DREAM52【彼女と自分の差】
「と、言うわけで……」
「?」
たった今歌い終わったばかりのプロメッサがマイクを何処かへ放り投げると先程の口癖抜きで話しかけてきた。ちなみにマイクだがちゃんと空中で消滅してくれたのでどうやらジョブチェンジ中限定で出現する物らしい
「私を仲間にしてください!」
「ええっ!?」
何が“と言うわけ”なのかさっぱりわからないまま私は彼女を仲間にするかどうか選択を迫られた。
「そんな……突然言われても……」
「いや、彼女の実力なら心配ない」
私がプロメッサを仲間にするか躊躇っていると何時もの冷静さを感じさせる低い声でローグが言った
「プロメッサはすでに、外敵を約9000体を数秒で倒している」
「嘘っ!?」
「そうには見えないかもしれないけど、本当なのよ」
「恐らく、聖獣を使ったんだろうな」
あまりにも話が早く進みすぎて忘れかけていたがプロメッサは聖獣が使えるらしい。恐らくその事も外敵との戦闘で判明したのだろう、その実績を聞いて考えを改めているとディアが何かに気がついた
「……帰ってきたか」
「え?」
振り返るとそこにはなんとあのフィオ君がいた。ディアは非常に落ち着いていたが他のメンバーは当然驚きを隠せず、会ったばかりのプロメッサは流石に無反応である
「フィオ君……?」
「……クロナちゃん……その、急に逃げたりしてごめん。もう逃げたりしないから、だから……」
フィオ君が何かを言おうとした時、私は黙ってその手を差し伸べた
「お帰り、フィオ君!」
今は何も言わなくて良い、ただ帰ってきてくれた事が嬉しいのだ。フィオ君は笑顔でその手を取り言った
「ただいま、みんな!」
フィオ君の帰還によりメンバーは再び五人となり、前線で戦えるのはその内四人となった。フィオ君の帰還を喜んでいるとプロメッサが彼を見て少し驚いた表情をした。それでも笑っていたが
「君……凄いねー。覚醒してるよ」
「覚醒?」
「あぁ、もしかしてこれの事?」
そう言うとフィオ君の背後から突然たくさんの腕を持つ銃使いのようなモンスターが現れたが、すぐに消滅した。それを見た誰もがその瞬間正体を把握し、その名を呟いた
「聖獣……!」
「君、何で僕がこれを持ってるってわかったの?その……聖獣だっけ?」
「同じ聖獣使いだからねー、気配でわかるの」
プロメッサがそう不思議な事を言うと両手に再び先程の双剣を出現させ、再び満面の笑顔となった
「この際だから聖獣を使った戦いについて説明しておくねー!」
戦う気満々のプロメッサの発言にフィオ君は咄嗟にアローガンを構え、とりあえず私は間近で見たい気持ちとフィオ君のサポートと言う事でキーブレードを片手に前に出た
「まず私から聖獣を呼び出すねー!」
そう言ってプロメッサは身体全体からオーラのような力を放出し、やがてそれは少しずつ形を形成していき1つの存在となった
「おいで、プロメシア!」
やがて現れたのはプロメッサのような色の髪型と黄色の長いマフラーを巻いた若い女性のような聖獣――プロメシアだった。若き戦う女性と言う勇ましい風貌ではあるが何処か儚さを感じさせ、胸の辺りにバスケットボール並の大きさの穴が空いているのが不思議だった
「OKー!まずはクロナが私を攻撃してみてー!」
「う、うん。はぁーーっ!」
彼女に言われるままキーブレードをレイピアの如く操りまるで千本の刃を相手に降らせるかのように連続攻撃する技“サウザンドレイピア”でプロメッサを攻撃するが、それら全て片方の剣のみで受け止められた
「なっ!」
「聖獣を発動している人は能力が爆発的に上がって、こんな感じに必殺技とかもいなせるの。じゃあ君も聖獣を出してみてー!」
聖獣を発動中のプロメッサにはサウザンドレイピアは敵わず、次にフィオ君が先程の聖獣――シュラを出した。同じ場所に聖獣が二体いるとなるとそれはかなりの大迫力で、怪獣映画の現場にいるような感覚だった。
「聖獣は能力を上げるだけじゃなく、コントロールも出来るの。聖獣の動きは使用者の意思によって決まる。君が攻撃しろって思ったらそうするし、守れと思ったら守備の体制に入るのー」
「それなら、早速行くよシュラ!」
プロメッサの説明で大体聖獣のイロハを理解出来たフィオ君は早速心の中でシュラに指示を出し、聖獣は各腕に握られている銃を放ちプロメッサの聖獣プロメシアを攻撃した
「プロメシア!」
しかし聖獣ルーキーにも容赦なくプロメシアはそれを軽々と避け、その女性にしては大きな拳でシュラを殴り倒した
「うわぁっ!」
そして何故かフィオ君も吹っ飛ばされ、シュラの消滅と共にフィオ君もまた倒れた
「ちなみにこのように聖獣のダメージは使用者にも共有するから注意してねー」
そう言うとプロメッサも自身の聖獣を消滅させ、両手の双剣も何処かへと消し去った。両手にあった物が一瞬で消えた事を考えると私達のキーブレードとほぼ同じような性能なのだろうか
「どうー?聖獣を使った感想は?」
若干欠伸をしながらプロメッサがそう聞くとフィオ君はなんとか立ち上がった。どうやらあの一撃はフィオ君にとってはあまりダメージでは無いらしく、プロメッサも全然疲れを見せていないので恐らく今のは実力の半分以下の威力だろう。その割には地面に大きなクレーターが出来ていたが。その辺りからも彼女の強さが伺えるが私はその彼女の強さを見て、自分の無力さを噛み締めた
「……っ!」
そして自分でもわからない内に何処かへ逃げ出してしまった。
「「クロナ!」」
「クロナさん!?」
「クロナちゃん!」
みんなが名前を呼ぶ頃には私はみんなの視界から消えており、全員何故走り去ってしまったのか分かっていないが戸惑っていた。だがそんな中、プロメッサだけは私の行方を見逃してはいなかった