CHAPTER77【暗黒竜降臨】
暗黒に包まれた空から突如飛来してきたのは一体の邪悪なオーラを放つ紫色のドラゴンだった。先程謎の人物はダークエンドドラゴンと叫んでいた。となるとこのドラゴンこそが暗黒竜ダークエンドドラゴンという事だろう。
《《グギュアァァァァァアア!!》》
ダークエンドドラゴンの雄叫びがこのコロシアム全体に凶器的に響き渡り、ダークエンドドラゴンはコロシアムに上から入り、空中で俺達を見下ろしながら静止した。
「このお方こそが私が復活させた伝説の暗黒竜ダークエンドドラゴン!我らがDEDの総帥にして、新たな時代を築く者!貴方達は、その新たなる時代の糧となるのです!」
ダークエンドドラゴンの七つの赤い目全てが俺を一斉に睨み、腹にある大きな口が音を立てて開かれた。ダークエンドドラゴンは静かに唸り声を上げて謎の人物の指示をまつ。
「さぁお願いします!ダークエンドドラゴン!!」
《《グギュアァァァァァアア!!》》
ダークエンドドラゴンの雄叫びが響くだけでコロシアムの壁にヒビが入り始め、先程まで風も吹いていなかったのだが、突然強く冷たい風が吹き始めた。この風は普通の風とは何かが違う。その事を俺達はすぐに感じ取れた。何故ならこの風はダークエンドドラゴンが現れた途端に吹き始めたのだから。恐らく普通ではない、良くない風なのだろう。
「ダークエンド……絶対に………、」
俺はこの時、先程まで戦っていたリアスの事を思い返していた。リアスは自分ならダークエンドを倒してくれると信じ、後を託して消えていった。その出来事により俺は一瞬進む事を躊躇いはしたが、だが託された以上は進むしか無かった。
「お前を倒す!」
その言葉と共に両手にキーブレードが現れる。俺が構えるのとほぼ同時にダークエンドの羽にある幾つもの小さな目が開き、その赤い目を輝かせ、俺に向かって紫色と黒色の不気味な炎のブレスを吐き、攻撃を仕掛ける。
「これなら………何っ!?」
避けられる。そう思った俺だったが、ダークエンドドラゴンの放ったブレスは想定外に早く、避けきれず壁にまで吹っ飛ばされてしまった。俺が飛ばされぶつかった壁にも大量のヒビが入り、間一髪深傷を負わずにすんだ。
立ち上がろうとする俺に追い討ちをかけるようにダークエンドの腹の口から黒い霧が吹き出し、俺を包み込んだ。すると俺の身体が思うように動かなくなり、ダークエンドドラゴンはその隙に羽を広げて突撃してきた。
「ぐわぁ!!」
「「「「レイ!!」」」」
壁に打ち付けられ、また立ち上がろうとするがその度にダークエンドドラゴンの攻撃が襲い掛かり、俺は何度も壁を介してのサンドバッグ状態にされ、思わず膝をついてしまい、ダークエンドドラゴンを見上げた時、ダークエンドドラゴンの姿が何処にもなかった。
「レイ!後ろ!!」
シュージの叫びを聞き、振り向いた途端俺は別の壁まで吹っ飛ばされてしまった俺を吹っ飛ばしたのはダークエンドドラゴン。なんとあの巨体で一瞬の内に俺の背後に回り込んでいたのだ。
「強すぎる………!」
「これが………封印されし暗黒竜…!」
「グワワ………!」
その後もダークエンドドラゴンの追い討ち攻撃は続いた。
「うわぁ!!」
「ぐっ!!」
「ぐはっ!!」
「うっ!!」
叫び声とほぼ同じだけ俺はダークエンドドラゴンの攻撃を受け、もうボロボロの状態となっていた。ここまでダークエンドドラゴンにかすり傷でさえも与えられていない。今までの相手なら、俺が相手を翻弄していたが、今回の相手はあのダークエンド。逆に翻弄されてしまっている。
「じゃあそろそろ終わりですね。レイさん、あの世に行く準備は出来ましたか?」
謎の人物は俺にわざとらしく質問するが、謎の人物はその質問に俺が答えないという事を察したのか、答えが返ってくる前に言った。
「では………お墓行きの時間です!」
《《グギュアァァァァァアア!!》》
ダークエンドドラゴンの邪悪なブレスが俺に向かって飛んでいき、それは真正面からヒット………………しなかった。
なんと、俺は謎の緑色のシールドに守られていた。シュージやディア達はもちろん、ダークエンドドラゴンに謎の人物、当の本人であるレイでさえも訳がわかっていないようだ。
――大丈夫?レイ――
俺の脳裏に、正確には光の勢力側の人間全ての脳裏にその優しい声が聞こえた。シュージ達はこの声が誰なのかわからない様子だったが、俺はこの声に懐かしさを感じていた。
「お母さん…………。」
――わかりましたか?流石私の子ですね。――
――私は今、天国から貴方に直接語りかけています。――
俺の母親、ケミアはディアス族の中でも郡を抜いており、超能力の力の持ち主だった。故に天国にいたとしても超能力によるテレパシーさえ使ってしまえばこのように俺に話しかける事が出来るのである。
「お母さん、俺は………、」
――わかっています。ダークエンドドラゴンが倒せないのですね?――
俺はふらつきながらも立ち上がり、頷いた。
――なら、私も共に戦います。――
「えっ?」
突如として暗黒に包まれた空から一筋の光が差し込み、その光の中から大量すぎるほどの雷がダークエンドドラゴン目掛けて落ちてきた。大量の雷は見事にダークエンドドラゴンに直撃し、ダークエンドドラゴンは弱気な雄叫びを上げて何処かへ飛んでいった。
「そんな!!ダークエンドドラゴンが!!」
謎の人物はこの状況に驚きを隠せないでいる。俺達からすればケミアが俺達を助けたという事はわかるのだが、ケミアの声を聞いていない謎の人物には何が起こったのか理解出来なかった。
――私は何時でも、貴方の味方です。――
「ありがとう、お母さん………!」
俺は天国にいる母親に感謝すると、謎の人物を強く睨み付けた。すると謎の人物が突如として自分の顔を掴み始めた。
「そろそろ潮時ですし、ダークエンドドラゴンも倒された所なので、正体を明かしても良いでしょう。」
そう言って謎の人物は自分の顔を――正確には自分の顔に着けていた顔マスク――剥がし、その素顔がアラワになった。
「そんな………!」
「なんで…………こんなことをしたんだ……………?」
「鈴神さん…………………!!」