DREAM26【犠牲】
D-リンクを発動した事により再びレイ君の力を借り、二体のナイトメアと戦う事になり、ディアをドゥーハと1vs1で戦えるようにした。つまり私の相手は二体と一見不利に見えるが、レイ君の意思があるから関係無い。
「行くよ!」
キーブレードを構え、二体に向かって駆け出す。先手を討とうと攻撃したとき、キバタイガーが守りの魔法、リフレガを使って防いでいた。そして背後からボウクンレックスが炎を吐き攻撃してくるが、それを私は風の魔法、エアロラで吹き飛ばすことで阻止する。
「ラグナロクRD!」
赤色のラグナロクことラグナロクRDを放ち、二体を攻撃するがギリギリの所で避けられた。常人には避ける事の出来ないスピードを避けた二体の距離は離れ、赤い光弾は消滅した。だが私はこれを狙っていた。
「隙あり!」
攻撃を避けたばかりのキバタイガーに文字通りブーメランの如くキーブレードを投げて攻撃する"ブーメランレイド"を仕掛ける。それは見事に命中し、キーブレードは右手に帰ってくる。
「君達二人の連携は完璧だった。でも、その連携も二人が離れれば、発動しない!!」
ラグナロクRDをあのとき放ったのは当てる為ではなく、わざと避けさせて二体に距離を作る為だった。あの二体はそれぞれのやり方で互いを守り、相手を少しずつ追い詰める、息のあったコンビプレーが出来る。だがそれはあくまで二体が近くにいるとき。だからこそ離れさせることで無力化したのである。
「くっ、キバタイガー!」
ボウクンレックスがキバタイガーの元へ戻ろうとしたとき、すぐに私はある技を使った。
「RDウォール!!」
その叫びと共に空から赤い光が差し込み、このフィールドに赤色で垂直線が引かれた。ボウクンレックスがそれを越えようとしたとき、何故か進まず、何かにぶつかったような音が響いた。
「なんだと!?」
「まさか、見えない壁があるとでも言うのか!?」
「その通り!」
赤い垂直線の中心に立ち、私は二体のナイトメアに軽く説明をした。
「この垂直線が引かれた場所には見えない壁が出来る。これを壊す事は出来ないし、発動者である私は壁を通過出来る。これで君達は二度と合流する事は無い!!」
垂直線はフィールドをキッチリ二つに分けている。キバタイガーとボウクンレックスはそれぞれ左右に別れ、越えられない壁によってあのコンビネーションを封じられた。
「これがRDウォール!!」
垂直線からずれてキバタイガーのいる方へ歩み寄る。その時に丁度D-リンクが解け、レイムチェーンは消滅し、元のキーブレードが左手に現れた。レイ君の力を借りていた時は右利きになっていたが、本来の私は左利きである。
「貴方達は、ここで倒す!」
手元に現れた紅色の花びらを放り投げ、キーブレードと共にその場で舞いを始める。すると放り投げた花びらから大量のそれが放出され、たくさんの花びらが中を舞い、キーブレードをその中に放り投げる。キーブレードの刃先が見事に中心に突き刺さり、爆発すると花びらが突然刃物のように鋭くなり、キバタイガーに向かって雨の如く降り注いだ。
「ぐあっ!!」
キバタイガーは大きなダメージを受け、その場に倒れ込む。まだ息はしているようなので消滅の恐れは無さそうだ。
「真紅の花が刃物のように降り注ぐ……これが私の、【ブロッサムレイン】!!」
夢の世界へ来て初めて新しい技を身につける事ができ、また1つ強くなる事が出来た。そして今度はボウクンレックスへと攻撃対象を変える。私の目的は彼らを消す事では無いので止めを刺すことはしない。
「貴様……よくも!」
ボウクンレックスが怒り狂って突っ込んでくるが、私はそれを正面から受け止め、鍔迫り合いとなった。
「くっ……うっ……ううっ!」
「うぉぉお!!」
ボウクンレックスの押しの強さは本物だ。このままでは押し返され、この場から落とされてしまうかもしれない。しかも私は女性である為男性よりも力が無いのは事実。このまま押し返されるしか無いのだろうか。
「クロナ!」
その時、私の名前を呼ぶ声が私を支えた。そう、アディアだ。アディアが私を後押しするかのようにその武器で攻撃に参加し援護していたのだ。
「アディア!残りのナイトメアは!?」
「大丈夫!二人が戦ってくれてる!」
あの二体をフィオ君とダーク君に任せ、わざわざ駆けつけてくれたアディアを感謝の眼差しで見た後、二人で力を合わせてボウクンレックスを押し返した。
「「うぉぉぉぉぉぉぉおお!!」」
ボウクンレックスは凄まじい音を立てて吹っ飛ばされ、ギリギリフィールドから落ちずに済んだ物の、暫くは立ち上がれなさそうだ。
「やったね!」
「うん!」
ハイタッチで成功を祝う私達を他所に、武器と武器が混じりあう音が何度も響いた。そう、ディアとドゥーハが戦っているのだ。
「やるな、ディア」
「そっちもな」
今のところ両者五分五分のようだ。現に傷の量がほぼ同じである。
「行くぞドゥーハ!これを止められるか?」
そう言ってディアはその右手に闇の力を集中させ、やがて禍々しいオーラが彼を纏った。そしてそのオーラの一部が彼のキーブレードを包み、漆黒色の長剣を作り出した。
「ダークフェザーレイド!!」
ディアが纏っていた闇のオーラが翼の形を作り、なんとディアは空を飛んだ。そしてその音速級のスピードでドゥーハの元へ飛び、そのまま切りつけた。その攻撃は一見ドゥーハに当たったように見えたが、それは別の物にヒットしていた。
「ぐっ……!」
なんとダーク君達と戦っているはずのオーラライオンだった。アシカジャグラーと共に私達を足止めしようとし、ダーク君とフィオ君に任せたはずの彼が何故ここに?
「お前……なぜ……?」
流石のドゥーハも驚いているようだ。自ら盾にした訳でもない仲間が今傷を追って目の前で倒れているのだから。
「ドゥーハ……様。間に合って……良かった……!」
その言葉を残し、オーラライオンは消滅してしまった。間に合ったと言う事は、アディアが私の元に行こうとしたのを見て、自分もドゥーハを守る為に駆けつけたのだろう。自らの命を投げ捨ててでも。
「そんな……!」
ドゥーハはオーラライオンがいた場所を見続けている。それも今までに無い悲しみを帯びた表情で。ドゥーハの仲間である彼の死は、ドゥーハにとってこの上なく辛い事であるはずだ。これまでにもたくさんの仲間を失い、そして今も失った。戦闘は一時中断し、ディアはただ後悔したような澄んだ瞳で悲しみに嘆くドゥーハを見つめていた。