DREAM41【次の世界は】
その夜、私は不思議な夢を見た。夢の世界とは違う、不気味な紫色の邪悪な空間の中に私はいた
「……ここは?」
何処かわからない謎の空間に戸惑っていると何処からともなく足音が響き、その音は少しずつこちらに近づいてくるようにして大きくなっていった
「今晩は。調子はどう?」
「っ!?」
振り替えるとそこには信じられない姿を持った人物が現れた。あのあと私はダーク君と別れ、家に帰った後鈴神さんを案内してから食事を取って、お風呂も入って久しぶりにごく普通の生活を送ってから眠りについた。ここまでは良かった、そのまま夢の世界へ行こうとしていたのだが、今私がいるのは見知らぬ空間でありそこにいるのは私ともう一人
「なんで……私が!?」
「レイ君探しの旅、上手く行ってる?」
何故かそこにいるもう一人の私は姿形全て同じ容姿をしており、その口調や声でさえ完全に一致していた。そんな彼女はまるで親しい友人にでも話し掛けるかのようにそう聞いてきた
「……私ならそのくらいわかるんじゃ無くて?」
「フフっ、そうよね。確かまだ手掛かりすら掴めて無いんだっけ」
その言葉に謎の苛立ちを覚え、もう一人の私に向かってキーブレードを降り下ろしたがそれは見えない壁のような物に阻まれた。
「なっ!?」
「でも、それは貴女自身がわかってるはずよ。わかるのよ……だって私は貴女だから」
「貴女に何がわかるって言うの!!」
私自身を主張するもう一人の自分へ何度も乱舞を続けるが先程から見えない壁のような物に阻まれて一切危害を加える事が出来ない。まるで鋼の壁でも攻撃しているかのような音と感覚がそこにはあった
「貴女はあの日、レイ君を送り出した」
彼女はダークエンド事件のあの日の事を語り出す
「自分の事だけはせめて覚えて欲しいと約束して見送り、彼を待った。そのネックレスと共にね」
彼女は私の首に掛かっている彼のネックレスを指差して言った。あのとき何故レイ君がこれを置いていったのかわからないが、彼女は何か知っている風だった
「でも、貴女はレイ君に隣にいて欲しかった。だから隣に居られる程の力を欲し、離れたくないと願った。矛盾してるよね?」
「うっ……」
「レイ君は貴女を助ける為に強くなった。でもそれは自分とレイ君の間に距離が出来ると、共に過ごす内に考えていった。彼が強くなることで遠くなってしまう……それを恐れた貴女は独占欲を強めたは良いけどそれを押さえて彼を見送った。彼が行かないと世界は滅んでいた事を、わかっていたから」
「それは……!」
「あのとき世界を選んだはずなのに貴女はレイ君を求め、ただがむしゃらに漠然とした目的に向かって突き進んでいる。本当は仲間なんてどうでもいい、違う?」
「っ……違うっ!!」
それをしっかりと否定すると彼女は突然高笑いを始め、腹を抱えて言った。
「我が儘すぎるよね?自分が彼の側にいたいだけなのに仲間達は貴女に着いていく。そう、貴女は仲間の事なんて何にも考えてない……ただ自分の不安を塗り潰したいだけ」
もう一人の自分がその言葉を言い放ったと共にその夢は終わり、次に視界に写ったのは何時ものレイディアントガーデンの風景だった。目の前にはすでにディアや鈴神さん、そしてアディアと言った仲間達やアンセムさんとレンの姿があった。特にレンとは久し振りに会う分一際目立つ存在感を放っていた。
「やぁクロナ、久し振り」
「あぁレン、久し振り。ローグ達は?」
「どうやら今は調べたい事があるらしいな」
何処か寂しそうな雰囲気を放っているディアがレンの代わりに答えた。何となくだが、ディアや鈴神さん達はダーク君が来ていない理由を察しているのだろうか。だがその事に誰も触れようとせず、気まずい空気と寂しい雰囲気が入り雑じっていた
「……メンバー、一人減っちゃったね」
「はい……」
理由を察してはいてもやはりその寂しさを隠しきれていないアディアの台詞に鈴神さんが頷いた。このどよんとした空気を覆そうとアンセムさんが口を開いた
「嘆いても仕方ない。次の世界を守る事を考えよう」
「アンセム……」
「アンセムさん……」
「さて、次の世界はビーストキャッスル。先程エージェントがその世界に進入するのを感知した」
「お前達、頑張れよ。俺はしっかりとここを守るから!」
そう言ってレンはレイディアントガーデンの城へと戻っていった。早速アディアがビーストキャッスルへのゲートを産み出そうと力を集中しており、その間に時間潰しをそれぞれ個人でする事になったのだが、私はあの夢の事をアンセムさんに相談していた。
「……なるほど。確かに難しい問題だね……」
「あんなの……私じゃないよ……」
この世界でしか見られない夢の世界での私の茶色の前髪が目に当たり、それを退けてすぐに俯いた。あのとき見た私が言っていた言葉が何故か引っ掛かる
「でも、大丈夫だと思うぞ」
「……えっ?」
「人は誰でも欲望は少しは持っている者。時に他人に合わせ、時に自分の意思に従う。だから少しくらい我が儘でも良いかもしれないね」
そのアンセムさんの言葉で余計に自分がわからなくなってしまった。あのときもう一人の自分が言っていた言葉はどういう意味なのだろうか、そう考えていると丁度アディアがゲートを構築し終わり、私達はそこからビーストキャッスルへと向かった。