CHAPTER62【迫り来る者】
突如聞こえた謎の声ぬ主は]V機関のメンバー、サイクスだった。サイクスは機関の中でもかなりの実力者で、機関のリーダーであるゼムナスの補佐も勤めている。
「何の用だ?」
「そう身構えるな。俺はお前達を迎えに来たのだ。」
「何?」
サイクスの放った意味不明な言葉。それに動揺する一同。
「]V機関は、今となってはDEDの監視下にある。つまり操り人形同然という事だ。だから、お前達の力を借りたいのだ。」
相変わらずの無表情。今思えば機関とDEDには何かしらの繋がりがあることくらいは仄めかされていた。しかし、その繋がりがまさか裏で機関を操っている黒幕だとは誰も思わなかっただろう。
それらを考えると、当然機関の中にも一人や二人反逆者が出ても可笑しくない。恐らくサイクスもその一人だ。だが、何かおかしかった。あのサイクスがこんなにすんなりと協力してくれなんて言うだろうか。単純な脳味噌のソラでもすぐにその怪しさに気が付き、キーブレードによる攻撃を仕掛けた。
しかしその攻撃はサイクスの武器であるクレイモアによって防がれた。
「わかっていたか。」
「まぁな!」
クレイモアからキーブレードを離し、ソラは後ろに下がって距離を取る。
「あんたがDEDを倒してから俺達を倒そうとしてた事くらい、わかってたさ!」
ソラの発言にみんな頷く。サイクスはかなりの策士であるため、彼の行動には必ず裏がある。それを思い出したソラは見事サイクスの計画を今壊す事が出来た。
「みんな、先に行け。ここは俺が引き受ける。」
「えっ?」
「フィオ、みんなを頼むぞ。」
ソラはなんとサイクスを引き付けている間に先に進めと言い出した。しかもフィオに他のメンバーの事も任せたようで、フィオは流石に動揺し、1度振り返り、みんなの顔を見てみると、みんな笑顔で頷いてくれた。眠っている紫音もゆっくりと頷いてくれた。それを見たフィオの心から迷いが消え失せ、頷いた。
「わかった!無事でいてよ!」
そう言ってフィオを先頭にソラを除く一同は再び走り出した。ソラはそれを笑顔で見届けた。
一方その頃、ユナイテッドサテライトにあるDEDの拠点入り口前では大量のメタルボールの雨が俺に降り注ぎ、その1つ1つが身体の所々に音を立てて命中し、右肩を負傷してしまった。クラクションが大量のメタルボールを空中から蹴り落として来ているのだ。クロナとライガがクラクションに近づこうとしても、先程のアンチネス達がそれを阻んでくる。
「フッ、どうした?もう終わりか?」
クラクションが自信たっぷりに言って見せた。その証拠にメタルボールでリフティングをしている。しかし、クラクションが油断しているその隙を俺は見逃さなかった。
「そこだ!」
キーブレードによる突き攻撃。だがそれもクラクションが放った守りの魔法、リフレガによって簡単に防がれた。
「くっ!」
「フッ………。」
俺の攻撃がリフレガで押さえられている内に、クラクションはメタルボールを使って俺を吹っ飛ばした。
「うわぁ!!」
「「レイ(君)!!」」
思わず地面に這いつくばる。倒れた状態から立ち上がろうとするが、クラクションは非情にも倒れている状態の俺の顔面に何度もメタルボールを蹴りつける。
「レイ君っ!!」
「なんてこった……あいつ、本気でレイを潰す気だ……!」
何度も何度も顔面にメタルボールがヒットする音が響く。とてつもない苦痛でありながら、それでも尚立ち上がろうとする。
「まだ諦めぬか!!」
クラクションは怒りの感情をアラワにし、メタルボールを空中に蹴りあげて、そこからオーバーヘッドストライクを繰り出し、ボールは凄い勢いで俺に向かっていく。
そのままメタルボールは顔面に命中……しなかった。目の前に現れた誰かに命中したようだ。
「………クロナ!?」
俺の目の前に飛び出して来たのはクロナだった。クラクションの渾身の一撃はクロナの腹に命中し、そこから大量の血が溢れてしまっている。クロナは今の一撃の反動で倒れかけ、それを間一髪受け止める。
「レイ………君…………無…事で……良かっ……た!」
「そんな……なんで!?」
俺は両目から涙が溢れてくるのも気づかずクロナに向かって叫ぶ。するとクロナは俺の頬に自分の手を当てて、笑顔で言った。
「決まって……るでしょ?私は………貴…方の……事、誰よりも好きだからだよ。だからお願い。私の想…い、受け取っ……て。」
クロナは最後の力で自分のキーブレード、シャインセイバーを出現させ、シャインセイバーは音を立てて地面に落ちた。やがて、クロナは気を失った。
「クロナ?クロナ……クロナ!!」
名前を呼ぶ数だけ身体を揺すって見るが、反応が無い。完全に気を失っているようだ。
「ッハハハハハ!!無様だな!だがお陰でキングダムハーツの巫女を始末出来たぜ。さぁ、次はお前の番だ!」
クラクションが俺を指差してそう言うと、俺はクロナを地面に降ろし、落ちているシャインセイバーを左手に持って言った。
「クラクション…………!お前は絶対許さないっ!!」