DREAM62【ブラックソード】
「あれは……あのときの!」
「知ってるのアクアさん?」
「えぇ。あれはこの世界に巣くう魔物の中でも最も強大な強さを持ち……何より、私が過去に倒したはずの存在……」
「まさか、復活した!?」
だが赤い目の魔物からはアディアの言うような復活した後は見られない。恐らく今目の前にいる固体は七星座が産み出したコピーか、もしくは同じ種族の仲間か。その二つのどちらかだ
「さて、俺様は高見の見物でもしてるぜ」
「あっ!」
赤い目の魔物に戦闘を任せる事にしたアリオスは何処かへ消えてしまい、彼を追おうとした隙に赤い目の魔物がアクアさんへとその矛先を向けた
「しまった!マスターアクア、逃げて!」
「くっ!」
アディアの叫びも空しく赤い目の魔物のかき爪がアクアさんへと降り下ろされるが、間一髪その下からキーブレードを突き上げ、弾き返したディアの姿がそこにあった
「ナイスディア!」
「フッ、当然だ」
「何か、吹っ切れた?」
「うるさいぞフィオ、戦いに集中しろ!」
冷たく当たっているように見えるがフィオ君の言う通り今のディアは何処かスッキリしたような表情だった。先程告げられた悩みを捨て、心の蟠りが消えたのだろうか
「行くぞ……ダークフェザーレイド!」
もはやお馴染みとなったディアの黒き翼が剣となり、飛んでいく勢いのまま赤い目の魔物を切り裂いた。しかしあちらも闇の存在である為か大したダメージは与えられず、ディアは再び攻撃を開始した
「ダークファイガ!」
キーブレードの矛先を敵に向け、そこから闇色の炎を弾丸として飛ばす魔法“ダークファイガ”は見事に命中したがまたも闇属性同士であるため闇の炎による攻撃は敵のダメージと共に相殺となり、それを見かねたディアが私にこう言った
「クロナ、少しの間だけでいい。出来るだけやつの気を引いてくれ!俺に考えがある!」
「ディア……」
彼の考えが何なのかはわからない、だが少なくともディアの表情に偽りは無かった
「分かった、やってみるよ!」
そう言って私は駆け出し、利き手である左手にキーブレードを構え赤い目の魔物の前に立ちはだかった
「みんな、出来るだけこいつをディアに攻撃させないようにして!」
「「「「了解!」」」」
先程の考えがあると言う発言を聞き取っていたのか赤い目の魔物はアクアさんを倒すと言う本来の目的を投げ出してディアに向かって突進しようとするが、それは二体の聖獣によって阻まれた
「ここは通さないよー!」
「お前の相手は僕達だ!」
フィオ君とプロメッサの二人の聖獣使いの妨害により赤い目の魔物は急停止せざるを得ず、その隙に背後から私は攻撃を開始した
「はぁーーっ!」
キーブレードをレイピアのように何度も前方に突き出し、まるで千本もの刃があるように見えるほど高速攻撃を繰り出す技“サウザンドレイピア”で背中を攻めていくがやはり大したダメージは見受けられず、すぐに足で跳ね返されてしまった
「ぐっ!」
「癒しよ!」
だが傷ついた私にアクアさんが駆けつけ、回復魔法“ケアルガ”をかけて回復してくれた。その間にアディアが前足を攻めており、赤い目の魔物の真正面では二体の聖獣とその使い手が応戦していた
「ありがとうアクアさん」
「えぇ。私はみんなをサポートするから安心して攻めて!」
「はい!」
体勢を立て直してすぐに前線に戻り、アディアとは逆の前足を狙い始めた。だが赤い目の魔物は一行に平然としており、このままではらちが明かない。だがその時、やっと彼の声が聞こえた
「みんな、待たせたな!」
その声と共に走ってきたのは何処か違う雰囲気を帯びたディアだった。キーブレードを握っている手には紫色のオーラを纏っており、その瞳は闘志で満ち溢れていた
「今ならやれる……今なら言える。光の存在にだって闇はある……だから無理に捨てる必要は無いと。それを、お前が教えてくれたんだ……鈴神」
「えっ?」
「そしてこれが、俺の想いの結晶!!」
その叫びと共にディアの身体から凄まじい闇の力が溢れ出し、それは彼の背後に騎士の形を作った。そしてそれは白い鎧に身を包んだ黒髪の騎士と言う姿を現し、赤いマントを靡かせディア同様剣を構えた
「ディアが聖獣を!?」
「フッ、まさに外道だな……ブラックソード」
何かを満足したように何時もの口癖を吐きつつ自らの聖獣をそう呼んだ。鈴神さんと過ごす過程でディアはどんな光の存在でも少なからず闇は存在し、元々闇の存在でも僅かな光がある事を知った。だがそれを認めたくはなかった。自身の嫌う闇の存在である鈴神さんがまさにそれだったのだから。だがそんな鈴神さんを見ていくことで闇の心を無理に捨てる必要は無いと実感し、光を目指していながら闇も認めた彼の想いが聖獣ブラックソードとして姿を現した
「ぐっ……何故あんなやつが!?」
「覚悟は良いか……アリオスっ!!」