DREAM5【それもまた1つの姿】
私――クロナは今、ローグとレンにこの町の案内をしてもらっている。二人の解説を聞くところ、ここは現実世界にも存在していて、かつて賢者アンセムと言う、偉大な賢者が納めていた通称『輝ける庭』。10年前までは平和な世界だったらしいけど、ある日ハートレスに襲われ、『ホロウバスティオン』と言うハートレスの巣窟となってしまっていたが、今となってはソラさん達の活躍で、レイディアントガーデンに戻っている。ここはたぶん、世界の子供達の見ている夢の中のレイディアントガーデンなんだろう。
私は二人に案内されている間にたくさんの町の住人を見ていて、気になった事があった。それを今からローグに聞いてみる事にした。
「ねぇ、あの人達も夢の世界の住人なの?」
「あぁ、ここに限らず、この世界に生きる全ての人間が夢の住人。あれも所謂アバターだな。」
「世界の子供達が見ている夢の中の人達か………。じゃあ、私達も?」
「あぁ、もしかしたら探せば会えるかもな。この世界での自分に。」
ここは夢の世界。つまり私からすればパラレルワールドみたいなもの。だから何処かにこの世界の私がいるかもしれないと言う事。私はこの世界の私に会いたいと言う期待を膨らませた。
一方、私達の知らない場所で、恐ろしい計画が始まろうとしていた。
何もない真っ暗な部屋。暫くして床だけが赤い光を放ち、その光に照らされるようにして四人の謎の人物が現れた。全員謎の白いコートに身を包んでおり、フードで顔を隠している。
「どういう事だフェクド。」
四人の中で一番身長の低い少年がフェクドと言う彼より少し高めで細めな男に話し掛けた。フェクドは少年の方を向き、
「わからない。俺がレイディアントガーデンに送ったナイトメアが何者かに倒されたって事くらいしかな。」
その言葉に少年は頷く。その少年の隣にいた大柄の男が腕組をし、何かを考え始めた。その様子を見ていたこの四人の中で唯一の女性である人物がその大柄の男に話し掛ける。
「どうしたの?メラクリオン。」
メラクリオンと言う名前の大柄の男は女性の方を向き、言った。
「メッグレス。お前は何も感じないのか?」
「感じるって、何を?」
「ナイトメアを倒した人物……恐らく何かある。」
ナイトメアが何者かに倒された事が引っ掛かるメラクリオンだが、それを理解しているのは少年ただ一人だった。その少年は他の三人を見て、言った。
「なら俺が調べに行く。」
「ドゥーハ、本気か?」
フェクドがドゥーハと言う名前の少年を心配するようにして言う。ドゥーハは強く頷き、その部屋を去ろうと歩き出した。その途中、ドゥーハは何かを吐き捨てるように呟いた。
「ナイトメアの不明な消滅……【ベネトナシュ】に報告したらなんと言うだろうか………?」