CHAPTER75【ヴィヴァードの正体】
「わわっ!!」
突如大きく地面が揺れ、思わずふらつく一同。しかしギリギリの所で踏ん張った。
「なんだ今の音!?」
「わからない。だが先に進むしか無さそうだ。」
先程前の部屋でフィオが覚醒した為、大きな音が発生し、何かあったのかと不安になる俺だが、ディアに呼ばれやむ無く先に進む事にした。
一同はこの暗闇のビルの廊下を走り続ける。一歩進む毎にスピードを増していき、少しでも早くあのダークエンドを名乗った謎の人物の元へたどり着く為に。俺達は何処までも進むしか無いのだ。
「なぁ、レイ。」
後ろについて走っているシュージが俺に話し掛けた。その表情は何か思い詰めたような物だった。
「走りながらで悪いが、聞きたい事がある。」
「何?シュージ先輩。」
俺は決して振り向きはせず、ただ前を見て走りながら答えた。今の彼はただ進む事しか目的としていない為、常に真顔である。
「お前達は以前、クラクションから6皇帝のメンバーを紹介されて、その中にヴィヴァードって名前があったんだよな?」
「うん。」
「これまで、6皇帝達は何度か俺達の前に姿を現して来たが、今までに現れたのはヴィヴァードを除く五人だけ。始めにアレクセイが現れてから今に至るまでヴィヴァードは一切姿を現していない事になる。」
「確かに………。」
「俺が気になったのは、もしそのヴィヴァードが姿を変えて俺達の誰かの味方のふりをしているなら、俺達光の勢力のメンバーの誰かである可能性が高い。」
「まさか、今離脱しているやつらの誰かか?」
二人の会話の中にディアが乱入してきた。ドナルドは流石に理解が難しいのか、黙って走っているのがやっとである。
「あぁ。その中でも、怪しいやつは明らかにいた。」
「それって………?」
「行ってみないとわからない。俺の予想が正しければ、恐らくヴィヴァードは、」
シュージがずっと向こう側にある扉を指差し、叫んだ。
「あそこにいる!!」
その叫びとほぼ同時のタイミングでシュージは小型のメテオと言うべき魔法、ミニメテオを連発し、扉を破壊した。俺達はそのままその部屋に入り、さらに先に進むとまた扉があった。しかしその扉もすぐにシュージにより破壊され、一同は他の場所よりも特に薄暗い廊下に出た。そこにとある人物が突っ立っており、その人物を見たとき、俺達は驚いた。
「やぁ、ついにここまで来たんだね。ディアス君。」
なんとリアスだった。存在しなかった城の時以来行方がわからなくなっていたはずだが、その彼が何故ここにいるのかわからなかったが、少なくともドナルドを除く三人にはわかっていた。
「おや、驚かないのかい?僕がこんなところにいても?」
「………驚かないね。だって、君はずっと仲間のふりをして、俺達に近づいてきた。それに、ブラックパラデスの事だって君だ。そう、君は俺達を騙していた。そうなんだろう……………ヴィヴァード?」
俺の最後に言った単語を聞いたリアスは小さく微笑み、目を閉じた。するとリアスの左目の辺りから不思議なマークのようなものが現れ、開いたリアスの目も白黒部分が反転していた。リアスは自分のキーブレードであるカオスレッグスを構え、俺達を見た。
「その通りさ!僕の本当の名はヴィヴァード!6皇帝最強の戦士だ!!」
そう強く叫んだリアス、いやヴィヴァードはキーブレードを力強く地面に突き立て、俺達を謎の緑色の空間に引き入れた。アレクセイとは違い、何処までも広がる広大な宇宙のような広さを持つ空間で、俺達は何が起きたのか理解出来ていない様子。
「ここは君達の墓場となる場所!ここでの敗北は死と同じだ!!」
「何!?」
ヴィヴァードの口から放たれた言葉。それはここでバトルに破れれば、それは生命の終わりと同じという事。この空間に閉じ込められた俺達がここを脱出する為には、ヴィヴァードを倒すしかない。
「レイ・ディアスよ!僕を倒さぬ限り、ダークエンドの元へはたどり着けない!さぁ戦うのだ!!」
