DREAM73【すでに貰われてる】
新たな頼もしい仲間であるクロさんが加わり共に戦う決心をした矢先、やはりやつが現れた
アリオスだ。彼は七星座の一人であり、エージェント達とは違いベネトナシュに忠誠を誓っている為作戦はほぼ迷いなしで実行する
今回はクロさんに情報を聞くだけだったが、予想はしていた物のやはり戦いは避けては通れなかった
「……やっぱり来たのね」
「へっ、俺様の刺客を二匹も倒されちゃあ……流石に黙ってないぜ」
二匹の刺客――恐らく闇の世界に現れた赤い目の魔物とディズニーキャッスルに現れたスペルカンの事を言っているのだろう。アリオスはあの二匹との戦いでどちらもやられた事に相当頭に来ているようだ
「そして今回こそお前らをこいつで……」
アリオスの指示で電撃を帯びたカマキリのドリームイーターが姿を現したが、瞬時に何処からともなく現れたハンサムペガサスの集団に囲まれた
「何だ!?」
「アリオス、もう刺客はキャンセルさ!」
ハンサムペガサス団と共に前に出たのはアディアだった。一回目のドゥーハ戦で彼女のドリームイーターは全滅したと思われたが、その答えが直接本人の口から語られた
「貴様、確かドゥーハの時に!」
「悪いね、僕のドリームイーターはあれだけでは無いのさ。そして、これが本当に全部」
本当に全部だと言うアリオスのドリームイーターを取り囲むハンサムペガサスはざっと見ても六十体はおり、アリオスのドリームイーターは完全に身動きが取れない状況になっていた
恐らくアディアがこの事を今まで黙っていたのは下手に話して敵に気づかれないようにするためだろう。やつらは何処から情報を流出するかも分からず、最悪の場合対策を練られてしまう。敵を騙すにはまず味方からとも言う為かアディアは自身のドリームイーターが完全にいなくなったふりをしていた。その証拠に、ドゥーハ戦でドリームイーターがやられてからここまで彼女は一度もドリームイーターを使っていない
「さぁ、どうする?それともまだ策があるのかい?」
「……へっ、何……刺客を使わなくたって、俺自身がやれば良いだけの事!」
今のも含めて三回も自身の刺客を退けられ、頭に来たアリオスは両手に炎の魔法“ファイア”を纏った
「と言う事は……」
「自ら出る!」
これまで何度も刺客をぶつけ続けてきたアリオスとやっと直接対決となり、これで彼を倒せば七星座は後二人。そしてミゾールを倒せば残りはリーダーであるベネトナシュ一人となる。
「みんな」
仲間達全員の顔を順に見て、リーダーとして一言言い放った
「私達は、負けない!」
「ったりめーだろ!」
「僕、全力でクロナちゃんのサポートするからね!」
「当然だ。俺を誰だと思ってる?お前達の仲間のディアだぞ?」
「そうだね、今戦ってくれてるドリームイーター達の為にも頑張ろう!」
「ここまで来たら、やるしか無いわよね」
「ここで負けたら、記憶も何も無い……!」
ダーク君やフィオ君、ディアとアディア、クロさんとプロメッサも戦う意思を強め、鈴神さんが何時も通り分析の体勢に入った
「皆さん、準備を。アリオスが来ます!」
全員咄嗟に武器を構え、アリオスの燃えている拳を見た。どうやら彼は炎を纏った素手でまるでボクシングでもするかのように戦う戦闘スタイルのようで、その風貌や構えからすぐにそれが読み取れた
「俺に勝つ気か?止めておけ、お前確か氷属性だったろ?」
アリオスの指摘する通り、確かに私は氷属性主体だ。その為炎属性のアリオスには相性が悪い、でもだからと言って戦線から逃げ出すつもりは無い
「バカにしないで。氷が溶けたら何になると思ってるの?」
だから逃げずにあえてアリオスを煽るように調子良く言った。それに腹を立てたアリオスが、一度地面を蹴ってから口を開いた
「水だ。だが蒸発すれば水も意味無かろうに!」
「だったら私はそれすら越える冷気を出してやるわよ!」
「なら俺は太陽クラスの熱気を出してやらぁ!!」
「言ったわね!?だったら私は北極×南極×100ほどの冷気で勝負してやるわ!」
「だったら俺は太陽×1000の熱気で燃やしてやんよ!!」
まるで夏と冬の対決のように繰り広げられる私とアリオスの口喧嘩はどんどん発展していき、いつの間にかあり得ない所まで話が行っていた
「……子供の喧嘩かよ」
「まさに外道だな……」
それを見ていたダーク君とディアがごもっともな感想を述べた
「へっ、中々気が強いじゃんかよ。気に入った、何なら俺の物にしてやっても良いんだぜ?」
「嬉しくもないけど、貴方は残念ね」
そう笑顔で言ってやるとこの場で堂々とある事を発言した
「私、すでに貰われてる身だからね」
誰とは言わない。だがこう言った事情があるために私は誰のものにもならない、彼のパートナーでありそれ以上でもそれ以下でもない
「おもしれぇ……ますます気に入った!」
アリオスはそう言うと拳の炎を強め、戦う前に衝撃的な事を言った
「ならこうしようぜ。俺が勝ったら、お前を貰う」
「こいつ……どうやらクロナに惚れたようだな」
先程の言動から察していると思うがディアの言う通りアリオスは間違いなく“好意”としてこの懸けを持ち掛けている。彼は今までの敵とは違う、だから私には勝つ可能性は無いかもしれない。聖獣も使えない上に相性も不利だが、迷いは無かった
「……良いわ。なら私が勝ったら、七星座の情報を提供しなさい」
右手に冷気を、左手にキーブレードを構え、何時でも戦闘に入れる状態になった
「良いわね?」
「……良いだろう、乗ってやる」