DREAM59【闇の世界】
ゲートを潜った先には衝撃的な光景が広がっていた。何処もかしこも見渡す限り黒でそれ以外の色が全く見受けられず、所々に差す水色混じりの白い光がこの空間の不気味さをさらに上昇させていた。私も直接来るのは――夢の世界なので厳密には違うが――初めてだが、ここが以前レイ君が迷い込んだと言う闇の世界。
ちなみに事前にアディアから聞いた情報だが、ここはハートレスの代わりにドリームイーターが出てくる事や夢の存在なので普通に脱出出来る事を除けば現実の闇の世界とあまり変わらないらしい。だがそれでも七星座は私達を潰す気でいるため選りすぐりのドリームイーターがウヨウヨしているはずなので、敵が強い事は確かである
「ここが、闇の世界……」
「それじゃあ行こう。プロメッサとフィオは何時でも戦えるようにしておいて」
アディアの呼び掛けの元、私達は二人を前衛にして歩き出した。先程の七星座の件やこれから戦いが激しくなる事を考えるとやはり聖獣を使えるメンバーが重要になってくるのだ。現時点ではプロメッサとフィオ君の二人しかいない為彼女らを中心に戦っていくことで、確実に安定性を保てるように戦おうと言う寸法だ
しかしどれだけ歩いても全く進んでいる気配が無かった。いや、一応歩いているのだがとても長くしかも殆ど同じ一本道を歩いている為、まず初見ではこれを進んだと認識出来ないだろう。まるでエスカレーターを逆に進んでいるような、そんな感覚に襲われる。そんな私達の進む方向とは逆回転するエスカレーターのような感覚と対峙しながら進んでいると、周囲に何かが現れた
――名をバレットガゴイルと言う。大型ドリームイーターの一体で空を自在に飛び、その巨大なアームから放たれる攻撃はどれも重くまるで大量に鋼を敷き詰めたハンマーのようだ。そんな大型ドリームイーター四体が私達を取り囲んでいた
「こんなやつら……この世界にいなかったはずじゃ!?」
「って事は、七星座の刺客ですね……皆さん気を付けてください!」
アディアの情報に無いドリームイーターであればその時点でやつらの刺客だと判明するがどうしても解決出来ないのがやはりその強さである。七星座は自分達の計画の邪魔をする私達を本気で潰しに来ている、なのでこのバレットガゴイル達が常識外れな能力を持っていてもおかしくはないのだ。いくら今回マスターアクアを狙っていると言えど流石にこのような手は打ってくると予想していた為あまり驚きはしなかったが、その実力は恐らく強大なので警戒しなくてはならない
「行くよー!プロメシア!」
身体の大きなバレットガゴイルに対して早速プロメッサは聖獣で対抗し、その高速の連続ジャブによりボクシング選手さながらに一体をあっという間に打ち落としてしまった。しかも聖獣を召喚した当の本人はその間に別のバレットガゴイルを攻めていた
「流石プロメッサちゃん、強いね!」
そう言ってフィオ君もまた自身の聖獣であるシュラを召喚し、無数の腕に持つ銃から放たれる弾丸によりバレットガゴイルの内一体に翼の機能を無くすほどのダメージを与えた。しかし完全に倒す事は出来ず、元々の使用者の実力も反映されている為プロメッサよりも劣り、その上フィオ君は聖獣のコントロールだけで精一杯となっていた
「さて、そろそろ俺達も行くぞ!」
「了解!」
ディアの号令でついに聖獣未所持の三人も動き出し、一人で敵を倒せているプロメッサは安心出来ると思ったのでまだ聖獣のコントロールが不充分なフィオ君に加勢する事にした。そこから少し離れた場所ではいつも通り鈴神さんがバレットガゴイル達の情報を解析している
まずディアがこれまでに戦いの為仕方なく解禁していたはずの闇の力を使わず通常の攻撃でバレットガゴイルに斬りかかったがそれは軽く弾き返された。しかしそれはバレットガゴイルの気を引くための囮であり、ガゴイルが気づいた時には背後に準備万端のアディアがいた
「行くよ……ドリームラビット!」
アディアは天高く武器を放り投げた。通常はこのままだと全く意味の無い行為だがその予想を覆すようにそれはまるで兎の如く空中を蹴り、ピョンピョンと跳ねてはその勢いでバレットガゴイルを貫いた。そしてその隙にフィオがシュラを操り、見事にもう一体のバレットガゴイルを倒す事が出来た。ちなみに他のドリームイーターは全てプロメッサが倒したらしく、私達が強力して倒したのはたった一体なのでかなりの差があり彼女の強さを改めて思い知らされた