CHAPTER76【ダークエンドコロシアム】
一方その頃、アースにいるフウリとライヤは、西の浜辺から空に浮かぶ浮遊島を見上げていた。二人の目に写っている物は今朝の物とはまるで違っていた。
「信じられない…………!あれは………、」
フウリが浮遊島の右隣にある白い物体を指差した。それは存在しなかった世界にあるはずの機関の城だった。
「機関の………城!」
「おい、あれを!」
今度はライヤが海の方を指差した。なんと海にはポートロイヤルにあるはずの海賊船、ブラックパール号が浮かんでいた。
「どういう事だ……?」
「ライヤ!」
フウリの呼び掛けで振り替えると、浜辺エリアにはワンダーランドにいたトランプ兵や、ビーストキャッスルにいた時計の飯使いなど、様々な世界の住民がこの浜辺エリアに限らずアースの至るところに現れ始めた。
「どうなってるんだ……?」
「あの島さ。」
いつの間にかリクが現れ、浮遊島を指差した。二人もそれとほぼ同時に浮遊島を見上げる。
「あの島から、何か感じる………!」
「何かって………?」
「恐らくあの島には、空間を一まとめにする力があって、それでこのアースが他の空間と混ざり合い、こんな状況になったって所だろう。」
リクの言うことはあくまでも推察に過ぎないのだが、あの島が空に浮かんでいる以上はそれが本当だと信じる他無かった。現にリクの言葉は筋が通っており、この状況からもっとも考えられる事だからである。
「あっ、あれを!」
フウリが再び浮遊島を指差した。なんと浮遊島から幾つもの砲台が飛び出し、存在しなかった城に狙いを定めた。そして浮遊島は存在しなかった城に砲撃を開始、存在しなかった城は跡形も無く崩れ落ち、海に沈んでしまった。
「何故?DEDと機関は手を組んでいたはずでは?」
「不要になったんだ。」
ライヤの疑問に即答するリク。その表情はいつ見ても冷静で、一体どうしたらこんな状況でそんなポーカーフェイスでいられるんだと二人は思わずツッコミたくなったが、今はそれ所ではなく、リクの発した言葉の意味を聞くのが最優先である。
「DEDと機関は確かに手を組んでいた。だがDEDは機関を利用していたに過ぎない。つまり、不要になれば何時でもあんな風に出来たって事さ。」
「不要になったって事は………まさか?」
「あぁ。恐らく奴等の計画は最終段階に入った………!」
「そんな……!」
「このままだと、全ての世界が混じり合い、大変な事が起こる!」
「良くやりましたね、クラクション。」
浮遊島のさらに上に浮かんでいる物体、ダークエンドキャッスルのとある一室ではレイの姿をした謎の人物とクラクションが何かを話していた。先程の謎の人物の誉め言葉からするに、さっきクラクションに頼んだ何かが成功したという事だろう。
「あれで良かったのか?」
クラクションがソファーに座っている謎の人物を見下ろしてわざとらしく聞いた。謎の人物は軽く頷き、クラクションを見上げてから言った。
「機関はもう不要でしたし、始末しておきたかったんです。それに、このダークエンドキャッスルの力によって、全ての世界は今混じわりつつあります。」
「俺達の計画の為に………!」
「はい。」
「ほな!もうすぐや!」
俺達はワープパネルに乗り、何処か薄暗い場所に飛ばされた。俺達は右も左もわからない為、ドアクロスが自ら案内役を買い、今走っている所である。
「ねぇ、ドアクロス。」
「なんや?」
走りながらドナルドが先頭で走っているドアクロスを呼んだ。ドアクロスは振り向かずに答える。
「どうしてドアクロスは僕らの味方をしてくれるの?」
「そう言えば……、」
「そうだよな……。」
「ワイがなんで味方するかって?それは……、ワイはな、アンチネスなる前は孤独やったんや。友達も、家族もワイの事をバケモン扱いしおって、ワイは結局、サツにやられてしまったんや。孤独を抱えたままでな。けど、ダークエンドドラゴンはんはワイをアンチネスとして甦らせた。それで思ったんや。今度こそ友達を作り、そいつの為に尽くしたいと。だからあんたらを友達と見立てて、助けてたっちゅう訳や。」
「寂しかったんだね。」
ドアクロスのアンチネスになった生い立ちを聞いたドナルドは、走りながらだがドアクロスの手を取り、笑顔で言った。
「大丈夫!僕達は、もう友達だよ!」
ドアクロスは『えっ?』と軽く言うと、走りながら振り向き、みんなの顔を見た。みんな笑顔で頷いてくれた。ドアクロスはそれを見て強く頷き、改めて前を向いて走り出した。
