコートを着た人物が割って入り、攻撃を防いだ。それは以前、クラクションと話していた関西弁の機関員だった。
「何故そいつらの味方をするドアクロス?」
「あんたには関係あらへん!」
ドアクロスという機関員が何故こちらの味方をするのかはわからないが、これは絶好のチャンスだ。二人は今のうちに地下牢を脱出し、クロナとナミネを探す事にした。
《非常事態発生!非常事態発生!》
城全体に鳴り響く警報、それを聞き、クラクションとヘルツはその場を去った。訳がわからないまま、リクは仕方無く闇の回廊を使って撤退する。
「オーイクロナ!ナミネ!」
フウリ、ライヤがクロナ達と合流した。だがその時すでに大量のアンチネス達に囲まれていた。
「くっ!こんなときに!」
「一気にかたずけよう!」
三人がキーブレードを構え、戦おうとしたその時、またもドアクロスが現れ、アンチネス達を凪ぎ払ったあげく闇の回廊を開いた。
「「「えっ!?」」」
「ここから逃げるんや!早く!」
何故か助けてくれる機関員でもありDED幹部でもあるドアクロス。四人は言われるままに回廊へと飛び込んだ。
「無事に………生きるんや!」