DREAM60【恋路】
バレットガゴイル達を倒してから数十分が過ぎた頃、私達は再び闇の世界の長い道のりと対峙していた。もう逆に進んでいるエスカレーターと言うレベルではなく寧ろ何処までも広がり続ける砂漠を歩き続けているかのように長く辛い。幾らか明かりのような物が見えたがそれら全ては例えるならばそう、蜃気楼
「……これで何度目?」
「もうかれこれ13回かなー?」
流石に長く険しい道を歩き続けてスタミナが切れたのかフィオ君が立ち止まりこれまでに見た蜃気楼と言える明かりの件についてぼやくとプロメッサがあっさりと答え項垂れた
「言わないでよ……辛くなるじゃないか……」
まるで現実を叩き付けられたかのようなショックを受けしゃがみつつ地面をつつくフィオ君を他所に鈴神さんがその合間を使ってこの世界のマップをライブラを使って調べていた。その証拠に目が金色に光っており、空中に半透明の彼女のみが触れられるディスプレイが浮遊している
「なるほど……この世界は相当広いですね」
「まぁ、現実世界の人達が見る夢でのこの場所は未知の世界だから、漠然としてるんだろうね」
アディアの言う通りこの夢の世界にあるワールドの大半は人々の夢から形成されている。それ以外の物で作られているならじゃあ何なんだと言う事になるがそれが当たり前であり、厄介事でもある。何故ならワンダーランドやオリンポスコロシアムなどのこれまでのワールドはそこの住人が夢を見れば現実世界の物がほぼ100%再現される。しかし闇の世界は何処の世界の住人も全く知らない未知の世界、故に漠然としている。その為私達は“人々の想像から生まれた闇の世界”を進んでいる事になるのだ
「鈴神さん、マップは調べれそう?」
「少し待ってくださいね、クロナさん」
そう言って鈴神さんは集中モードに入り、明らかに人が出せるはずの無いスピードで浮遊する半透明のキーボードを出現させては人間離れした速度でそれを打ち始めた。もはや指の動きが凄すぎて見えないのに対し、本人は真顔である。そんな光速とも言える速度で打ち続けた結果一瞬でディスプレイに闇の世界のマップが浮かび上がり、鈴神さんの瞳が茶色に戻った
「ふぅ……マップが分かりました!こっちです!」
この世界の地形を把握した鈴神さんが先行し、その後をメンバー達が追いかけていくがただ一人ディアだけがその場に棒立ちしている事に気がついた。どうやら先程の話もまるで耳に入っていないようで、何かを悩んでいるようだった
「ディア?行くよ?」
「……ん?あ、あぁ……そうだな」
「どうしたの?」
先に行っている仲間達を確認しながらディアの様子がおかしい事を察すると彼は私に自身の想いを打ち明けてくれた
「俺……鈴神を見てるとよくわからない気持ちになるんだ。プロメッサにも話して相談に乗ってもらったけど……それでも答えは出なかった」
「“出なかった”って事は……今は?」
「あぁ、何となく掴めてる」
ディアの悩みは前から何となく察してはいたがまさか鈴神さんの事だとは思わなかった。私としては以前みたく闇の力を使わない為に足手まとい、実力不足の事に関して悩んでいる物だと思っていたが、今思い返して見れば確かにディアは鈴神さんを見ている時何時もと表情が違っていた。まるで喜びと怒りの境目のような、そんな感情。私はディアの抱えている想いを聞いて、自分の持つ想いと似ていると思った
「ダイジョバ」
「……え?」
「レイ君の……言葉だよ」
だから今はそれだけ言って後は彼を信じる事にした。今は黙って彼の恋路を応援しつつもこの戦いに専念し、私も私の想いを早くレイ君に伝える為にも頑張ろうと決意を固めた