CHAPTER69【立ち上がれレイ!!奇跡のキーブレード】
「で、でかい!」
突如俺達二人の元へ降りてきた水色のドラゴンのような飛行アンチネス。アンチネスのマークが少し特殊な場所にあり、前足だけでも横幅が俺達の5倍ほどの大きさがある。もしあんなのに潰されてしまえば人溜まりも無いだろう。
「行くよ、ダーク!」
以前のような明るく優しい声でダークの名前を呼ぶ。だが、ダークは先程の戦いで相当疲労しており、とても戦える状態ではない。
「ダーク………。」
俺が心配そうにダークを見ている間に、ドラゴンアンチネスは雄叫びを上げ、さらにアンチネスを呼び込んだ。大量のアンチネス達は二人を一瞬にして取り囲み、絶体絶命の危機に陥った。
「くっ、もしこんなとき俺が……もう一人分動けたら………!」
悔しそうに言うと、突然自分の発言した言葉が妙に気になった。『もう一人』という単語が。
「まてよ……俺がもしキーブレードを同時に二つ扱えれば………でも、どうやって……?」
ふとダークの方を見る。ダークの剣はすでにキーチェーンが無くなっているので、使い物にならなくなってしまっている。次に俺が見たのは浜辺の方だった。その時、波打ち際に誰かの面影が見えた。
「えっ?…………っ!」
俺は忘れていたとある記憶を思い出した。
今から十一年も前、俺達5人は何時ものようにこの浜辺で遊んでいた。その時5人はチャンバラをすることになり、それぞれが武器となる物、木の枝等を探していた。俺は浜辺にもっとも近い場所に武器になりそうな物を探しに来ていた。
その時、波打ち際に立っている一人の青年を見つけた。古めだが、何処か武士のような雰囲気を感じる服装に、若干バックな髪形、青い目、そして勇ましい顔の青年は、波打ち際から海の向こうの夕日を見つめて何かを考えていた。
『俺は何故ここに……?さっきも同じような事が起きた。と言うことはまた……?』
『ねぇお兄さん!』
青年の後ろにはいつの間にか自分がいた。当時青年の下半身にも満たない身長の自分は夕日に煌めくその純粋な青い瞳で青年を見上げている。青年は自分の方へ振り向き、軽く微笑んだ。
その時だった。青年は彼の心から何かを感じた。
(この少年……ヴェンと同じだ………!)
『どーしたの?』
青年は自分の一言で我に帰った。軽く首を振ってから答える
『何でもない。』
自分はそれを聞いて安心したように笑った。
『お兄さん、良かったら一緒に遊ぼ?俺はレイって言うの!』
自分が青年へ向けてその小さな右手を差し出した。青年はその手を同じく右手で掴み、握手を交わした。
『俺はテラ。俺で良ければ参加するよ。』
『いやったぁぁぁあ!!』
テラが参加すると言うだけではしゃぎまくる。こんな単純な事でも喜ぶ自分を見て、テラはとある人物を思い出す。そう、兄弟弟子であり、親友であるヴェントゥス。テラは彼にヴェントゥスの姿を重ね、遊びに付き合う事にしたのだろう。
『じゃあテラ兄さん、俺達これからチャンバラだから、木の枝とか、そう言う武器になりそうな物を一緒に探して!』
『あぁ。』
そうして二人は早速武器になりそうな物を探し始める。俺は出来るだけ長い物を探すつもりだったのだが、テラは出来るだけ丈夫な物の方が良いと言った為、仕方無くテラの意見を優先して探した所、なんと二人の理想を両立した木の枝を発見した。
『やったよテラ兄さん!』
俺がその木の枝を持ち上げて笑顔で言った。テラはそれを見て笑顔で頷く。
その後俺は残り四人と合流し、テラは流石にチャンバラには参加出来なかったが、それでもテラのアドバイスの元、俺は四人を倒し、優勝する事が出来た。
もうそろそろ日が暮れるころなので、他の四人はそろそろ帰る事にし、俺は四人に元気よく手を振った。
『なぁレイ。』
『?』
テラが突然右手を前に出し、なんと鍵のような剣、キーブレードを出現させ、両手で持ってから自分に高さを合わせるようにしてしゃがみ、キーブレードの取手を俺の方へ向けた。
『この剣を手にしてみろ。』
『うわぁなにこれ!?格好いい!!』
キーブレードを初めて見て感激する自分を見て、テラはフット笑いヴェンに自分が似ている事を改めて見ていた。
『だろ?この剣はお前に力を与えて、いずれあの友達、いや、世界中の人々を救う力と勇気が、お前の中に宿るだろう。そしてその時が来たら、お前にみんなを守る強さを教えよう。』
『本当!?』
『あぁ、約束する。』
俺はその言葉を聞き、勢いよくキーブレードを握った。そしてテラの目をしっかりと見て言った。
『約束だよ?師匠!』
『あぁ!』
「そうだ!!あのとき、俺は………うぉぉぉぉぉぉお!!!」
俺は忘れていた記憶を思い出し、溢れんばかりの光の力を解放し、なんと左手からもう一つのキーブレードであり師匠が見せてくれた物――ガイアベインがその姿を現し、俺は二刀流となった。
「相棒がもう1本のキーブレードを!?」
この信じられない事態に何時も冷静なダークも驚かずにはいられなかった。通常どんなに心が強くても、キーブレードは一つ所持するのがやっとなはずだが、俺はなんと二本同時に使っている。
「師匠………もうすぐ、約束が果たせるよ…!」
アンチネス達に向かっていき、二つのキーブレードを荒々しく振るった。その攻撃の連続によってアンチネスのほとんどが倒され、残るはリーダー各であるドラゴンアンチネスのみとなった。
「中々手強そうだな……。」
そう呟きつつも、ドラゴンアンチネスの頭部の高さまでジャンプし、アンチネスの頭を連続で叩き斬った。アンチネスも負けじと反撃するが、軽く避けられてしまい、あげく右前足を切り落とされてしまった。
「行け!!相棒っ!!」
「わかった!!」
その瞬間俺の目の色がカオスアイによって変化し、カオスアイによる能力変化によってパワーとスピードが格段に上昇し、アンチネスを瞬殺して見せた。
「よしっ!!」
俺がアンチネスを倒した事にダークはまるで自分の事のようにして喜んだ。俺は二つのキーブレードを見て、呟く。
「師匠……俺、勝ったよ…………!」
そしてあの夕日を見つめ、一筋の涙を流した。しかし、自身の表情は笑っている。俺は嬉し涙を流したのだ。
その時、またもや地響きが起きた。
「どうやらあまりゆっくりしてる時間は無さそうだぞ!」
「うん、行こう!」
ダークの言葉にレイは頷き、すぐに異空の回廊をキーブレードの力で開いた。そしてキーブレードをバイクのような姿に変化させ、俺はそれに乗り込んだ。ダークも一応キーブレードライドは出来るようになっているのだが、時間が無かったのか、俺のキーブレードライドのスペア席に乗り込んだ。そしてそのまま二人は異空の回廊の中に突っ込んでいった