DREAM39【宿命】
そして私と鈴神さんはあっという間にオリンポスコロシアム前までたどり着いた。やはりコロシアム中被害を受けており、その中心には案の定やつがいた。やつは身体がボディービルダー並みに大きく、短い茶髪を立てていると言う容姿で銅色の鎧に身を包んでいた。
「お前達か、ドゥーハを倒したと言うのは」
「……そうだったら、どうするの?」
七星座の一人であろうその男は自らの武器であるアックスを取り出し、こちらを強く睨み付けた。
「全力で叩き潰すまでだ!我が名をメラクリオンと言う!!」
今倒すべき敵、そしてベネトナシュに思うように操られてしまっている七星座のエージェント、メラクリオンは仲間であるドゥーハを倒され本格的に私達を潰す気だろう。無理もない、何せどっちも自身が正義だと信じた事をしているのだから、同じ正義を持つ仲間をやられて黙っている訳が無い。
でもそれは私達も同様だった。私達には現実世界で待ってくれているたくさんの仲間がいる、それに戦線離脱してしまった仲間も、そして今一番会いたい人も。だから……
「私は、世界の心キングダムハーツの巫女……」
自らの全ての力をこの左手に注ぎ、キーブレードを出現させ構えた。
「クロナ・アクアス!!」
たくさんの仲間の為にも負ける訳にはいかない、そう思いながらメラクリオンに向かって自身の名を叫んだ。
「……フッ、良かろう。クロナとやら、全力で掛かって来るが良い!!」
そして私達の戦いは始まった。今は私と鈴神さんの二人だけだが、みんなでドリームイーターを倒したお陰かあっちもメラクリオン一人だった。鈴神さんはバックアップ向きの能力である都合上後方に下がり、目を金色にして敵の分析を開始した。
「お前とは違う形で会いたかったな……!」
メラクリオンがそう切ない声で言い放ちつつアックスを降り下ろすが、私はそれを何とか受け止める事に成功した。
「そうね!もしそうなってたら……どうなってたのかしら!?っ!」
話をしつつ敵の攻撃を弾き返し、今度はこっちから得意のスピードで迫り連続突きを放ったが一つ一つの威力が低い為か彼のアックスで簡単に防がれてしまった。
「仲間になっていた……とでも言いたいのか?」
声は落ち着いているが攻撃を防ぎきった後のメラクリオンの表情はかなり焦っていた。やはり彼も夢の存在とは言え人間、人を攻撃する事を躊躇っているのだろう。
「さぁね……想像にお任せするわ!」
その言葉を言い終わると共にもう一本のキーブレードを出現させ、二刀流となった私は光速をも越える早さで連続攻撃を開始した。だがその大半は先程のようにアックスに防がれ、彼の身体つきの良さもあってかダメージは少ししか通らなかった。
「なるほど、決意は固いようだな…」
そのままアックスを水平に振られ刃が当たる寸前に私は飛んで避け、約50メートル離れた場所に着地した。
「ならば俺も本気を出す!女だからと言って手加減はしない!」
「望む所よっ!」
二人同時に駆け出し、お互い激しい乱舞を続けた。が、やはり重い。こちらのキーブレードはどちらも軽く、レイピアに近い性能でスピードに長けているのだがその反面威力が少ない。その為メラクリオンのアックスのような重い武器には相性が悪く、二本で受け止めるのがやっとだった。
「氷よ!」
一旦メラクリオンから離れ遠距離戦闘を取る事にした私は約40メートル離れた場所から氷魔法“ブリザラ”を発射した。氷の弾丸が高スピードで飛んでいくがブリザラが当たったのはメラクリオンではなく彼が使った守りの魔法“リフレガ”により張られたシールドだった。
「フッ……」
「…………くっ!」
以前は七星座のメンバーとはディアが戦ったからわからなかったが、七星座のメンバーはこんなにも強かった。特にこのメラクリオンはスピードと魔力で勝負する私にとってはあまりにも相性の悪い相手で、このままだとやられるのも時間の問題だ。
そんなとき、オリンポスコロシアムの入り口の方から聞き覚えのある声がした。
「おーい!」
声の主はアディアだった。それにダーク君とディアもおり、これで全員が揃った。
「みんな!来てくれたんだ!」
「当たり前だ」
「さぁ、みんなであいつを倒すよ!」
鈴神さん以外の四人全員が各々の武器を構え、メラクリオンはアックスを持ち直しこちらを一通りみると軽く高笑いをしてから言った。
「本気のようだな……お前の守りたい物とは、そこまでして守護したい物なのだな」
「……決まってるじゃない」
その瞬間、私の脳裏に彼の姿が浮かんだ。私にとって一番大切で守りたいモノ、それは世界でたった一人、レイ君――レイ・ディアスだ。彼は何でも出来るけど何も出来なくて、私の事を大切にしてくれて、ディアス族って言う少し特別な存在で
そんな優しい彼の事を私は大好き。あのディアス族特有の右手にあった紋章だって一族の証、つまりそれは家族である事を意味し、ディアス族と結婚した者もまたそれが刻まれる。
だから何時か私の左手にもそれが刻まれる事を願って、キーブレードをメラクリオンに向かって降り下ろした。