ヴィヴァードの言う通りだった。確かに倒さなければならないのだが、彼は俺をこれまでサポートしてきたリアス。戦うのには躊躇いが生じる。俺はヴィヴァードを目の前にしているにも関わらずキーブレードを構えない。いや、構えられないのかもしれない。
「どうした?何を躊躇っている!?君には帰ってくる事を約束した友がいたのでは無かったのか?その友の為にかつての友を切り捨てる事が出来ないのか?」
俺はしばらく黙って俯いていたが、約束した友『クロナ』の事を思い浮かべ、あることを決意すると共に顔を上げた。
「……………わかった。俺はお前を倒す!」
「………良いだろう。来い!!」
俺は両手にキーブレードを出現させ、ヴィヴァードに向かって全速力で走る。ヴィヴァードの前に来た所で飛び上がり、高所からキーブレード二刀流による攻撃を繰り出したが、ヴィヴァードのキーブレードがそれを遮った。ヴィヴァードは俺を弾き飛ばし、俺は見事に着地してからまた走り出し、今度は真正面から連続攻撃を繰り出す。しかしそれら全て守りの魔法、リフレガによって無駄となった。
「何故だ!何故俺達を騙していたんだ!」
ヴィヴァードに攻撃を仕掛けながら俺が叫ぶ。連続攻撃の隙を見てヴィヴァードが俺に攻撃する。
「僕は元々、君だったのさ。」
「えっ?」
俺は一瞬動揺したが、二刀流のキーブレードを使い攻撃を仕掛け、ヴィヴァードもまた攻撃を繰り出し、鉄と鉄が交じり合う音が鳴り響き、両者のキーブレードの押し合いとなった。
「あのとき、君の心の中から闇が無くなった時、僕は闇の世界に生まれ落ちた。そう、僕は元々、一匹の軟弱なアンチネスだった。」
俺はもちろん、ここにいる全員、特にディアが今の話に驚くしかなかった。ヴィヴァードが何を言っているのかと言うと、俺に関係のあるアンチネスという事。だがディアは賢者アンセムの話を聞いていた唯一の人物なので、ヴィヴァードの正体がすぐに理解出来た。
「アンチネスは生まれている。アンセムはそう言ったが………レイのアンチネスと言うのは、リアスだったのか。」
ディアの言い放った言葉は他のメンバーに聞こえないほど小さかった。そもそもはっきり言った所で誰が信じられるだろうか。
「アンチネスである僕は、闇の抜け道を作り君達の世界へ渡った。そして、レイの見つけた。レイはとても輝いていたよ。僕と違ってね。僕はレイに憧れていたと同時に、嫉妬していた。そして思った。『レイになりたい』と……。だから僕は、本体であるレイを乗っとる事を計画した。アンチネスが本体に戻るには、本体の闇が肥大化する必要がある。だから僕はレイにブラックパラデスを手渡した。レイがブラックパラデスを使い続ける事で、心が全て闇になった時、乗っとる為に………!」
なんと本当にヴィヴァード、つまりリアスは俺のアンチネスだった。今思えばアンチネスだからこそ闇の世界から俺を連れ出す事が出来た上に、ブラックパラデスの事もリアスが本体である俺を乗っとる為の策略だった。だが俺はブラックパラデスを砕かれ、闇から解放され、計画は失敗。だからこそリアスはこうして出向いたのかもしれない。俺を始末する為に。
「味方のふりをしていたのも、俺達の信頼を得る為だったのか!?」
「想像に任せよう。」
「っ………………うぉぉぉぉぉぉお!!」
俺思わずはかっとなり、とてつもない速度の連続攻撃を開始した。それら全てヴィヴァードに防がれているが、俺はヴィヴァードが倒れるまで攻撃を止めない。
「うぉぉぉぉぉぉお!!」
「だぁあ!!」
「せやぁっ!!」
叫ぶ度に俺の攻撃の雨がヴィヴァードを襲い、これまで攻撃を防いでいたのだがついに体制を崩してしまい、合計170回の連続攻撃を喰らってしまった。しかしそれでも踏みとどまる。
「やるな!それでこそ光の勇者だ!ならこれを受けきれるかな!?」
