DREAM44【あの場所へ】
アディアが形成したゲートを潜るとそこは謎の殺風景極まりない荒野だった。何処か見覚えのあるようで記憶に残っていないその場所からは何処か不思議な感覚を感じた
「ここは……?」
「俺は覚えてる。ここは……俺が初めてあいつに会った場所だ」
ディアはとても辛そうな表情と寂しそうな声で言った。あのときこの場所を訪れたレイ君はまだセイだった頃のディアと出会った。そこでキーブレード戦争や自分の真実を聞かされ、戦いを挑むもソラ君が来てくれなければ負けていた。ここはそんな思い出がある
「ここに七星座がいるのでしょうか?」
「さぁね。それよりも、ちょっと良い?」
鈴神さんがこの荒野の事を調べようとした時、アディアが突然口を開いた
「僕、これからアンセムさんの所に行かなきゃいけないんだけど……良いかな?」
「えっ?」
「大丈夫、研究の手伝い程度だからすぐ戻ってくる」
「そう言う事なら……」
レイディアントガーデンで待つアンセムの元へゲートを形成して一旦アディアは先に帰って行った。どうやら一度行った事のある世界へのゲートはすぐに生み出せるようで、言い出してから数秒も経たない内にアディアの姿は消えてしまった。
「さてと、鈴神さん。七星座の事だけど……」
「……っ!」
その刹那、ディアが睨んだ方角から氷属性魔法“ブリザガ”の弾丸が降り注ぎ、咄嗟にキーブレードを構えて私達を庇った
「危ないクロナ!」
私達を押し倒すようにして謎の氷の弾丸から私を庇ったディアだったが、無意識の内に鈴神さんも助けていた。先程の氷の弾丸が飛んできた方向からは水色のショートヘアの女性が現れ、その手には片手剣が握られていた
「ちっ、まさか外すなんてね……」
「七星座!?まさかこんなときに……!」
氷の弾丸を使って私達を襲撃した女性が七星座だとすぐ気付き、ディア同様キーブレードを構えて彼女を強く睨んだ。鈴神はその時点ですでに瞳の色を金色にしており、何時でもバックアップが出来る状態にある。先程アディアがいなくなったばかりだと言うのに二人だけで七星座と戦うとなると初挑戦だが、かなり不利である
「私の名前はメッグレス。貴女達がエージェントと呼んでる存在の最後の一人って所ね」
メッグレスと名乗る女性が自分への皮肉を込めて言った。やはり三人も仲間を失って辛いのだろう、そもそもベネトナシュに無理矢理突き動かされているので不安も募る一方で私達を倒す気持ちも日に日に燃え上がっているのだろう
「私がここに来た理由、わかるわよね?」
「……言われなくても!」
彼女に何処かかつてのDEDの一員“ベクセス”の面影を感じたが、彼女は私達を始末しに来ている。だからこそ全力で迎え撃たなければならない。アディアがいない現状だからこそ私とディアの二人の連携が重要になってくるし、鈴神さんのバックアップも便りになると言うものだ
「準備は良いか?」
「何時でも!」
私とディア、そしてメッグレスの三人全員がそれぞれの武器を構え、この場に緊迫した空気が流れる。ちなみに何故メッグレスが先程からドリームイーターを出してこないのかと言うと、恐らく前回のフェクド戦でディアがエージェント達のドリームイーターを倒してしまった為と思われる
「絶対に倒す……仲間達の為にもっ!」
そう言うと突然メッグレスのまわりから力が溢れ始め、やがてその力は1つの形を形成していき、最後には1つの巨大な女性騎士のような魔物の姿になった。この何処かで見たことのあるシチュエーションに私はピンと来る物があった
「っ!まさか聖獣!?」
そう、以前レイ君が使っていたエルシオンのような存在――聖獣だったのだ。私も聖獣についてはよく知らないが、ここでメッグレスが使ってくるとは思いもよらなかった
「行け、ブリューナク!」
メッグレスの指示でブリューナクと言うらしい聖獣は高速で動き、その手に握っていた長い槍で私達を軽くいなした
「ぐっ!」
「ちっ……!」
それによりメッグレスから約50メートルほどの距離まで吹っ飛ばされ、鈴神さんがブリューナクをライブラで解析すると驚きの結果が出た
「っ!そんな……二人とも気を付けて!あの聖獣の能力は、私達を遥かに上回ります!」
「何……!?」
「……レイ君……」
敵が使う聖獣にかつてレイ君が使っていた聖獣エルシオンの姿を重ね、思考回路を巡らせてひたすらに必勝法を探った。だが当然すぐにはわからず、その間にブリューナクが攻めてくる為中々考えている暇が無い。私達は今、かつて無い逆境に立たされていた