CHAPTER67【Sadness story 相棒の涙】
「クロナちゃん………大丈夫かな?」
クロナが眠っている病室にお見舞いにやって来たフィオと紫音。幼馴染みだからか、とても心配そうだ。その横にいる紫音はフィオの事ばかりを見ていた。
(フィオさん……とても心配そう……私に何か出来ないかな?)
そんな事を想い、今度は眠っているクロナの方を見る。まだ意識が戻っておらず、まるで大きな人形のようにピクリとも動かない。紫音はクロナの右手を強く握った。
「紫音?」
「フィオさんもお願いします。」
紫音に言われるまま、フィオもクロナの右手を握る。すると、何故だかわからないが、心の中の不安が消えたような気がした。
「なんだか、こうしてると…私達、『繋がっている』って気になりませんか?」
紫音が笑顔でフィオの方を向いて言った。その表情には先程のような涙も無く、はたまた険しい物でもなく、最初に出会った頃のような純粋な笑顔だった。
「………うん!」
フィオは笑顔で頷いた。フィオと紫音は病室を出て、そよ風村に向かった。
その道中、二人はとある話をしていた。
「……ありがとうございます。」
「へっ?」
突然紫音がフィオに感謝の言葉を放った。フィオは何故感謝されたのかイマイチ理解出来ていないようだ。
「突然どうしたの?」
「あのときのお礼がまだ出来ていなかったので…。」
「あのとき?」
「存在しなかった城で、フィオさん言ってくれましたよね?」
紫音は存在しなかった城での出来事を思い返す。
『僕が信じたものが偽りでもいい!!それが大いなる間違いだったとしても良い!!だって紫音は紫音じゃないか。僕の大切な紫音じゃないか!だから……………、いつも通り笑ってよ。』
あのときの言葉が今も紫音の心に響いており、深く刻まれている。
「あの言葉があったから、私はこうしてまた笑えるんです。ありがとうございます、フィオさん!」
「なんだか照れるなぁ……。」
フィオは顔を少し赤くして、紫音から視線を反らす。そろそろそよ風村が見えてくる頃だ。
「フィオさん。」
紫音が突然フィオの前に立ち、頭1つほど姿勢を下げ、なんと、
「…………っ。」
この瞬間、フィオの顔が完全に赤くなり、頭から煙が出てしまうほどに心臓の音が高鳴る。
「フィオさん!そろそろ行きましょう!」
そう言って紫音はそよ風村へ向かって走っていった。フィオは自分の頬を手で抑え、離してまた手のひらを見つめる。また顔が赤くなってきたが、フィオはブルブルと首を振り、紫音を追いかけるようにして走り出した。
一方その頃、二人の剣がぶつかり合う音がこの思い出の浜辺に響き渡る。二人ともかれこれ二時間くらいは戦っているが、両者、まるで体力の限界という物を知らないようだ。
「やるな相棒!」
「そっちこそ!」
「へっ、ならこれはどうだ?」
ダークが自らのキーブレードを天に向かって高く放り投げ、ダークもそれと同じくらいの高さにジャンプした。そしてそのままキーブレードを空中でキャッチし、俺に襲いかかる
「超天空!!」
ダークの必殺技が俺のキーブレードに当たる。交じり合う二つのキーブレードからは火花が飛び散っており、二人ともお互いを睨み合っている。
二人は後ろに下がり、距離を取ってからまた突っ込む。
飛び散る火花、揺れる感情、心の涙
様々な想いがこのバトルには存在する。クロナや俺、そしてダークの俺への、“レイ”への想いが。
「相棒!お前は俺を救ってくれた!覚えてるだろ!?」
「あのときの事?」
それは今からおよそ5年前、ダークはクロナがいなくなった事により、自暴自棄に陥っては町のガキ大将になってしまい、大人顔負けの不良だった。その為か他人を力で従わせ、自分に逆らう者には制裁を。そんな人間だった。
そんなある日の事。
『うわぁ!!』
今日も何時ものように町の子供をいじめているダーク。右手に持つ長い鉄棒をその子供に向かって振り下ろそうとしたその時、鍵のような剣が突如現れ、攻撃を遮った。
『何っ!?』
ダークが右に振り向くと、そこにはキーブレードを持つ俺の姿があった。当時のその純粋に光り輝く青い目はダークをしっかりと見ている。
『ダーク、何やってんの?』
『見ての通りだ。俺は弱者を葬る事にしたのさ。』
『弱者を葬る?』
その時、俺の表情が変わった。何時もの穏やかな笑顔ではなく、こちらを鋭い視線で睨んでくる、まさに悪を裁く裁判官のような真剣な眼差し。その目を見てダークは動揺した。
『ふざけないで!』
なんと俺はダークを開いていた左手で殴り倒した。ダークは殴られた頬を手で抑え、俺を見上げる。
『なんでそうなったのさ?弱者だって生きる価値はあるさ!!弱くても、人は信じれば幾らでも強くなれるよ!!そう、意味も無く生まれた人間なんて、いないんだ!!』
『!!』
『だから弱者を葬るのは止めろ!みんなで世界の可能性を見つけ出そ?このキーブレードが、俺達を導いてくれる!!』
ダークは彼のあのときの一言があったからこそ、今ここにいられるのだ。あのときの俺は光で満ち溢れていた。だが今となっては闇に魂を売ってしまい、変貌してしまっている。だからこそダークは、俺に向かって叫んだ。
「戻ってこい……レイ!!」