ヴィヴァードはキーブレードを放り投げ、両手に光と闇の力を集め始めた。どんどんヴィヴァードに二つの力が集まっていき、やがてそれは膨大なエネルギーとなり、ヴィヴァードの覇気がさらに増したのか、その気迫に押されそうになったが、なんとか踏み留まり、二刀流のキーブレードを構える。
「チャージ完了!!行くぞレイっ!!」
ヴィヴァードの右手が闇に、左手が光にそれぞれ包まれ、両手を上に上げた時、二つの力は混じり合い、巨大な混沌の力を持つ柱となった。
「カオストーム!!」
混沌の柱がヴィヴァードの叫びと共に巨大な竜巻へとその姿を変え、物凄いスピードでレイに迫ってくる。その時だった。炎、氷、雷の全てが交わった竜巻ほどではないが、巨大な弾丸が竜巻にぶつかり、俺への接近を防いだ。
「良かった!間に合ったわ!」
「「ドアクロス!?」」
そこにいたのは6皇帝の中で何故か光の勢力の味方をする謎の存在、ドアクロスだった。ドアクロスがあの弾丸を放ったのだ。
「レイはん、早く!!」
ドアクロスは三つの属性を持つ弾丸を維持しつつ俺に向かって叫び、俺は二つのキーブレードから赤い光を放ち、なんとラグナロクRDを二つ放った。二つのラグナロクRDは竜巻に向かって飛んでいく。
「これが、ツインラグナロクだ!!」
そう叫ぶと同時に二つのラグナロクRD改めツインラグナロクの勢いが増し、俺とドアクロスの二人の技はヴィヴァードの技ごとヴィヴァードへ飛んでいった。
「そんな………バカな!!」
凄まじい爆発音と共にヴィヴァードは吹っ飛ばされ、倒れた。爆発の際に右腕が無くなっており、人間の姿がだんだんアンチネスらしい不気味な物に変わっていく。
俺達がヴィヴァードに駆け寄ろうとしたとき、何処からか大量のアンチネスが俺達を囲むようにして現れ、絶対絶命の危機に陥った。
「そんな!!」
「お仕舞いなのか……?」
「いやまだだ!!」
その時アンチネス達の中心に現れたのはヴィヴァードだった。ヴィヴァードは自分の肩に手を起き、その場で回した。ギアでも回すような音が鳴り、リミッターが外れたような音が響いた後、ヴィヴァードの身体が金色に輝き始めた。
「あれは?」
「【スフィアボム】や。」
ドアクロスが俺達に言い放った言葉。俺達はすぐに疑問に思い、それを見たドアクロスが闇の回廊を出現させてから言った。
「スフィアボムっちゅうのは、自分の魂を捧げる代わりに、ごっつう凄い爆発を起こす禁断の技や。」
「何だって!?」
スフィアボムはなんと自分の魂を生け贄にする事でとてつもない爆発を起こす禁断の技である事がドアクロスの口から放たれた。つまりヴィヴァードは自らを犠牲にアンチネス達を蹴散らそうとしているのだ。
「レイ、シュージ、ディア、ドナルド!」
ヴィヴァードが爆発する前に四人の名前を呼ぶ。
「僕は、君達の可能性を知りたかった!そしてこの戦いで理解した!君達ならダークエンドを倒せる!!頑張れレイ、みんな!!」
「お前、俺達を試してたのか!」
ヴィヴァードはその言葉に頷き、ヴィヴァードとしてではなく、リアスとして俺達に伝えた。
「ダークエンドは、隠された姿を持っている。気を付けてくれ。」
「待ってくれ、リアスっ!!」
その瞬間、リアスが爆発、アンチネス達は全員消滅し、この空間も消え失せた。
俺達は幸いドアクロスが開いた闇の回廊に入り元の場所に戻って来れたが、俺はヴィヴァード、いやリアスの事が唯一の心残りなのか、先に進もうにも先に進めなかった。
「レイはん。」
俯いている俺にドアクロスが声をかけ、向こう側を指差した。そこには白い光を放つパネルのような物が足場に設置されていた。
「行くで。」
ドアクロスが何故自分達の味方をしてくれるのかはわからないが、仲間が増えたことはとても心強く、俺は少しでも安心出来た。一同はそのパネルらしき物に乗ると、パネルが輝き出し、何処かへ転送された。どうやらワープパネルのようだ。俺はワープパネルに乗る前に先程までリアスがいたところを見詰めていた。
「…………リアス……絶対に倒してくるね。」
そうして、一同はリアスとの激闘を乗り越え、ワープパネルに乗って何処かへ飛んでいった。
