DREAM27【もう1つの場所】
今、私達の目の前で信じられない事が起こった。七星座の一員でエージェントの一人であるドゥーハ。彼は先程までディアと1vs1で戦っていた。だがしかしその最中にディアの放った技『ダークフェザーレイド』がドゥーハに当たる寸前、彼の仲間であるドリームイーター、オーラライオンが彼を庇いその命を絶ったのだ。仲間を目の前で失ったドゥーハはおろか、対戦者のディア、そして私とアディアでさえも一言も言葉が出ない。そもそも彼らは無理矢理戦わされていた。そんな彼らを消すつもりなんて無かった。消したくなかったけど、出来なかった。やはり、この戦いに犠牲を出さないなんて不可能なんだろうか?
「オーラライオン……!」
ライフルを落とし、涙を流すドゥーハ。声が震えており、その悲しみが見ているこちらにまで伝わってくる。仲間を失う気持ちはよくわかる。私もそうだから。
「そんな………」
ここにいる全員を驚かせたこの出来事が起こっている頃、ダーク君とフィオ君も頑張っていた。
「やるぜぇ!ふっ!」
ダーク君はガンブレードを天高く放り投げ、大体5メートルの所までそれが行くと、その位置にジャンプし、空中で回転しているガンブレードをキャッチし、そのままナイトメアを切りつけるようにして落下した。
「超天空!!」
それは見事に残るナイトメア――アシカジャグラー――に直撃し、大ダメージを与えた。アシカジャグラーは痛みに苦しみ、マトモに動ける状態ではない。
「今だフィオ!バインドだ!」
バインドとは文字通り敵を拘束し、動きを封じる魔法。私と同様彼らの目的はけして彼らを消す事では無いので、せめて安全な所に確実に送ってやる事くらいしか出来ない。フィオ君はそのバインド魔法が使える。だからダーク君はある程度ダメージを与え、彼に合図した。だが……
「………」
「フィオ?」
何故かフィオ君はボーッとしていて動かない。それにどこか震えていた。まるで彼らを攻撃することを恐れているかのように。
「隙あり!」
フィオ君が止まっている間に隙を突かれ、アシカジャグラーが突っ込んできた。よく見るとその身体が光を放っており、今にも爆発しそうだ。
「しまった!」
「ドゥーハ様!!貴方だけは!!」
アシカジャグラーが最後の言葉を言い切る前に爆発してしまった。あれは恐らくダークエンド事件の時、レイ君と対戦したヴィヴァードことリアスが使った『スフィアボム』と同一の物と思われる。その証拠にアシカジャグラーの姿が無く、そこにあるのは幸い守りの魔法リフレガで防御し、身を守っていたフィオ君、ダーク君の姿だけだった。
「消えた……!?」
もしかすると、彼もまたオーラライオン同様命を賭けて主人を守ったのかもしれない。
「アシカジャグラーーーー!!」
その爆発を見ていたドゥーハはもう一人の消えた仲間の名前を必死に叫んだ。オーラライオンに続きアシカジャグラーまでも消え、名前がどんどん消えていく悲しさだけが彼を取り巻く。
「俺は……俺は……!」
一人称を連呼する度にそれぞれこのフィールドの両端に倒れている二体のナイトメアを見て、恐怖の表情を浮かべるドゥーハ。二体は消えはしないが、瀕死の状態に陥っている。
「どうすれば……良いんだ……!?」
悩むドゥーハ。その様子を見て先程から黙りっぱなしだったある人物が言い放った。
「……頑張れば良いじゃないか」
ディアだった。再びキーブレードを構え、闇の力を消し光の力を解放している。どうやら冷静さを取り戻し、再び光となったようだ。現に格好が白を基調とした私服に戻っている。
「消えた仲間はお前を守る為にその命を捨てた……ならお前も、同じとまでは行かないが……似たような事をして残った仲間に希望を残せば良い」
敵にさえ情けをかけるディア。やはりあの二つの事件は彼にとって自分の何かを変えるきっかけだったのだろうか。
「それに、俺はお前みたいなやつを知っている。あいつは自分の記憶が消えるのをわかっていて、世界を、みんなを救った。自分の危険を省みず仲間を救ったのだ。もしお前が本当にあいつと似ているなら……全力で来るはずだ!!」
あいつ、つまりはレイ君の事を少し話、馴れない光の力で迎え撃とうとするディア。ドゥーハは落ちていたライフルを勇気を振り絞って掴み、再び構えた。
「良いだろう!!俺もこの命、みんなの……みんなの希望の為に使う!!」
そう叫ぶと共にライフルが突然変形を始めた。数秒後にはすでに大剣の姿になっており、先程まで遠距離から攻撃していた事を考えるとこれでお互いフェアとなった。
「うぉぉぉおおお!!」
ドゥーハが悲痛の叫びを挙げながら斬りかかって来るが、ディアがなんと一瞬にしてその姿を消した。だがすぐにドゥーハの背に現れた。
「例え今のお前達の居場所がベネトナシュのせいで無いとしても、みんなの心に希望を灯せば新しい……お前達の"もう1つの場所"が生まれる!!」
そしてそのままディアは現れては斬り、消え、現れて斬り、消え、それを繰り返し、最後には背後からの居合い斬りを決めた。
「クローン・ド・ラグーン!!」
ディアが新しい技、クローン・ド・ラグーンによってドゥーハを打ち倒した。ディアにとってはこれが初めての光の技であり、初めて光として敵に勝利した瞬間である。
「見事……だ!!」
ドゥーハは自分を倒したディアを称えながら、光と共に消滅して行った。まるで風に吹かれる砂のように、一瞬で。