DREAM76【ヴァーヴァリアンコロッセオ】
ディアと鈴神さんと言う大切な仲間が自らの身を呈してまで私達を逃がし、そして私達はこのヴァーヴァリアンコロッセオへとやって来た。二人の事は気になるが、今は彼らを信じてこの世界にいると言うレイ君らしき人物を探すために歩き出した
ヴァーヴァリアンコロッセオを歩き始めて10分ほどになり、この世界には何処を見ても、何処へ行っても神殿しか無かった。こんなに広い世界なのにどうしてこんなにもたくさんの神殿を建てる必要があるのか理解出来ないが、少なくとも意味もなく作られている訳では無さそうだ
道中神殿以外にも様々な物が見受けられ、地面に沈んだビルや古びた砲台など、古い古代都市を思わせる物ばかりあった。もしここに鈴神さんがいたらさぞ懐かしんでいただろう、しかし今はそんなことをしている場合ではない。一刻も早くこの世界にいると言うレイ君を見つけ出し、共に二人を助け出す。今私達に出来るのはそれだけだ
「にしても本当に神殿ばっかだな……賢者でも大量にいんのか?」
「止めてよそう言うの、本当見たいじゃん」
ダーク君とフィオ君が冗談混じりにそんな会話をしていたが、今の私はそれどころでは無かった。この世界に自分の大切な人がいる、それだけで他の事が頭に入らなくなるほどに私は彼の事を想っているのだと実感した
「?」
クロさんが突然背後から謎の気配を感じ、振り向いた時には誰の姿も無かったが足音だけが響いていた
「今のは!」
「どうしました、クロさん?」
「誰かがそこにいたの、追いかけましょう!」
もしかしたら彼かもしれない、そう考えた私は真っ先に先行して謎の足音を全力で追いかけた。私が走るスピードを早めるに連れて足音も段々早く、高く鳴り響く。
「もしかしてそのレイって人に会えば、私の記憶も……?」
自身の失われた記憶と謎の夢に苦悩するプロメッサは今探している彼に会えば何か記憶が戻るのでないかと考え、足を早めた
「プロメッサ、ちょっと!」
その後をアディアが追いかけ、謎の人物も焦り始めたのか足音が段々慌ただしくなってきた
「そこよ!」
容赦なくサウザンドレイピアで人が一人隠れられるほどの大きさの岩を破壊し、その影にはやはり人がいた。しかし、その人物を見た瞬間涙が流れた
「っ!!」
女々しい顔つき、茶色の翼のような部分が特徴の髪型、純粋すぎるほど輝いた青い瞳、それはまるで彼のようだった
「……レイ……君……?」
溢れる涙は止まらず、やっと見つけた彼の姿を視界に捕らえると、すぐに彼に向かって飛び付いた
「レイ君!」
抱き締めて分かる、これは紛れもなくレイ君だと。しかしレイ君は何故か私のハグを解いた
「……確かに俺はレイだ。だけど、俺は君の知る俺ではないよ」
「え?」
「君も良く知っているだろう、ここに存在する人間が……どんなものかを」
たった今の彼の一言で思い出した。この夢の世界の住人は現実世界の存在の対、と言う事は今目の前にいるレイ君は、
「そっか……こっちの、レイ君なんだね……」
「……ごめん」
彼は謝ってはいるがやはりショックの方が大きかった。クロさんが聞いたと言う情報、それは夢の世界のレイ君の事だった。そんな当たり前の事を忘れていたなんて、私はなんて愚かなのだろう
でも、私はやはり諦める事なんて出来ない
「……レイ君、少し良いかな?」
「へっ?」
「今日は私に付き合いなさい」
少しずつ顔を近づけつつ笑顔で言うと、レイ君は少し冷や汗をかきながら言った
「いや、俺にはやることが……」
しかし今の私はそれでは止められなかった
「分・か・っ・た・わ・ね!?」
「う……分かったよ」
ごめんね、この世界の私。悪いけど今日一日だけこっちのレイ君を貸してね。そう言うようにして空を見上げ、今日だけ今まで我慢していた物をさらけ出す事にした