DREAM8【夢と現実の繋がり】
青い空、青い海、真夏のように眩しい太陽。私達が降り立ったこの世界はまさに現実世界のデスティニーアイランドその物のようだった。しかし、ここは夢の世界のデスティニーアイランドであって本物ではない。私達がいるのは本島から離れた位置にある孤島で、ここは一年前にソラ君やリクさんが遊び場にしていたらしい。不自然に曲がったパオプの木もしっかり再現されている。
「この世界の何処かに、ナイトメアがいるんだよね?」
「そのはずだが………」
私達がドリームイーターの一種であるナイトメアを探し歩いていると、波打ち際の方に何かを見つけた。それは砂浜に寝そべって気持ちよく昼寝しているソラ君だった。
「あれはソラ君だよね?」
私はソラ君に気づかれないように小さな声で二人に聞いた。フィオ君は静かに頷き、ダーク君は同じく小さな声で言った。
「よく見たらあのソラ……過去のソラじゃないか?」
「じゃあここって一年前のデスティニーアイランドって事!?」
ダーク君の発言にフィオ君は驚き声を上げる。幸いソラ君は気付いていない。
フィオ君の言うとおり、ここは一年前のデスティニーアイランドをそのまま移したような世界と考えるのが妥当だろうか。
「と言う事は、本来この世界は時期に闇に飲まれて、ソラ君達は離れ離れになるんだよね?」
「だがナイトメアが出現している以上、未来が変わっちまうかもしれないな」
その意見には頷くしか無かった。もしこのままナイトメア達が現れ、この世界のソラ君達を消滅させたら正しい流れでは無くなってしまう。私はこの時、ローグから聞いた事を思い返していた。
『夢の世界の住人は現実世界の同じ存在と繋がっていて、片方が経験した事はもう片方にも記録される。もし夢の世界での出来事が現実と異なってしまった場合、現実世界の住人の存在が曖昧となってしまう。だから、もし夢の世界での出来事が変わりそうな場合は、最優先にそれを阻止して欲しい。』
もしこのままこの世界のソラ君達が消され、出来事が変われば現実世界のソラ君達の存在が曖昧となり、下手をすれば消滅してしまうだろう。夢と現実は繋がっている。つまりあれもある意味では本物のソラ君だ。
「あっ、見て!」
フィオ君がソラ君のいる場所を指差した。その方向にはソラ君だけでなくカイリさんがいて、何かを話していた。
「そろそろサボる頃だと思ったんだよね、ソラは」
「サボってなんか…!」
二人とも若い。一年前の夢だから当たり前だけど、二人が普段より幼く見える。リクさんから聞いてはいたけど、ソラ君って本当に良くイカダ作りをサボってたんだ。
そうして私達は暫くソラ君、リクさん、カイリさんの様子を隠れながらこっそりと見守っていた。今のところナイトメアは姿を現す気配を示さず、あっという間に夕方になり、太陽の光が辺りを黄昏色に染めた。
「もし俺達が欠片なら、何故俺達は、この世界に生まれなくちゃならなかったんだろう?」
先程まで会話が聞き取れなかったが、リクさんの言葉の一部がやっと聞き取れた。今の台詞からすると、この頃から外の世界に行きたかった事が良くわかる。
三人が島から離れ、後には沈黙だけが残った。唯一の音は波の音くらいだろうか。私達は誰もいないこの島で手分けしてナイトメアを探していた。しかし、一時間以上探してもナイトメアが姿を現す事は無かった。
「どういう事だ?あの情報は嘘なのか?」
ダーク君がローグの使いの情報を疑い始め、悩み始めた。確かにこれだけ探してもナイトメアが現れないとなると、疑いたくなるのも当然だろうか。実際私も少し信じられなくなってきた。
「いいや、嘘ではない。」
突如として聞こえたその声と共に空中、地中からナイトメアが私達を取り囲むようにして現れ、私達の目の前には白いコートに身を包んだ謎の青年がいた。謎の青年は静かにフードを外し、竜巻のようにツンツンと逆立った金髪の髪が露となった。静かに開いたその瞳は緑色に煌めき、その手には長いライフルが握られていた。
「誰!?」
「俺はドゥーハ。お前達を待っていた」
ドゥーハ?待っていた?私はこの時、とてつもない絶望感に襲われた。なんと目の前にいる青年こそが七星座の一人であるドゥーハであり、しかもドゥーハは私達を罠にはめようと待ち構えていたのだ。ナイトメアの数は推定50体と言った所だろうか。しかもそこに七星座がいるとなると、私達に勝機は無いも同然である。
「悪いが、早速消えてもらおうか」
ドゥーハのその言葉と共に、ナイトメアが私達に襲い掛かるが、その瞬間にナイトメア達が消滅し、目の前にはフードを被った謎の少年がキーブレードのような物を持って立っていた。
「えっ?」
「な、何者だ貴様!」
動揺を隠せない様子でドゥーハが謎の少年に問い掛ける。すると少年はこう答えた。
「強いて言うなら……夢を知るもの、かな?」