DREAM22【邪念シャットアウト】
「みんな、見て!」
暫くワンダーランド中をさ迷っている内に明らかに意味あり気な通路を見つけた。なんとそれはティーパーティを行えそうなあの部屋に隠されていたのだ。道理で何度も同じ場所をさ迷う訳である。
「さぁ、準備は良い?」
アディアの言葉に全員が頷き、自信に満ちた表情でそれぞれ歩み出した。
その通路は他の場所とは異なり、かなり静かで今にも何か出そうな場所だった。特に暗いと言う訳でも無いが、物音が一切せず、何もないと言う事が不気味さを漂わせているのだろう。
「なんか……不気味だな」
何時も冷静なダーク君でも不気味と称する程の謎の雰囲気を放つこの通路だが、ここさえ突破してしまえば謎の猫が言っていた七星座のいる場所へとたどり着く事が出来る。そう考えると簡単に思えるだろう。だが、この通路は思ったよりも長く、あの七星座が何も対策をしないのは考えづらいので、想像してるよりも難しいのだろう。
「……」
「フィオ?」
流石に心配になったのか、ダーク君は先程からずっと黙り込んでいるフィオの肩を叩く。二人は親友。だからこそお互いの変化など一瞬でわかり、声を掛け合える。まるで私と"彼"見たいに……
「……ねぇダーク」
「なんだよ?」
アディアとディア、私はそのまま歩いているのに対し二人はその場に立ち止まって話をしているようだ。ダーク君の表情は明らかに困惑していて、フィオ君の表情はとても深刻そうだ。それを見てすぐに大事な話だとわかったので暫くそっとしておく事にした。
「僕達……本当に七星座のエージェント達を倒して良いのかな?」
エージェント。七星座の下位四人の事で、仲間の為に戦いを強要された人達。利用されているだけの彼らを倒す事に迷いが生まれているようだ。
「当たり前だろ?事情はどうあれ、夢の世界を壊そうとしている事には変わりないんだ」
それに対してダーク君に迷いは無かった。以前はあんなに迷っていたのに、もうすでに決心していたようである。
「それに、やつらを死なせずに助ける方法もあるかもしれねぇし」
「ダーク……」
「……じゃあ、俺は行くぜ。何時までも悩んでんなよ」
そう言って歩き出した。その後をフィオ君が追いかけ、暫く進むとやはり予想通りナイトメア達が待ち構えていた。このまま何事もなく七星座と戦うと言うのは雲を掴むような話だとはわかってはいたが、いざ現実になってみるとやはり辛い物である。
「くっ、どうする?」
「戦うしか無いよね!」
ディアの問いに即刻答え、夢の世界のキーブレードことDohブレード二刀流による先制攻撃を仕掛ける。一撃で倒すとまでは行かないが、その乱舞でナイトメア達を蹴散らして行った。不意を突かれそうになった時にはディアが回り込んで倒し、遠距離の相手はフィオ君のアローガンが射抜く。そしてアディアとダーク君は私と同じく前衛で戦ってくれている。
「っ!こいつら、入った時のやつより強くないか?」
初めてこの世界を訪れた時にいきなりナイトメアに襲われた事をディアは覚えていた。あのときはいきなり襲撃された為に途中焦ったりもしたが、単体では弱い物ばかりだった。だがここのやつらは明らかにそれよりも強い。
「って事は、やはりこの先に?」
ディアは深々と頷いた。この先に七星座がいると言う証拠がいま目の前にある。もうすぐ彼らと戦えるのだが、その前にナイトメア達を何とかするのが先だ。確かに強いが、何とか倒せるレベルである。しかし数が多い為このままだとまた彼らがこの世界を破壊するかもしれない。何とか一気に倒す方法は無いだろうか。
「クロナ!」
ナイトメアの一体を斬りつけつつアディアが私の名前を呼んだ。
「この状況を何とかしたい、そう思ってるよね?」
アディアは見事に私の考えを見通していた。敵ナイトメアの攻撃を防ぎ、この状況を打破する方法を解説し始める。
「人との心の繋がり……絆を辿って相手の力を一時的に借りる技がある……それを僕達は【D-リンク】と呼んでいる」
「ディメン…ション…リンク?」
「うん、クロナ!君と一番心が繋がっている…絆の強い人を思い浮かべて見て!!」
私と一番心が繋がっている絆の強い人……もちろん決まっている。当然レイ君だ。アディアに言われるままにレイ君の事を強く思い始めた。
「うん、そのままその人を自分の中に取り込むイメージで、自分の力とするんだ!!」
私が思い浮かべるレイ君を取り込む?自分の力とする?なんだかよくわからないが、今思い浮かべているレイ君を受け入れ、自分の中に複合させると言う事だろうか。かなり現実離れしているが、そもそもここ自体夢の世界なので何も可笑しい事は無い。
『レイ君……私は必ず君を見つける。そして……伝えるんだ……』
それを受け入れていく内になんだか自分の想像しているレイ君と1つになるような気がして、少しずつ彼が私の中に入ってくるような、不思議な感覚もした。そして、完全に邪念を消し去り、彼の力が私の身体を駆け巡る不思議な状態となった。
そればかりか私の髪型、雰囲気などの様々な所がレイ君のようになり、持っている武器も元々の二刀流からレイ君のキーブレードであるレイムチェーンに変化していた。髪色は濃い茶色になり、レイ君のような青い瞳にもなった。
これが他人を取り込み、自分の力とする…D-リンクと言う事だろうか?
「なんだ!?クロナがレイ見たいに!!」
突然の事態に流石のダーク君も驚きを隠せないようだ。いや、それ以前にD-リンクを発動している私自身の方が驚いているのだが。
「あれは心を繋げ通わせた者にしか使えない秘技……D-リンクだよ!」
アディアの言うことは時々よくわからないが、レイ君と私は何時でも繋がっている。それだけはわかる。今の私には彼の力が使える。だから絶対に勝てると言う自信が溢れてくる。
「じゃあ、行っくよ!!」