DREAM47【仮面の少女】
「わぁ……!」
そこには何もかも懐かしい風景が広がっていた。いや、現実世界で元々ここにいたはずなのだが、最近は夢の世界を救う事で頭がいっぱいだった為にいつの間にかそんな事を忘れていたが、今こうして見ると何もかもがちっぽけに見える
「私達の……アース!」
「嬉しそうだね、クロナ」
「そりゃそうさ。なにせ、クロナにとってアースはあいつと生きた世界だからな」
ディアの言うとおり、ここには彼との思い出がある。共に笑ったり、共に泣いたり、そんな思い出達が私の脳裏を今も巡回している
「鈴神、ここに七星座かナイトメアはいる?」
「えっと……はい、気配は感じません。久しぶりにゆっくり出来ますね」
敵の気配がまるで無い事が笑顔の鈴神さんの口から語られた。それを聞いてみんなの表情も自然と笑顔になり、せっかくなのでそれぞれ個別にこの世界を見て回る事にした。それを提案したのはアディアであり、みんなそれぞれ思い更ける事があるのかすぐに散会していった。ちなみに合流は一時間後となっている
私は今そよ風村にある彼の家に来ていた。こちらのヒナタさんやヒトミちゃんは今出掛けているのか今家には誰もおらず、今来たばかりの私だけだった
ちなみに彼の家のどの部屋にいるかと言うと、彼――レイ君の部屋である。そこにあるベッドに腰を掛け、そこから倒れ込むようにしてもたれ掛かった
「懐かしいな……レイ君の家」
男子の割にはけっこうかたずいた清潔な部屋に私は関心しながら自分と彼の思い出を頭に浮かべていた。今はレイ君は何処かに行ってしまっているけれど、この部屋にると何故かレイ君がいる気がして安心出来る。だけど何時までもそれに甘えている訳にはいかない、だからこそ私は絶対にレイ君を見つけ出すと、そう決めたのだ
彼の部屋で彼が傍にいる関学を得て自分の不安に揺らいでいた心を落ち着けて家を出て暫く歩いていると、向こう側から一人の少女が歩いてきた。ヒナタさんかヒトミちゃんかと思ったが、違った
赤色と白色を基調とした女帝のような服装に身を包み、その体つきから女性だと判別出来るがなんと言ってもその特徴は顔に着いているその鉄仮面だった。顔全体を多い尽くすように装着されているその仮面は右目だけが露出しており、その仮面の外からは綺麗な紫の長髪が垂れていた。仮面のせいで正面からは判別しずらいがどうやら髪型はハーフアップのようだ
「……っ!?」
彼女の不気味なほど青い瞳が私を捕らえた時、私はとてつもない恐怖感と寒気を感じた。何故かはわからないが、彼女は只者ではない気がした
「……こんにちは、クロナ・アクアスさん」
「っ……!私の名前……!?」
謎の少女の仮面の奥から響く声、それは優しさが混じりながらも何処か儚げで憎悪が含まれていた。その声を聞いただけで過去に悲惨な何かがあったと予感させるほどに
「貴女の事は聞いてるわ。レイ君を探してるんですってね」
「……だったら何ですか……!?」
何故だろう、動揺を隠せない私がいる。彼女と話していると怖くて仕方無い。それに彼女からは不思議な感覚を感じていた。なんと言えばわからないが、まるで他人のように気がしないのだ。身近にいた人物のような、そんな感覚が
「大切な人を追う気持ちはわかる。だけど、貴女はまるで見えていない事がある」
「…………っ!?」
「それは、“仲間”の事よ。貴女は“レイ君に会いたい。理屈なんて無い、ただ会いたい!”そんな気持ちばかり強くなって行って、次第に彼らの事を考えなくなっていった」
「……そんな事無いっ!」
「そうかしら?じゃあ貴女はこの冒険を始めてから仲間達の事を考える時間が一切減らなかったと言い切れる?」
悔しいが彼女の言うことは本当だった。私はこの夢の世界に来てからレイ君を探す事で頭がいっぱいで、その次に七星座のエージェントの事で頭の中がぐちゃぐちゃになって、結局大切な彼を求めて、私は何時か誰かに言われた通り何も考えられていなかったのだ
「所詮そんなものよ。もしかしたら、ダーク君とフィオ君も貴女のそんな自分勝手な思想から離れたくて抜けたんじゃないかしら?」
「っ!?」
あえてスルーしていたが彼女は私やレイ君だけでなくダーク君とフィオ君の事も知っていた。だが彼女から感じるこの謎のオーラやその存在感、この威圧感からもはや彼女が何を知っていてもおかしくなど無かった
「予告しておくわ。貴女はいずれ、破滅する」
「…………」
「……でも安心しなさい。その時はまだ訪れない、時はまだ残されている。その時をどう生きるかは、貴女次第よ」
私はこの時、現実を叩きつけられどうすれば良いのか分からなくなっていた