DREAM42【漆黒の弓】
ゲートの先は薄暗く不気味な城の中だった。今のビーストキャッスルはこんなに薄暗くは無いが、恐らくレイ君の記憶――夢から出来ているので当時の姿を反映している
「鈴神、七星座は?」
「えーと、ちょっと待ってくださいね」
アディアにそう言われると鈴神さんはすぐに瞳を金色に変えてライブラを発動させた。実際に発動していない私にはわからないが、一体今鈴神さんの視界には何が写っているのだろう
「それにしても、前線メンバーが三人になってそうとう戦い難くなったな……」
「ちょっと前まで五人だったのにね……」
鈴神さんが周囲を探っている間にディアが呟いた言葉に頷くしか無かった。フィオ君は恐怖のあまり逃げ出し、それを心配したダーク君は彼を支える為抜けた
「仕方無いよ、彼らにも彼らの意思がある」
アディアの言い分も一理あるがやはり私は寂しいと思った。このままどんどん仲間が減っていって、最終的には一人になってしまうのでは無いだろうか。もしそうなっても彼を探せる事には探せるのだがそれではあのときの夢でもう一人の私が言っていた通りになってしまう
「……見つけました!このフロアにいます!」
「なにっ?」
「そいつは都合が良い。前見たいに一々探してたら面倒だからな、手間が省けた!」
鈴神さんの衝撃の報告全く動じずディアはキーブレードを構えた。今までは七星座は普通では見つかりにくい場所や常に場所を移動していたが、今回はなんとこのフロアにいると言うのだ
「敵もそうとう焦ってるって事かな?」
「かもしれないね。これまでに二人も倒して来たんだから七星座も世界の破壊よりも僕達を倒す事を優先すると思う」
アディアの言う事が正しければ間違いなく七星座は現れる。これまで二人のエージェントを倒してきた私達が真っ先に標的となるのはもはや当たり前であり、何時彼らが襲ってきてもおかしくなかった。
そしてその刹那、私のすぐ横を闇色の鋭い矢が駆け抜けた。
「っ!」
間一髪それを避け、天井にあるシャンデリアに飛び乗った。
「クッ、外したか」
向かい側のシャンデリアに乗っていたのは黒髪を逆立てた長身の男であり、その手には先程の矢と同じ物とそれを放つであろう弓が握られていた
「噂をすればなんとやらってやつね。貴方ここの住人じゃ無さそうだし」
「察しが良いな。流石はキングダムハーツの巫女って所か?俺はフェクドだ」
「へぇ……懐かしい通り名を出すのね?」
その瞬間フェクドと名乗った七星座の男が数本の矢を放ってきたのでそれをシャンデリアから飛び降りて避け、先程の床に着地した。それを追いかけるかのようにフェクドもまた飛び降りる
「懐かしいとしても、お前はその定めから一生逃れられないぞ?行けお前達!」
フェクドは着地してすぐ四体のドリームイーターを呼び出し、自身はもう一度弓を構えた
「ドリームイーターは俺が!」
そう言ってディアがたった一人でドリームイーター達に立ち向かっていった。ディアは彼らを上手く引き付けており、見事フェクドと切り離した。
「クロナ、今のうちに!」
「うん!」
ドリームイーター達がディアに引き付けられている隙に私とアディアはフェクドに立ち向かっていった。そしてそれを後衛から鈴神さんがバックアップする
「行くよ!」
その掛け声と共に私の左手に現れたのはレイピアタイプの氷を模したようなキーブレードだった。
「なにっ!?」
「キーブレードを変えたんだね!」
いくら夢のキーブレードと言えど流石にキーチェーンも本物同様だったようで、別のキーチェーンを着けた結果このレイピアのようなキーブレードが生まれた。私は早速それを用いて斬りかかった
「やっ!」
まるで現実世界で使っている普段の私のキーブレード――シャインセイバーのような性能を持つそのキーブレードは非常に扱い易かった。
「ぐっ!」
「次は僕だ!」
続いてアディアが攻撃を仕掛け、フェクドは更なるダメージを負った。フェクドは二人を倒した時の私のデータを聞いていたのか、非常に驚いた表情をしている
「私達は……負けたか無いのよ!!」