突如大きく地面が揺れ、思わずふらつく一同。しかしギリギリの所で踏ん張った。
「なんだ今の音!?」
「わからない。だが先に進むしか無さそうだ。」
先程前の部屋でフィオが覚醒した為、大きな音が発生し、何かあったのかと不安になる俺だが、ディアに呼ばれやむ無く先に進む事にした。
一同はこの暗闇のビルの廊下を走り続ける。一歩進む毎にスピードを増していき、少しでも早くあのダークエンドを名乗った謎の人物の元へたどり着く為に。俺達は何処までも進むしか無いのだ。
「なぁ、レイ。」
後ろについて走っているシュージが俺に話し掛けた。その表情は何か思い詰めたような物だった。
「走りながらで悪いが、聞きたい事がある。」
「何?シュージ先輩。」
俺は決して振り向きはせず、ただ前を見て走りながら答えた。今の彼はただ進む事しか目的としていない為、常に真顔である。
「お前達は以前、クラクションから6皇帝のメンバーを紹介されて、その中にヴィヴァードって名前があったんだよな?」
「うん。」
「これまで、6皇帝達は何度か俺達の前に姿を現して来たが、今までに現れたのはヴィヴァードを除く五人だけ。始めにアレクセイが現れてから今に至るまでヴィヴァードは一切姿を現していない事になる。」
「確かに………。」
「俺が気になったのは、もしそのヴィヴァードが姿を変えて俺達の誰かの味方のふりをしているなら、俺達光の勢力のメンバーの誰かである可能性が高い。」
「まさか、今離脱しているやつらの誰かか?」
二人の会話の中にディアが乱入してきた。ドナルドは流石に理解が難しいのか、黙って走っているのがやっとである。
「あぁ。その中でも、怪しいやつは明らかにいた。」
「それって………?」
「行ってみないとわからない。俺の予想が正しければ、恐らくヴィヴァードは、」
シュージがずっと向こう側にある扉を指差し、叫んだ。
「あそこにいる!!」
その叫びとほぼ同時のタイミングでシュージは小型のメテオと言うべき魔法、ミニメテオを連発し、扉を破壊した。俺達はそのままその部屋に入り、さらに先に進むとまた扉があった。しかしその扉もすぐにシュージにより破壊され、一同は他の場所よりも特に薄暗い廊下に出た。そこにとある人物が突っ立っており、その人物を見たとき、俺達は驚いた。
「やぁ、ついにここまで来たんだね。ディアス君。」
なんとリアスだった。存在しなかった城の時以来行方がわからなくなっていたはずだが、その彼が何故ここにいるのかわからなかったが、少なくともドナルドを除く三人にはわかっていた。
「おや、驚かないのかい?僕がこんなところにいても?」
「………驚かないね。だって、君はずっと仲間のふりをして、俺達に近づいてきた。それに、ブラックパラデスの事だって君だ。そう、君は俺達を騙していた。そうなんだろう……………ヴィヴァード?」
俺の最後に言った単語を聞いたリアスは小さく微笑み、目を閉じた。するとリアスの左目の辺りから不思議なマークのようなものが現れ、開いたリアスの目も白黒部分が反転していた。リアスは自分のキーブレードであるカオスレッグスを構え、俺達を見た。
「その通りさ!僕の本当の名はヴィヴァード!6皇帝最強の戦士だ!!」
そう強く叫んだリアス、いやヴィヴァードはキーブレードを力強く地面に突き立て、俺達を謎の緑色の空間に引き入れた。アレクセイとは違い、何処までも広がる広大な宇宙のような広さを持つ空間で、俺達は何が起きたのか理解出来ていない様子。
「ここは君達の墓場となる場所!ここでの敗北は死と同じだ!!」
「何!?」
ヴィヴァードの口から放たれた言葉。それはここでバトルに破れれば、それは生命の終わりと同じという事。この空間に閉じ込められた俺達がここを脱出する為には、ヴィヴァードを倒すしかない。
「レイ・ディアスよ!僕を倒さぬ限り、ダークエンドの元へはたどり着けない!さぁ戦うのだ!!」
