DREAM75【真の目的】
アリオスを倒した私達の前に現れたのは、同じ七星座でありNo.2のミゾールだった。
「お前達、中々やるじゃないか。特に、お前はな」
ミゾールは“お前達”とは言いつつも明らかに私の方を見ていた。しかしその視線はアリオスの物とは何処か違い、まるで懐かしい物を見るかのようだ
「さて、いまアリオスは倒れていて話せる状況に無い。なので代わりに俺が情報を提供しよう」
そう言えばアリオスと戦う前に一つ懸けをしていた事をたった今思い出した。私達が勝てば七星座の情報を提供すると言う条件であり、肝心のアリオスが倒れた為それは出来ないかと思われたが意外にもミゾールは律儀だった
「ではお聞きします。貴方達七星座の真の目的は、何ですか?」
鈴神さんが冷静にそう聞くと、ミゾールは軽く鼻で笑った
「ふぅん、そんなことか。なるほど、あの程度の情報では真の目的の存在は暗示されてしまうか」
私達のこれまでの行動を悟るようにして言うと、ミゾールはその質問に答えてくれた
「我らの目的はこの夢の世界全てを破壊する事。それは聞いているな?」
「えぇ」
「しかし、それだけではない。我らのリーダーベネトナシュは、“二つ”の目的で動いている。まず一つ目は、我らの盟主の使命に協力する為だ」
前から七星座にさらに上の存在がいる事に関して疑惑はあったが、やはり存在する事がたった今ミゾールの口から語られた。
「もう一つは、“復讐”だ」
「復讐!?」
「そう、リーダーはどうやら五年前、ある最愛の人物に裏切られたようでな。その人物に裏切られた世界なら滅ぼした方が良いと、ドリームイーター達や七星座を使って破滅を進めていたのだ」
どうやらベネトナシュが五年前の姫君だと言うのは本当のようだ。最愛の人に裏切られ、その心を闇が満たしナイトメア達を従えた。そしてそれ以降様々な夢の世界を滅ぼし、12の世界を残して動きを止めた。しかしこの間は恐らくミゾールやアリオス、そしてエージェントの四人を集めていた物と思われる
「と言う事は、その盟主とやらの命令と自身の望みが被ったから今回の作戦を実行したと?」
「ふぅん……そう言うことだ」
「その盟主って言うのは誰なの……?」
「悪いが答えるのは一つだったはずだぞ」
先程もそうだがミゾールは細かいルールすら守るほど律儀なようで、何処からか槍のように長くも剣のように鋭い武器を取り出した
「さて、悪いが俺は強いぞ。ベネトナシュの元へ行きたくば、俺を倒す事だな」
ミゾールは明らかに戦うつもりのようだが、先程のアリオスとの戦いで疲労が溜まっている上にミゾールの強さは恐らくアリオスよりも上。つまり現時点で勝てる可能性は無い。逃げようにも全く隙が見つからない
「くっ……!」
もう駄目だと諦めかけた時、ディアと鈴神さんが突如前に出てミゾールの行く手を阻むようにして立ちはだかった
「何のつもりだ?」
「クロナ、お前達は逃げろ」
「ここは私達が食い止めます!」
今の私達に勝機が無いのはディア達も承知の上だった。まだ武器を交わしてもいないと言うのにミゾールから伝わってくる威圧感は只者ではない事の証明であり、ディアも足が微かに震えている
「でも……」
「早く行け!本当に逃げられなくなるぞ!」
確かにミゾールならいつナイトメアを出現させてもおかしくはない。悔しいがここは二人に任せて逃げ出した。結果ミゾールと交戦するのはディアと鈴神さんだけになり、勝機は皆無に等しいながらも逃げる私達を庇ってくれた
「まさか勝てない事を分かって仲間を庇うとは、ふぅん……泣かせるやつらだ」
「確かに勝てないな。だが、負けると決まった訳でもない!」
「ディア……鈴神さん……」
アディアのゲートでレイディアントガーデンに戻っていた私達は残った二人の身を案じていた。二人なら大丈夫だとは思うが相手はあの七星座No.2のミゾール、普通なら全員で掛からなければ瞬殺されてしまう
「今は二人を信じよう」
「うん……」
暗い雰囲気ながらも励ましてくれるアディアは重い空気の中で唯一の救いだった。今は二人を信じて、みんなは次の世界へと向かう事を決めた。それにどうやら全員が次に向かう世界を理解しているようだった
「……行こう、ヴァーヴァリアンコロッセオへ」