DREAM37【離れてても…】
私達は何故か戻ってきたディアと鈴神の協力によって町のナイトメア達を全滅させることが出来た。あれだけの数が暴れていた為、当然被害は大きい。まるで怪獣が歩いた後のように建物が潰れている。
「なるほどね…」
ディア以外の私を含む三人は鈴神が協力してくれた訳を聞いた。アディアは未だに疑っていたようだが、ダーク君はあっさりと彼女に心を許した。それは私も同様で、鈴神に手を差し出した。
「一緒に戦おう、鈴神さん!」
「……はい!」
新たな仲間、鈴神と握手を交わし、これで夢の世界を歩む仲間達が再び五人となった。もっとも、鈴神の能力は戦闘向きではないので前線メンバーは四人のままだが。それでも後衛に誰かいるのといないのとでは大きく違うのは明白なので、彼女はこれから大きな戦力になってくれそうだ。
「所で、さっきの瞳は何だったんだ?」
「あれは“ライブラルンガ”ですよ。ライブラ系魔法の最高技です」
「あっ、それってもしかして最近発見された新しい段階?」
鈴神の言うライブラルンガのように魔法には実は隠された段階があり、誰もその存在を知らなかったほど未知かつ強力な物だ。例えばファイアならファイア、ファイラ、ファイガと言った感じに進化するのだが、実は本当はさらにその先があり、ファイガル、ファイガルン、ファイガルンダと言うように最大6段階にまで進化出来る。
もっとも、未知の進化の魔法を持っているのは今の所鈴神のみなのだが。
「はい、覚えるのはとても苦労し………っ?」
突然鈴神は先程のようにライブラルンガを発動し、その瞳の色を金色に変えた。その視線の先は天空に浮かぶオリンポスコロシアム。
「どうしたの?鈴神さん」
「あのコロシアムの方に、強大な反応を一つ感知しました。しかもそれはこの世界を荒らして回っているモンスター達の発信源でもあるようですね」
「何だとっ!?」
事情を知らない鈴神さんは七星座の事はわからない為曖昧な言い方しか出来ないが、少なくとも私達は今の言葉からオリンポスコロシアムの方にいるのは七星座の一人であると読み取れた。
「今そいつは何をしてるのさ!?」
「コロシアムに攻撃を仕掛けようとしていますね。何者かが止めているようですが、持って三十分と言った所でしょうか……
「私が先行する!」
ローグから譲り受けたジョブストーンを使い再び天使姿となり名乗りを挙げる。普通の人の足では三十分内に上空のコロシアムへ向かうなど不可能だろう。しかしジョブチェンジにより天使姿となった私が飛行した場合誰よりも早く移動出来た。だから今回もその早さを使えば間に合うだろう。
「なら私も同行します。クロナさん一人では太刀打ち出来そうにない反応ですから」
鈴神さんの同行を了承し、私達二人は一気にオリンポスコロシアムへ向けて飛んだ。ちなみにジョブチェンジしていない鈴神さんがどうやって飛行しているかと言うと、単純に私と手を繋ぐ事で同時に飛んでいるだけである。
「鈴神さん、さっきはありがとう」
「何がですか?」
「だって、心配してくれたじゃない。私一人じゃ太刀打ち出来ない相手だって。だから着いてきてくれた、それは本当に感謝してる」
「でも、私なんかがいてもバックアップしか出来ませんし…実質戦っているのはクロナさんお一人で……」
「大丈夫だよ」
先程までいた町が少しずつ離れていき、逆に目的地であるオリンポスコロシアムが近付いてきた。不安そうな表情をしている鈴神さんを勇気付けようとこう言った。
「離れてても、私達は繋がってるからね…」
仲間達は繋がっている。その心の繋がりを辿って私達は巡り会う。これはレイ君の言葉でもある。彼の意思は私にも受け継がれており、もちろん他の仲間達にも受け継がれている。それを聞いた鈴神さんは何処か安心した表情を浮かべていた。