DREAM63【狭間の答え】
アクアさんを始末する為に現れたアリオスと彼に呼び出された赤い目の魔物に追い詰められ、大ピンチに陥った私達だったが、ディアが何か必勝法を思い付いたようなので彼の言う通り赤い目の魔物の矛先をディアに向けないように時間を稼いだ。するとディアが決意と共に聖獣を覚醒させ、早々に攻撃を仕掛けた
「行くぞ、ブラックソード!」
声は音速、斬撃は光速に駆け抜け赤い目の魔物を切り裂いた。聖獣ブラックソードの剣は魔物の尻尾を切断し、消滅させた。さらに聖獣を召喚したことにより力が増しているのか、ディアが攻撃した部位も切り落とされていた
「嘘だろ……!」
「ディアさん、凄い……」
流石のアリオスも驚きを隠せず、先程まで隠れていた鈴神さんが驚いていながらも戦線に復帰した
「鈴神、見てろ」
そう言ってディアはキーブレードの矛先を天井に向け、先端より邪悪な闇の球体を出現させた。そこからは強大なエネルギーが溢れ出ており、軽くトラウマになりそうなほど不気味である
「ブラックソード!」
その球体に闇を認めつつも光を目指す狭間の騎士ブラックソードが輝きの力を纏った剣で光の力を吹き込み、聖獣とその使い手が同時に切り裂くことでそれは赤い目の魔物に向かってエネルギー弾となって放出された
「マイ・ソウル!」
ディアが聖獣を得たことで習得した新しい技“マイ・ソウル”は見事に赤い目の魔物に直撃し、かなりのダメージを与えた上に疲労状態に陥らせた
「今がチャンスだ。総攻撃で決めるぞ!」
「うん!みんな行くよ、せーのっ!」
リーダーとして私がみんなの息を合わせるように指揮を取り、アクアさんを含み鈴神さんを除く全員が一斉に魔物への攻撃を開始した
「これで最後だ!」
ディアの言葉通り赤い目の魔物は消滅し、後には何も残らなかった。
「フッ、まさに外道だな」
何時も以上に気持ちよくお馴染みの言葉を勝利の台詞として吐くディアに先程彼に助けられた鈴神さんが駆け寄ってきた
「ディアさん!」
「鈴神……」
鈴神さんの目は潤んでおり、余程ディアの事が心配だったのか泣きながら彼に抱きついた
「馬鹿!何故あんな無茶を!あのとき聖獣が出なかったら、貴方は今頃……!」
口では何と言おうとどれだけ彼を叩こうと鈴神さんがディアを心配している事には変わりなかった。鈴神さんも鈴神さんなりに自分の事を嫌っているディアの事を気にかけていたのだろう。どうすれば和解出来るのかなども考えていたはずだ。それに先程助けられ、彼が一斉一代の懸けに出ていたのなら、尚更だ
「……俺は普段、無茶とか懸けとかするようなやつじゃない。そんな俺がどうして今回そんな無駄な事をしてまで戦ったか、分かるか?」
確かに普段のディアは無駄な事をするような性格ではない。そんな彼が取った行動、鈴神さんは分からず首を横に振った。すると彼の腕に抱き締められ、聞こえたのは彼の声
「……お前が、好きだからだ」
その瞬間鈴神さんは顔を赤くしていた。ディアの抱えていた心の靄の答え、それがこれだったのだ。ディアはこれまで光を目指すが為に必然的に過去の自分のような闇を嫌っており、それは鈴神さんも同様だった。しかし共に過ごすことで最初こそ嫌っていたが、後に心が揺らいで行った。闇を嫌う自分と鈴神さんに心が揺さぶられた自分が自分の中に生まれ、どちらが正しいかずっと悩んできた。だが先程聖獣を覚醒させたとき、どちらも正解だと、認められたのだ
「返事、待ってるぞ……」
そう言ってディアは鈴神さんを離し、笑顔で去っていった。アリオスはいつの間にか何処かに消えており、この間にアディアもゲートを作り出してくれていたようなのでディアがそこからレイディアントガーデンに向かうのが見えた。
「アクアさん、行こう」
「えぇ、ありがとう……クロナさん」
アクアさんはそうお礼を言うとゲートに入り先にレイディアントガーデンへと向かっていった。私達も順々と入っていく中で、一人遅れて歩き出した者がいた
「よし、私も行こー!」
しかしその瞬間、プロメッサの脳裏を何かが過った。それは不鮮明だが何処か懐かしい記憶、その場にいなかったはずなのに浮かび上がる光景
『ねぇ、昨日私の事見てたよね?』
『私も君の事見てたよ!今までずっと!』
『うん、君転校してから誰にも馴染めて無かったようだし、私が友達になろうか?私は……』
その瞬間、彼女の脳裏に鈍いノイズが響いた
『私は……プロメッサ!』