DREAM15【現実世界の助っ人】
「なるほどな……だが、何故俺なんだ?」
アディアから事情を聞き、共に夢の世界で戦ってほしいと彼女共々頼んでみたが、流石のディアもこれには疑問に思ったようだ。現に表情が今までの彼からは考えられないほど曇っている。
「もっといるだろ?ソラとかリクとか……王様とか」
「ソラ君とリクさんはマスター承認試験の真っ最中で、王様もそれに出席してるらしいよ」
ディアの言い分はもっともだが、すぐに補足した。二人ともイエン・シッド様に呼ばれ、マスター承認試験を受けている為、残念ながら今回二人の助力は得られない。それに王様の力も。夢の世界での事件中に試験が終われば助けてもらえるだろうが、事は一刻を争うため、そんな事は言ってられなかった。
「つまり、今現実世界で頼れるのはディア君!君しかいないんだ!お願い!!」
アディアの必死の説得。特に直接肩に乗せている私からしてみれば耳元なので誰よりも数倍大きく聞こえる。その声は真剣その物だった。
「……ならその夢の世界とやらを見せてくれないか?流石に今の話だけでは信じにくい」
「わかった。じゃあ今日の午後10時に必ず寝てね。夢の中に迎えに行くから」
「わかった」
二人の話が終わり、ランド・オブ・ドラゴンを後にした。アディアは一旦夢の世界に戻り、アンセムさんと次の世界を調べるらしく、フィオ君とダーク君はディアス家に帰宅、私は久々の我が家に帰宅する事にした。
家に入ってそうそう盛大に迎えられ、様々な事を聞かれた。取り合えず適当に答えてその場をやり過ごし、久し振りに自室に入った。
広くも狭くも無い面積、水色の床、白い壁と天井、水色中心の家具達、白いカーテン。何も変わらない私の部屋だった。私は机の上に飾ってある写真に真っ先に目が行った。その写真を手に取り、目の前に持ってくる。
それは幼い頃、レイ君と二人で撮った思い出の写真だった。レイ君は何時も弱くて、出来ることも少なくて、その癖諦めが悪くって。とにかく凄く勇気があって優しい人だった。
しかし私が浚われて、十年後に助けに来てくれた時には見違える程に成長していて、私にはほど遠すぎる強さだった。その強さは私を救う為に手に入れたと言っていたが、それは本当だと思う。それにそう思うと思わず嬉しくなる。しかし、それだと私がレイ君の隣にいれない気がしてなんだか怖い。レイ君だけが強くなっていって、どんどん私を置いていってしまう。そう考えるだけで怖くて怖くて仕方なかった。
その写真を見ている内に私の笑顔は徐々に消えていき、ぼろぼろと涙を流していた。写真に落ちた涙が少しずつ滲んでいく。まるで昔の思い出を埋め尽くすかのように。
これ以上は悲しさが増すので、私は写真を机に戻し、窓の外に手を伸ばして空を見上げて言った。
「レイ君……私は怖いよ。君に置いていかれるのが………君がどんどん遠くなっていって、何時か触れられなくなっちゃわ無いよね………?レイ君、もう一度その声を………笑顔を………」
それだけ言い、私はベッドの中に潜った。頭の中がぐちゃぐちゃでどうすれば良いのかわからなくなってしまったのだ。考えるのを止めたとき、私はいつの間にか眠りに落ちていた。