DREAM49【苦渋】
目を開けるとそこにはみんなの姿があった。先程までベネトナシュと戦っていた私だったが、全く敵わずそのまま気絶してしまい、その後は覚えていない
「クロナ!」
「クロナさん!」
恐らくみんなが倒れていた私を助けてくれたのだろう。まああの大きな叫び声を聞けば当然気付くか
「大丈夫か?」
「ディア……うん、ダイジョバ」
ディアの手を取って立ち上がり、周囲を見渡してもやはり彼女はいない。あのとき感じた威圧感や存在感に疑問を覚え、1つ溜め息を着いた
「一体どうしたって言うんだ?」
「うん……実は……」
あのときの恐怖に震えながらも私はベネトナシュと会い、その時にあった事を可能な限り話した。七星座のリーダーと遭遇したと聞いただけでみんなの表情は一瞬にして変わり、全員顔を見合わせた
「……ベネトナシュに……会っただと……!?」
「本当なんですかクロナさん!」
私はゆっくりと頷き、自らの利き腕である傷ついた左腕を見せた。あのときのベネトナシュの攻撃で特にやられたのが利き腕であり、見ているだけで辛くなってくる
「酷い……」
「すぐに手当てしないといけないね!」
そう言ってアディアが回復魔法であるケアルガを掛けようとしたその時、ずっと後ろの方から足音が聞こえた
「お前達か?エージェント達を倒したと言うキーブレード使いどもは?」
響き渡る謎の声のする方に振り向いてみるとそこには二人の男がいた。一人は赤色のドレッドヘアーで如何にも好戦的と言う印象を与える二十代くらいの男で、もう一人は男性であるにも関わらず意外と違和感の無い金髪のロングヘアーを前に出した赤色の髪の男より少し年下の印象の青年だった。ちなみに先程の声は何処か冷静沈着な印象だったので恐らく金髪の青年の物だろう
「誰だ!?」
「あれは……アリオスにミゾール!」
「ほう……俺様達を知ってたんだな?」
アディアが七星座の残り三人の内二人の名前を出すと今度は赤色の髪の男がそう言った。彼の返答により彼らこそがアリオスとミゾールと見て間違いないと証明された
「お前達は我らの計画を悉く邪魔してきた。そのせいで、夢の世界の破壊が遅れてしまっている」
「……何が言いたい?」
「つまり俺様達は、まずはお前らを始末する事を最優先にする事にした。まず邪魔者を潰す、基本中の基本だろ?」
「まぁ、今日は挨拶だけだがな」
アリオスが宣戦布告をするもミゾールが言葉を足し、先程の戦いで瀕死状態の私はある意味命拾いしたと言えるが、それは逆に恐怖の時間が延長されたと言う事になる
「言っておくが次に会う時は容赦しない。覚悟しておけ……」
そう言ってミゾールは先程のベネトナシュ同様闇の回廊を開き、先にアリオスが入っていったのを確認すると自身も入っていった。
――今日は色々な事があった。七星座のエージェントのメンバー四人をやっと倒せたと思ったら聖獣の話を聞いて悩んだり、聖獣に関するヒントが何か掴めるかもしれないと思って訪れたアースでベネトナシュに会い負けたり、ミゾールとアリオスと言う七星座の残りのメンバーに会って宣戦布告されたり、何だか今日は疲れてしまった
それにアースを訪れた理由はそれだけでは無かった。恐らくアディアは察していたのだろうが、エージェント達を倒してしまい罪悪感に刈られた心を癒したかったのだ。自分の故郷の夢を見る事で、せめて偽りの希望でも持てたら良いのかもしれないと思っていた。それはただの気休めかもしれないが、仲間達もわかってくれた。仲間達も同じ気持ちだったのだから。でもその矢先やつらは現れ、私達に宣戦布告をして去っていった。私に大きな心の傷を残して
自分がアースへ行きたいと言ってしまったばかりにみんなにこんなに心配を掛けて、あのときもう一人の自分やベネトナシュの言っていた言葉は本当かもしれない