DREAM14【それは一対の物】
「それで、この世界にはどんな用件で来たの?」
そう、それが一番気になっている事だった。夢の民ならば普通は夢の世界で活動するのが一般だろうが、ここに来たと言う事は何か重要な用事があると言う事だろう。
「協力者を迎えにね」
迎えにと言う事はすでに約束していると言う事だろうか。まぁ、夢の民と現実世界の人間の関わり方と言えば私達と同様に夢の中に現れる事くらいか。
それにしても協力者となると、私達のように十分戦える人物で、アディア本人も認める程の者なのだろう。アディアは一体誰と約束をしたのだろうか。
「で、その協力者の名前は?」
ウサギ姿のアディアを見下ろしてダーク君が言った。もはや彼女がウサギであることも女の子である事もどうでもよくなったらしい。現にすでに何時もの表情である。
「闇のキーブレード使い、ディア・マークス」
その名前を聞いたとき、私達は驚愕した。レイ君から別れた心の闇の部分、純粋な闇の存在で、1度この世界をキーブレード戦争を用いて滅ぼそうとしたが、レイ君に阻まれ、その後はどういう訳か霊体のような状態で留まっていたらしい。
でも改心はしたらしく、その後はダークエンドドラゴン事件の時に共に戦ってくれた。今思えば敵だったけれど頼りになる仲間だ。
現在は本格的に光の存在になる為に、他の世界で己を鍛え直しているらしい。それも人知れず。知っているのは事件の時に共に戦ってくれたメンバー程度である。
「それで、ディア君は何処に?」
「えーと、『ランド・オブ・ドラゴン』の山奥にいると思うけど」
キーブレードの勇者ことソラ君も訪れた事のある世界であるランド・オブ・ドラゴン。そこにある山の奥深くに籠り修行をしている事を伝えた。
「わかった。じゃあ悪いけど、連れてってくれる?この身体だと夢の民の力が制限されちゃうんだ」
私達はもはや当たり前のように頷いていた。アディアが私の右肩に飛び乗り、その様子はさながらペットの様。キーブレードを使い、目の前に光の回廊を出現させた。
回廊の先には当然ランド・オブ・ドラゴン。しかも例の山の奥だ。近所にたどり着いたお陰で、早くも彼の姿を見つける事が出来た。
容姿ははっきり言ってレイ君と大差無い物だけど、髪は真っ黒で、瞳は金色と、まさに心の闇だと一目でわかりそうな見た目で若干肌が白め、白と赤を中心とした服装の彼がアディアの探しているディア・マークスだ。丁度今修行が終わったのだろう、近くにある岩の上に座っている。
「久し振りー!」
歩きながら手を振って挨拶をした。疲れていたのであろう俯いていたディアがこちらに気付き、顔を上げて同じく手を振ってくれた。
「クロナか、退院おめでとう」
その表情はそっくりさんであるレイ君とは違うが、笑顔だった。彼も笑えるようになってきたと言う事は、少しずつだが光に近付いていると言う事だろうか。
修行の事を聞いてみると、どうやらそんなに上手く行っていないらしく、今まで使えていた技が全て使えなくなり、ダークモード(あの黒い筋肉スーツみたいなのを着た姿の通称)になれば闇を制御して使えそうなのだが、それだと闇に逆戻りするので使っていないらしい。
使えないと言う事実をわかっていながら努力するのはディアらしいと言えばディアらしい。
「で、そっちのウサギがアディアか」
「あぁ、はじめましてだね、ディア君」
約束をした二人が初めて現実世界で対面した。ディアとアディアと言う似た名前の二人が握手をするが、アディアの場合ウサギの小さい手なので、何処かシュールな光景であった。
「さてと、ディア君。本題だけど……」
「あぁ」
アディアはディアに、夢の世界で何が起こっているのか、及びそれを救うには現実世界の協力者が必要な事、七星座の事を教えた。