DREAM3【戦う力を得た日】
私は謎の眩しい光に目を瞑り、一瞬目が眩んだ状態になった。目を開けてみると、城門が開いていた。そこから城の中を覗いてみると、とある物が大量に展示されていた。
「キーブレード!?」
そう、なんとキーブレードだった。何故こんな数のキーブレードが展示されているんだろう?レプリカと言う感じでも無さそうだし、本物だとしてもこんなにたくさんあるはずが無い。
私は再び羽を広げ、滑空する事で一気にその部屋へと入っていき、展示されているキーブレードの1つの前で止まった。
何処からどう見てもキーブレードだった。では何故こんな大量に?しかもキーチェーンとなる物が一切見えないってどういう事なんだろう?
そう考えていると、後ろからレンがやって来て、キーブレードを指差して言った。
「これはDohブレードさ。」
「Dohブレード?」
「【Dream・Of・Hope】の略称だよ。クロナ、試しにキーブレード出してみてよ。」
「えっ?うん……。」
私は訳がわからないままキーブレードを出そうと左手に力を集中した。でも、何故かキーブレードは現れない。何時もと同じやり方で出現させようとしているにも関わらず、キーブレードが出てくる気配すらなかった。
「えっ!?どうして、どうしてなのよ!?」
「あのなぁ、お前は今意識だけがこの世界に来て、それが脱け殻に入ってるだけの状態なんだから、キーブレードも出せねぇよ。」
とローグ。キーブレードは強い心の持ち主、選ばれた人しか使えない特殊な武器。つまり今の私は意識の存在でしかない。今の身体も夢の世界での借り物。つまり自分本来の心が無いからキーブレードは出せないって事なのだろう。私は少しショックを受けて凹む。それを見たレンは説明を再開する。
「君見たいに本来の武器を使えないって人の為に産み出されたのが、このDohブレードなんだ。」
「これは元々、キーブレードを元に夢の鉱石や結晶をかき集めて、様々な合成、錬金を繰り返し、ようやく産み出した夢の世界でのキーブレード。」
「しかも様々な実験の結果、キーブレードとほぼ同等の力を発揮出来る事も判明した。」
「唯一普通のキーブレードと違う所があるとすれば、誰でも扱えるって所だな。」
「誰でも扱える………キーブレード?」
「そう、だから俺達も持ってんだ!ほら。」
そう言ってレンは右手から青色のDohブレードを出現させた。ローグも何時の間にかDohブレードを出現させており、私は夢の世界のキーブレードの存在を知った。
「さて、お前はこの世界では武器さえ所持していない。だから、この展示室のやつから好きなのを選べ。」
私はローグの言葉に強く頷き、展示されているDohブレードの観覧を開始した。中には強そうだけどデザインがダサい物や、可愛い見た目だけどステータスが低い物など、たくさんあった。その中でも私が途端に見入ってしまった物があった。
それはソラさんの持っていたキーブレード:約束のお守りをアレンジしたような真っ白いキーブレード。私はこのDohブレードを気に入り、これにする事にした。
「それにするのか?」
「…うん!」
ローグがそのDohブレードを取り、私に手渡した。
「それは【誓いのお守り】と言うキーブレードだ。」
誓いのお守り。それが私の武器の名前。まさか名前まで約束のお守りのパロディだとは思わなかったけど、何気にDohブレードって、現実世界のキーブレードを真似て作られているのかな?
「クロナ、これを。」
レンは私に別のDohブレードを手渡した。それは闇のように真っ黒くて、でも何処か儚げな雰囲気の、誓いのお守りとは対の存在と思えてしまう物だった。
「それは【忘れ去られた思い出】。誓いのお守りが光なら、それは闇だ。」
「えっ、でも……二刀流!?」
「そうだよ。言ったろ?誰でも扱えるってさ。」
確かに誰でも扱えるとはさっき言ってたけど、二刀流も可能なんだ。まぁ確かにこの武器は心との関係は無いから、そこは普通の武器と一緒なんだ。
私は右手に闇――忘れ去られた思い出を、左手に光――誓いのお守りを持ち、そのまま羽を羽ばたかせ、空を飛んで二つの武器を練習にと振るってみた。
「ふうん……感覚はキーブレードと一緒なんだね。」
私は右手、左手の順番で武器を軽く降り下ろす。暫く繰り返していると段々慣れてきて、やがて物にする事が出来た。
「クロナ。それの扱い方はキーブレードとほぼ同じだ。」
「わかった!」
私は飛ぶのを止め、地に降りた後にDohブレード二つを消滅させた。光の欠片のようにして散っていきながら消えていくのもキーブレードと同じなんだ。
「おいっ!レン!」
突如として入り口の方から荒々しい大声が響いた。その方向を見てみると、そこにはレンと同じくここの守護兵士らしき人がいた。ここまで走ってきたのか、部屋の前で止まって息切れしている。
「どうした?」
レンがその守護兵士に駆け寄る。兵士は下げていた頭を上げて言った。
「ナイトメアが……町の外で暴れてやがる!!」
「何だと!?」
兵士の告げた言葉。それは先程ローグに解説してもらったドリームイーターの一種であるナイトメアが町の外で暴れ始めていると言うもの。それを聞いた私はいても立ってもいられなくなり、羽を広げて高速で飛んでいった。
「おいクロナ待て!」
ローグが私を呼び止めるが、私はそれを無視し、ナイトメアがいると言う町の外へと向かう………