ヴィヴァードの言う通りだった。確かに倒さなければならないのだが、彼は俺をこれまでサポートしてきたリアス。戦うのには躊躇いが生じる。俺はヴィヴァードを目の前にしているにも関わらずキーブレードを構えない。いや、構えられないのかもしれない。
「どうした?何を躊躇っている!?君には帰ってくる事を約束した友がいたのでは無かったのか?その友の為にかつての友を切り捨てる事が出来ないのか?」
俺はしばらく黙って俯いていたが、約束した友『クロナ』の事を思い浮かべ、あることを決意すると共に顔を上げた。
「……………わかった。俺はお前を倒す!」
「………良いだろう。来い!!」
俺は両手にキーブレードを出現させ、ヴィヴァードに向かって全速力で走る。ヴィヴァードの前に来た所で飛び上がり、高所からキーブレード二刀流による攻撃を繰り出したが、ヴィヴァードのキーブレードがそれを遮った。ヴィヴァードは俺を弾き飛ばし、俺は見事に着地してからまた走り出し、今度は真正面から連続攻撃を繰り出す。しかしそれら全て守りの魔法、リフレガによって無駄となった。
「何故だ!何故俺達を騙していたんだ!」
ヴィヴァードに攻撃を仕掛けながら俺が叫ぶ。連続攻撃の隙を見てヴィヴァードが俺に攻撃する。
「僕は元々、君だったのさ。」
「えっ?」
俺は一瞬動揺したが、二刀流のキーブレードを使い攻撃を仕掛け、ヴィヴァードもまた攻撃を繰り出し、鉄と鉄が交じり合う音が鳴り響き、両者のキーブレードの押し合いとなった。
「あのとき、君の心の中から闇が無くなった時、僕は闇の世界に生まれ落ちた。そう、僕は元々、一匹の軟弱なアンチネスだった。」
俺はもちろん、ここにいる全員、特にディアが今の話に驚くしかなかった。ヴィヴァードが何を言っているのかと言うと、俺に関係のあるアンチネスという事。だがディアは賢者アンセムの話を聞いていた唯一の人物なので、ヴィヴァードの正体がすぐに理解出来た。
「アンチネスは生まれている。アンセムはそう言ったが………レイのアンチネスと言うのは、リアスだったのか。」
ディアの言い放った言葉は他のメンバーに聞こえないほど小さかった。そもそもはっきり言った所で誰が信じられるだろうか。
「アンチネスである僕は、闇の抜け道を作り君達の世界へ渡った。そして、レイの見つけた。レイはとても輝いていたよ。僕と違ってね。僕はレイに憧れていたと同時に、嫉妬していた。そして思った。『レイになりたい』と……。だから僕は、本体であるレイを乗っとる事を計画した。アンチネスが本体に戻るには、本体の闇が肥大化する必要がある。だから僕はレイにブラックパラデスを手渡した。レイがブラックパラデスを使い続ける事で、心が全て闇になった時、乗っとる為に………!」
なんと本当にヴィヴァード、つまりリアスは俺のアンチネスだった。今思えばアンチネスだからこそ闇の世界から俺を連れ出す事が出来た上に、ブラックパラデスの事もリアスが本体である俺を乗っとる為の策略だった。だが俺はブラックパラデスを砕かれ、闇から解放され、計画は失敗。だからこそリアスはこうして出向いたのかもしれない。俺を始末する為に。
「味方のふりをしていたのも、俺達の信頼を得る為だったのか!?」
「想像に任せよう。」
「っ………………うぉぉぉぉぉぉお!!」
俺思わずはかっとなり、とてつもない速度の連続攻撃を開始した。それら全てヴィヴァードに防がれているが、俺はヴィヴァードが倒れるまで攻撃を止めない。
「うぉぉぉぉぉぉお!!」
「だぁあ!!」
「せやぁっ!!」
叫ぶ度に俺の攻撃の雨がヴィヴァードを襲い、これまで攻撃を防いでいたのだがついに体制を崩してしまい、合計170回の連続攻撃を喰らってしまった。しかしそれでも踏みとどまる。
「やるな!それでこそ光の勇者だ!ならこれを受けきれるかな!?」
ヴィヴァードはキーブレードを放り投げ、両手に光と闇の力を集め始めた。どんどんヴィヴァードに二つの力が集まっていき、やがてそれは膨大なエネルギーとなり、ヴィヴァードの覇気がさらに増したのか、その気迫に押されそうになったが、なんとか踏み留まり、二刀流のキーブレードを構える。
