DREAM69【ν】
気がつくと私はまたいつかのように夢を見ていた。そこに見える景色は相変わらず不思議で、夢の世界で夢を見ていると言う事は現れる人物は一人しかいない
「今晩は、元気にしてた?」
この謎の空間にのみ現れるもう一人の私だった。以前彼女はもう一人の私を自称し、精神的に追い詰めてきた全てが謎に包まれた存在である
「えぇ、お陰様でね」
そう皮肉を込めて言うと彼女はクスクスと笑いながら言った
「その様子だと、答えを見つけたみたいね」
彼女の意味あり気な表情を見て頷くと、もう一人の私は手を後ろに回した
「一人ではなく、仲間と共に大切な人を探すと……そう決めた。違う?」
「ううん、その通りよ」
もう彼女の言葉を否定はしない。その通りと頷くと彼女は表情を変えずに言った
「なら分かるよね?貴女が今大切にするべき物は、何?」
この質問は前の私なら間違いなく答えは一つだっただろう。しかし今の私には彼以外の大切な物が出来てしまい、戸惑ったがこう答える事にした
「“仲間”」
そう答えると彼女は笑顔で深く頷き、満面の笑みを浮かべた
「そう、“仲間”。かけがえのない人達とそれぞれの求めるものを探す事、それが貴女と仲間達の望み。そしてその望みは、“彼”を見つける事に繋がる」
全て彼女の言う通りだった。今みんなの望みはレイ君を見つけ出す事。そんなみんなを大切に想うことで、何時か彼に繋がる光となる
「……私の名前は、ν(ヴイ)」
「ν……」
何を思ったのかもう一人の私を自称する少女は自分の事を“ν”と名乗り、最初に会った時からは想像もつかないほど優しい表情を浮かべた
「さて、今の貴女の状態だけど……あの男の子みたいな女の子に担がれてレイディアントガーデンに向かってるよ」
νの言葉からその少女がアディアである事がすぐに分かった。そう言えばあのとき謎の力を発動させた弾みで私は気絶し、いつの間にかこのような夢を見ていたのである
「王様は!?」
「王様なら大丈夫。全ての敵が消えたことで、城の修復に当たったよ」
それを聞いてホッとすると胸を撫で下ろした。どうやらνは敵意は無いらしく、初対面の時と染まって謎に満ちた存在だ
「ねぇν、貴女は一体何者なの?何故私の姿を……」
「それは……」
νが何か言おうとしたその時、突如この空間が歪み始めた。それに気づいたνの身体が少しずつ消え始め、彼女は消える前にこう言い残した
「また来るよ」
その言葉と共にνの姿は完全に見えなくなった。相変わらず謎だらけな存在ではあるが、νとの間に仄かな絆を感じた