CHAPTER71【空に浮かぶ暗黒の島】
その翌日、メンバー達はディズニーキャッスルの大広間に集まっていた。もちろんみんな期待と不安を背負い、ここに来ている。中にはプレッシャーに押され声が出ない者、恐怖に押し潰されそうな者などいた。
暗黒島ダークエンドへと向かうべく集められたメンバー達だが、これでも数が減ってしまった方であり、以前ミッキーとグーフィーがやられてしまっており、クロナまでも負傷、しかも鈴神とリアスは前の時以来行方不明となってしまっており、今メンバーを仕切っているのは唯一暗黒島に行く術を持つ俺の姉ヒナタ。
「みんな、聞いて!」
ヒナタの呼び掛けにメンバー全員の視線がヒナタに集まる。一瞬にしてさっきまでの不安に満ちた空気がまるで違う、とても真剣な雰囲気に変化した。
「調べによると、あの暗黒島は元々、ダークエンドドラゴンが世界を滅ぼす兵器として隠し持っていたらしいの。」
「兵器だって!?」
「でも、兵器なら何故ダークエンドドラゴンはそれを出さなかったのでしょう……?」
衝撃の真実がヒナタの口から明かされ、驚くメンバー一同。だが、隠し持っていた兵器ならばどうして最後まで出さなかったのか疑問に抱かずにはいられなかった。
「……出来なかったからよ。」
「え?」
「ダークエンドは、この兵器を自分が死に至りそうになった時に使うつもりだった。けれど、その前に勇者達がダークエンドを封印した。ファイブ・ブレード伝説にも語られていないのはそのせいよ。」
「待ってくださいよ!そんなはずは……、」
以前図書館で借りたファイブ・ブレード伝説が記された本を急いで一通り見るライガ。目をグルグル回し、猛スピードでページを読み進めるが、答えは目に見えていた。
「駄目だ!!無い!」
ライガの悔しそうな表情を見てヒナタは頷き、改めて話を続ける。ヒナタのその目には何時もの穏やか物ではなく、何か別の熱い何かを感じる。
「このままあの島を放って置くと、世界全てが滅ぼされる可能性がある。だから、乗り込むなら襲撃を開始していない今しかない!」
その言葉に誰も頷かない者はいなかった。みんなその事は百も承知なのだ。
「みんな、準備は良い?扉を開くわよ。」
ヒナタがそう言うと、みんなに背を向け、大股五歩くらい前に進むと、その場で魔法を唱え始めた。
「時空物体転移魔法…………フェザリム!!」
ヒナタがそう叫ぶと、突如ヒナタの目の前の足場に不思議な魔方陣が現れ、その中心部分から巨大な白い光の柱が現れ、空想上の生き物であるペガサスの羽を思わせるような門が現れた。
「これは!?」
「これがあらゆるモノをどんな時空にでも転移出来る魔法、フェザリム。さあ、早くこの中に入って。ここからあの暗黒島に乗り込める。」
ヒナタの話だと、どうやらこの光のゲートはあの暗黒島ダークエンドへと繋がる通路のようだ。俺達がそのゲートに入ろうとしたその時だった。ヒナタが突然膝をついて倒れたのだ。
「ナタ姉!?」
「お姉ちゃん!?」
ヒナタの弟と妹である俺とヒトミはが倒れたヒナタに駆け寄る。二人ともとても心配そうだ。
「お兄ちゃん……ゲートに入って。」
「えっ?」
突然ヒトミが放った言葉を理解出来ていないでいる俺。よく見るとヒトミの右目から一筋の涙が流れていた。
「お姉ちゃんは……私が見ておくから、お兄ちゃんは……DED(やつら)を倒してきて!!世界の為に!」
「ヒトミ………。」
俺は一瞬躊躇った。共に育ち、共に強くなってきた妹を連れていけないのが嫌なのだ。だが、ヒトミは言葉ではなくその潤んだ瞳で訴えている。早く行けと。
「………わかった。」
「行こう、みんな!!」
「「「「おぉーーーーーーーっ!!」」」」
こうして一同はゲートに入っていき、みんなが入り終わった所で、ゲートが消滅した。
「頑張って………お兄ちゃん、みんな!」
「レイ君………。」
一方その頃病院ではクロナがベッドに横たわりながら空に浮かぶ暗黒島を見つめて呟いた。その表情は笑顔では無かったが、少なくとも落ち込んだ顔では無かった。
「ちゃんと、帰ってくるよね……?」
クロナの今の気持ちは複雑だった。あのとき確かに笑顔で送り出したはずなのに、やっぱり寂しい。あのとき引き止めるべきだったか。そう心の中で思い悩む。その時だった。クロナはベッドの右側に置いてあるとある物に目が止まった。
それは何時も俺が首に下げていた6方星のネックレスだった。俺が忘れていったのか、わざと置いていったのかはわからないが、それでもクロナはそのネックレスを見て少し安心した。
「わかったよ……レイ君。」
そう言うとそのネックレスを自分の首に下げて、改めてあの空を見た。
「心は何時でも傍にいるんだね………。」
その一方で、暗黒島ダークエンドでは、
「ヘイ本当か!?やつらがここに攻めてくるってよう!」
真っ暗い部屋の真っ黒な椅子に座っているアレクセイが同じくこの部屋にいる以前レイ達の前に現れたダークエンドを名乗る謎の人物に聞いた。謎の人物はゆっくりと腕組をしてから答えた。
「はい、本当です。やつらはもうすぐここに来ます。」
「ったく。これだから警備をもっと強めろと言うんだ。役立たずのノロマめ!」
「クラクション、口を慎みなさい。我らがトップにそんな口の聞き方はいけないわ。」
クラクションが謎の人物の言葉に切れるが、それをベクセスが止める。
「だが、こいつは所詮あのお方の影に過ぎないだろ。こいつがトップなど、俺は認めん。」
クラクションが相変わらずの上から目線的な態度ではっきりと言った。ベクセスは思わず溜め息をつき、椅子に座り込む。
「…………。」
「どうしたヘルツ。」
さっきまでボーッとしていたヘルツの事が気になったのか、クラクションが声を掛ける。するとヘルツは突然立ち上がり、出口へ歩き出した。
「《我は………全て破壊する。》」
「え?」
訳のわからない言葉を残してヘルツは部屋を出ていってしまった。しかし誰もその後を追いかけようとしない。
「さて、後二人はどこなんだい?ヘイヘイ!!」
「ドアクロスとヴィヴァードですね。ドアクロスの行方はわかりませんが、ヴィヴァードはもうすぐここに来るそうです。」
「フッ、さぞかしお疲れでしょうね。何せ『スパイ活動』を休みなしでやってたんだもの。」
ベクセスがそう言った時、扉が軽く叩かれるような音が何回か開き、何者かが部屋に入ってきた。
「よくぞ帰りました。ヴィヴァード。」