「じゃあ行くで!もうすぐや!」
ドアクロスの案内の元、俺達はアンチネスに一回も見つからず、やっとの想いで外に出る事が出来た。だがそこに入った途端、大きな歓声がその大広間に響き渡った。良く見るとここは何かのコロシアムのようだ。上を見上げるとあの不気味な空がはっきりと間近に見える。
《ようこそいらっしゃいました。キーブレード使いのみなさん。》
突如あの謎の人物の声がこのコロシアムに響いた。俺達はとっさに謎の人物を探そうとしたが、良く見ると何処にもいなかった。
《残念でした。私はそこにはいませんよ。》
「くっ!ダークエンド!お前の目的は何なんだ!!」
《それを知りたければこいつらを倒してみなさい!》
謎の人物の言葉が放たれると共に現れたのは3体の巨大アンチネス。アンチネス達は3体同時に俺に襲い掛かったが、その横を凄いスピードで何かが通り過ぎていった。しかもそれは後二回も続き、アンチネス3体は一瞬で倒された。アンチネスを倒したのはシュージ、ドナルド、ディアの三人だった。
「三人とも!?」
「レイ!」
「俺達が全力でサポートしてやる。」
「困ったら任せて!」
「みんな………!」
《友情ゴッコもその辺にしてもらいましょうか。クラクション、出番です!》
コロシアムの別の入り口―俺達からすると向かい側―からクラクションが現れ、観客席のアンチネス達に猛々しく手を振った。
「やっと俺の出番だな。」
クラクションは手に持っていたメタルボールを地面に落とし、足で止めた。そしてそのまま俺達を指差し言った
「レイよ!お前は俺のダミーを倒したようだが、その程度の実力では俺には到底敵わん!!」
この大観衆が見ている中で、大胆にも勝利宣言を叫んだ。さらにクラクションはダミーがやって見せたシャドウアイの能力を発動させ、ダミーの時と同様に姿を変えた。
「さぁ、ショーの始まりだ!」
クラクションがショーの始まりを宣言すると共にメタルボールを俺に向かって撃ち込み、それは凄まじいスピードで俺の右腕にヒットした。
「がはっ!!」
「「「レイ!!」」」
口から血が出るほどの威力。俺は右腕を押さえながらふらつき、倒れそうになるもなんとか踏みとどまった。今の一撃で肩が外れたようで、思うように動けない。
「今がチャンスだ!!」
先程のショーの始まり宣言は何処に行ったのか。ショーのようなエンターティメントではなく単純に隙を見て更なる攻撃を仕掛けてくる。しかし2度目の攻撃はディアが放った闇のシールド、ダークバリアによって弾かれ、弾けとんだメタルボールの欠片がクラクションの頬にかすり、頬から青い血が出てきた。
「よくも俺の顔を傷つけたな………!」
クラクションは顔に傷がついた事で怒りを爆発させ、メタルボールをバンバン撃ち込んでくる。その止まぬ雨の如く飛んでくるメタルボールの大群はディアやドナルド、シュージだけではとても防げそうに無く、そろそろ限界のようだ。
「くっ………!」
その様子を見ていたドアクロスがクラクションの目の前に割って入り、氷を纏った槍、ブリザードランスでクラクションを貫くようにして攻撃した。
「ぐはぁ!!」
クラクションが攻撃された部分である肩を押さえながら至近距離にいるドアクロスに向かってニードルボールをシュートした。
「……っ!」
ニードルボールの針がドアクロスに突き刺さり、ドアクロスは倒れた。
「目障りなんだよ。この裏切り者めが!」
「……………おい!」
クラクションの言葉に腹が立ち、二刀流のキーブレードを構える
「俺の仲間を………新しい友達を目障りと言うな!!」
叫ぶと同時に二刀流による超連続攻撃がクラクションに襲い掛かり、クラクションは大量のニードルボールをシュートして反撃するが、それら全て俺のキーブレードに弾き飛ばされ、クラクションにヒットし、クラクションは倒れた。
「そんな…………バカな………!」
自分の武器で倒されるという悲惨なやられ方によって、クラクションは今度こそ消滅していった。
その時、拍手の音が三回ほど響き、謎の人物がついにその姿を現した。謎の人物は不敵に微笑み、こちらを見ている。
「おめでとうございます。クラクションさんを倒したという事で、私の計画をお教えし………ようと思ったのですが、ちょっとここで特別ゲストをお呼びしましょうか。」
謎の人物が軽く指を鳴らすと、何処からか竜のような大きな雄叫びが響き、何かがここに迫ってくる気配を感じた。そして、それは空中から現れ、その姿を現した
「さぁ出番です!ダークエンドドラゴン!!」