DREAM57【その気持ち】
アディアがクロと話しているのと同時期、真夜中のレイディアントガーデンの中心にあるジョブゲート付近でディアは一人ある人物を待っていた。この時間帯は町人達も寝静まっている頃なので彼の姿を認識する者はいないが、ディアはそんな町人の眠りさえも妨げるほど大きな溜め息を吐いた
「……何故、こんなにも気になる?」
ディアは昼間の特訓以来ずっと考えていた。何故自分が嫌っているはずの闇の存在である鈴神さんの事がこんなにも気になるのか、彼女が本心から自分達に手を貸してくれている事はわかったが何故自分はそれに心を開いてあげられないのかが理解出来ずにいるのだ
暫く一人悩んでいると突然遠方から雷魔法であるサンダガが降り注いだがディアはそれを咄嗟にキーブレードを出して防いだ。もっとも、触れただけで簡単に消えてしまった為威力は相当弱かったようだが
「お前か……」
サンダガを飛ばしたのはプロメッサだった。昼間あれほどの強さを見せつけた彼女からあのような威力の雷が放たれた事を考えるとかなり手加減した威力なのだろう
「夜は電撃で挨拶するのが流行りなのか?」
「そんなことないよー?ただ一人でどうしたのかなって思ってねー」
ディアがそう冗談混じりに言うとプロメッサは優しく微笑んだ。この時ディアも私と同じ思想を抱いており、彼女からカイリさんの姿を連想出来ていた
「何か悩んでるようだったけど、どしたのー?」
「お前には関係無いだろ?」
「ほほーう……さては恋ですなー?」
「なっ!そんなんじゃない!!何故戦いの真っ只中に俺がそんなことしなくちゃならんのだ!!」
「だって顔赤いもーん!すぐわかったー」
確かにプロメッサに鈴神さんとの恋愛疑惑を掛けられた時やそれ以前のディアの顔は赤かった。それを見ていたのか彼女は彼の抱いている気持ちが恋愛思想だとあっさり見抜き、さらに話を続けた
「認めずに否定するって……ディアさんって意外とツンデレー?」
「な、何だとっ!?」
プロメッサの発言にディアがシュール過ぎるほどに顔を赤くしながら動揺した。ちなみに彼女が言ったツンデレとは初期の頃や普段こそ厳しめの態度で当たる所謂ツンの側面が現れるが、特定の相手に対して態度が優しくなるなど所謂デレの側面が出る性格の事を言う。ディアは鈴神さんの前では厳しめの態度を取っているが裏では認めている辺りプロメッサの発言は正論であり否めなかった
「ディアさん、試しに私とバトルしてみないー?リラックスも予てさ」
そう言ってプロッサはそれぞれ色の異なる二刀流を構え、ディアは呆れながらも小さく微笑むと自身も先程サンダガを防ぐ為に出していたキーブレードを構えた
「やれやれ……しょうがないな」
その言葉が放たれて数秒後に二人はすぐにお互いの標的目掛けて走り出し、高速で武器を振るい始めた。だがキーブレード1つと二刀流とではやはりスピードの違いがあり、ディアはプロメッサの攻撃を防ぐので精一杯である。しかし連続攻撃の中にディアは僅かな隙を見つけ活路を見出し、プロメッサの剣を1つ弾き飛ばした
「へぇやるねー、けど1本でも強いよ!」
彼女の言う通りだった。剣が1つになった途端プロメッサのパワーとスピードが格段に上昇し、逆にキーブレードを弾き返した。二刀流は確かに強力だがそれ故にコントロールが難しくスピードはあれどパワーが一点に集中出来ず低威力になるケースもある。しかし剣が1つになると一点に力を集中しやすくなる為にパワーが増し、挙げ句プロメッサが先程までとは訳が違うスピードを発揮して攻めてきたので二刀流の時のスピードは恐らく手加減だったのだろう。そう考えると二刀流時のパワーも少々怪しい
「この辺にしとこっか」
そう言ってプロメッサは武器をキーブレードの如く消滅させ、ディアもまた弾き飛ばされたキーブレードを拾った
「どう?気は済んだ?」
「え?」
「恋愛って大変だよねー。悩む事も色々あると思うけど、そんなときは想いを剣に込めてみるの。するとね……自分の気持ちが見直せる気がするの。何てーの?その……思いっきり剣を振るうことでスカッとするしねー」
「うん……分かる気がする」
「なら、もう掴めたよねー?でもまだ素直になれないなら考えれば良い。まだ時間はある、すぐじゃなくて良いから想いを伝えるの」
「……あぁ、ありがとう」
記憶を失っていながらも自分達を助けてくれるプロメッサに自身の悩みを打ち明け、この日はディアにとって忘れられない日となった