CHAPTER60【6皇帝】
俺達三人はこの世界の何処かにあるはずのDEDの拠点を目指し走り続けている。だがその途中、何度も何度も先程と同じ種類のアンチネス達が行く手を阻んでくる。
「邪魔だ!」
目の前にアンチネスが現れる度にキーブレードであるブラックパラデスによって切り裂かれていく。俺が先頭を走りつつ邪魔してくるアンチネスを蹴散らし、その後ろをクロナガがついていき、ライガがそれをバックアップしている。
「レイ君、凄い………!」
「たぶん、ブラックパラデスの力だろう……!」
走りながら二人は俺の事について話している。やはりその道中にアンチネス達は現れたが、ライガの放った雷の力を宿した霧、ボルティミストによってなんとかかわしていく。
「ライガもいい感じ!」
「まぁな!」
褒められたのが嬉しいのか、ライガは軽くウィンクをする。すると先頭にで走っている俺のスピードが突然増した。
「レイ君どうしたの!?」
「後少しだ。」
この世界の他の建物とは明らかに違う黒い建物が見えてきた。恐らくあれがDEDの拠点だろう。俺が拠点の扉を壊そうとしたその時、上から何かが落ちてきた。
それはクラクションだった。クラクションは見事に着地し、俺達を見る。
「始めましてだな、凡人ども。」
いきなりこちらを見下すような態度を取るクラクション。この男、顔といい、性格といい、かなりプライドが高いようだ。
「俺はクラクション。神に選ばれし闇の組織、DEDの6皇帝の一人だ。」
「6皇帝?」
「やはり知らぬか。凡人どもめ。良いだろう。お前ら下級戦士でもわかるように説明してやる。」
と言うとクラクションは足元にあったメタルボールを空に向かって蹴っ飛ばし、メタルボールが空中でピタッと止まった。するとメタルボールからモニターのような物が現れ、ビジョンを写し出した。
「6皇帝とは、DEDの中でももっとも優れた者達6人によって構成された、幹部達だ。わかるな?もっとも、所詮貴様らに俺の言う事など到底理解出来ぬか。」
またもこちらを見下すような態度。よく見るとクラクションのメタルボールが写し出しているビジョンに所属メンバーが記されていた。
『無愛のアレクセイ
失望のベクセス
追放のクラクション
孤独のドアクロス
失恋のヘルツ
憧れのヴィヴァード』
「これはそれぞれの称号を表している。これに書かれている通り、俺の称号は『追放のクラクション』という事だ。」
クラクションの話やあのビジョンに写っている文字を見て、ライガはすぐに疑問に思った。どれも明らかにマイナスのイメージが強い称号ばかり。強いのなら何故こんな称号になったのか、ライガはとても気になったので、クラクションを睨みつつも聞いた。
「おい、何故お前の称号が『追放』なんだ?」
「ほう、流石に気になるか。良いだろう、教えてやる。まず俺達6皇帝は、人間ではない。」
「「何!?」」
「まさか、アンチネスか?」
「流石はレイだな。勘が良いぜ。そう、俺達6皇帝は皆アンチネスなのだ。まぁ、ヘルツの場合はベクセスに突き動かされているから例外だがな。」
「カイリさん………。」
「だが何故俺達は人の姿なのか?それは俺達が元々人間だったからだ。俺達6皇帝は、DEDに加入するに辺り、皆何かしらの強い絶望、憎悪を経験して集まっている。つまり、6皇帝は皆が皆、怨念の塊なのだ。」
「何!?」
信じられない事実がたった今明かされた。なんとアレクセイやベクセスを始めとした6皇帝はヘルツを除いた全員がアンチネスであり、みんな何かしらの辛い経験をしているというのだ。
「俺の苦しみ、それは、サッカー界を追い出された事。」
クラクションが当時の事を思い返しながら語る。
「今から5年ほど前、俺は全世界から注目を集めるほどのプロサッカー選手だった。
俺が出た試合は全戦全勝。俺がいるチームはほぼ確実に勝利すると言われていて、まさに俺はあらゆる世界から引っ張り凧だった。
だがある時、悲劇は起こった。俺が当時入っていたチームは、世界大会の決勝戦まで進んだ。だが、俺の仲間達が決勝戦の前日に対戦相手であるチームのメンバーに大怪我を負わされてしまった。
俺は思わず怒り狂い、仕返しにと相手チームのメンバーを数人殺害した。だが、その様子をほかのやつが録画していた。当然そいつはその映像を国際警察や大統領に届け、俺は懲役60年の判決と、永久にサッカーが禁止となってしまい、逮捕されてから僅か1ヶ月で俺は1度死んだ。だがあのお方が俺を助けてくれたお陰で、俺の存在がアンチネスになろうとも、俺はこの世界に、この残酷な世界に復讐するチャンスを得たのだ!」
「ふざけないで!!」
強く叫んだのはクロナだった。クラクションの話を聞いて、凄く激怒している。
「確かに相手チームの行為は許せないと思う、仕組まれてたってのも、悔しいと思う。だけど、なんでそこで真実を言わなかったの!?みんなにわかってほしく無いの!?」
クラクションに対するクロナの説教。その様子を横で見ていた俺にもその気迫が伝わってくる。しかし、その気迫や想いもクラクションには届かず、クラクションは新たなメタルボールを足元に構え、戦闘体勢に入った。
「俺も真実をわかってほしかったさ。だが、世界政府はきっと信用しない。そう思ったから俺は諦め、自殺した。だが、それをあのお方が助けてくれたのだ!」
「あのお方って誰よ!?」
「フン、お前らのような下級戦士には教える価値も無いわ!」
そう言ってクラクションはメタルボールを俺に向かって蹴っ飛ばす。それを辛うじて弾き、キーブレードを改めて構え直す。
「レイ君……?」
「レイ……。」
「覚悟しろ、クラクション………!」