「チャージ完了!!行くぞレイっ!!」
ヴィヴァードの右手が闇に、左手が光にそれぞれ包まれ、両手を上に上げた時、二つの力は混じり合い、巨大な混沌の力を持つ柱となった。
「カオストーム!!」
混沌の柱がヴィヴァードの叫びと共に巨大な竜巻へとその姿を変え、物凄いスピードでレイに迫ってくる。その時だった。炎、氷、雷の全てが交わった竜巻ほどではないが、巨大な弾丸が竜巻にぶつかり、俺への接近を防いだ。
「良かった!間に合ったわ!」
「「ドアクロス!?」」
そこにいたのは6皇帝の中で何故か光の勢力の味方をする謎の存在、ドアクロスだった。ドアクロスがあの弾丸を放ったのだ。
「レイはん、早く!!」
ドアクロスは三つの属性を持つ弾丸を維持しつつ俺に向かって叫び、俺は二つのキーブレードから赤い光を放ち、なんとラグナロクRDを二つ放った。二つのラグナロクRDは竜巻に向かって飛んでいく。
「これが、ツインラグナロクだ!!」
そう叫ぶと同時に二つのラグナロクRD改めツインラグナロクの勢いが増し、俺とドアクロスの二人の技はヴィヴァードの技ごとヴィヴァードへ飛んでいった。
「そんな………バカな!!」
凄まじい爆発音と共にヴィヴァードは吹っ飛ばされ、倒れた。爆発の際に右腕が無くなっており、人間の姿がだんだんアンチネスらしい不気味な物に変わっていく。
俺達がヴィヴァードに駆け寄ろうとしたとき、何処からか大量のアンチネスが俺達を囲むようにして現れ、絶対絶命の危機に陥った。
「そんな!!」
「お仕舞いなのか……?」
「いやまだだ!!」
その時アンチネス達の中心に現れたのはヴィヴァードだった。ヴィヴァードは自分の肩に手を起き、その場で回した。ギアでも回すような音が鳴り、リミッターが外れたような音が響いた後、ヴィヴァードの身体が金色に輝き始めた。
「あれは?」
「【スフィアボム】や。」
ドアクロスが俺達に言い放った言葉。俺達はすぐに疑問に思い、それを見たドアクロスが闇の回廊を出現させてから言った。
「スフィアボムっちゅうのは、自分の魂を捧げる代わりに、ごっつう凄い爆発を起こす禁断の技や。」
「何だって!?」
スフィアボムはなんと自分の魂を生け贄にする事でとてつもない爆発を起こす禁断の技である事がドアクロスの口から放たれた。つまりヴィヴァードは自らを犠牲にアンチネス達を蹴散らそうとしているのだ。
「レイ、シュージ、ディア、ドナルド!」
ヴィヴァードが爆発する前に四人の名前を呼ぶ。
「僕は、君達の可能性を知りたかった!そしてこの戦いで理解した!君達ならダークエンドを倒せる!!頑張れレイ、みんな!!」
「お前、俺達を試してたのか!」
ヴィヴァードはその言葉に頷き、ヴィヴァードとしてではなく、リアスとして俺達に伝えた。
「ダークエンドは、隠された姿を持っている。気を付けてくれ。」
「待ってくれ、リアスっ!!」
その瞬間、リアスが爆発、アンチネス達は全員消滅し、この空間も消え失せた。
俺達は幸いドアクロスが開いた闇の回廊に入り元の場所に戻って来れたが、俺はヴィヴァード、いやリアスの事が唯一の心残りなのか、先に進もうにも先に進めなかった。
「レイはん。」
俯いている俺にドアクロスが声をかけ、向こう側を指差した。そこには白い光を放つパネルのような物が足場に設置されていた。
「行くで。」
ドアクロスが何故自分達の味方をしてくれるのかはわからないが、仲間が増えたことはとても心強く、俺は少しでも安心出来た。一同はそのパネルらしき物に乗ると、パネルが輝き出し、何処かへ転送された。どうやらワープパネルのようだ。俺はワープパネルに乗る前に先程までリアスがいたところを見詰めていた。
「…………リアス……絶対に倒してくるね。」
そうして、一同はリアスとの激闘を乗り越え、ワープパネルに乗って何処かへ飛んでいった。