DREAM84【クロッシングドリーム】
巨大な闇の回廊のような最後のゲートを潜りたどり着いたのは何処かの浮遊城の入り口だった。足場や建物留まらず岩までも浮いており、今自分達のいる場所のからは雲が見下ろせるほどここは高い位置にあるようだ。下に雲があるために夜空は近く、恐らくこの夢の世界でもっとも宇宙に近いと言う事なのだろう。そしてここの天辺に見える一際大きな舞台こそベネトナシュの居座る玉座と言ってもほぼ間違いは無く、現にただでさえ宇宙に近いこの場所なのに本当に宇宙に届きそうなほど長い背もたれの椅子が存在している。これほどの威厳のある物は大抵ラスボスの証拠である。宇宙に近く雲を越えた場所だと言うのに私達が息を吸えるのはやはりここが夢の世界だからだろう、仮に現実世界なら危うかった所だ
「ここが……七星座の城?」
「見てぇだな」
「ここからは、引き返せないって事だな」
奥にある大きな扉が静かに開き、まるでこちらを誘っているかのようだった。七星座の方も逃げる気は無いようで、私達は中に浮く足場や岩に飛び移りながら移動し、城の内部へと足を踏み入れた
「わぁ!凄い!」
入ってきて早々にフィオ君が驚いたのは恐らく全面ステンドグラスの壁とガラス張りで下の見下ろせる床だろう。これほど幻想的な城は滅多にお目にかかれないだろうが、何故かステンドグラスには色だけで何も描かれてはいなかった
「関心してる所悪いけど、敵よ」
プロメッサの指差す先には案の定ドリームイーターの大群がこちらに迫ってきており、いくらベネトナシュが全ての世界に解き放ったとは言えこの城のドリームイーターは全く減っていなかったようだ
「よし、みんな!行くよ!」
「「「「「「おう!」」」」」」
だが決して恐れず私の号令で私達ことチームレイディアントスターは全員戦闘体勢に入り、ドリームイーター軍に立ち向かった。今回の編成としては私はリーダーなので当然前線におり、ダーク君とフィオ君にアディア、そしてディアと言う初期メンバーで挑む見解だ。ちなみに鈴神さんはいつも通りバックアップ、クロさんとプロメッサは後から着いてきて援護すると言う陣形だ
「行くよ、シュラ!」
「かっ飛ばせ、ガントラ!」
「ブラックソード!」
行く手を阻む敵達は3体の聖獣が倒していき、私はアディアと共に3人をサポートしつつも何時でも聖獣を出せるようにしていた
「これが私の……本当の姿!」
本当の記憶を取り戻して真実の姿となったプロメッサは後ろから迫るドリームイーター達に聖獣メシアライブの斬撃を浴びせ、更には雷までもお見舞いすることで全滅させた。しかし前衛はである私達が応戦していたはずのドリームイーターの一体がプロメッサに迫り、炎の弾丸を発射した
「危ない!」
クロさんが叫んだ時にはもう遅いと誰もが思ったが、炎の弾丸はなんとプロメッサの目の前で消滅した。状況を理解出来ていないドリームイーターが今度は雷の弾丸を放つが、それも消滅するように無効化された
「そうか!プロメシアがメシアライブに進化して炎と雷を無効化出来るようになったんだ!」
聖獣は使用者にその防御耐性を共有させる。つまりメシアライブの炎と雷を無効化すると言う耐性がプロメッサにも共有され、あの2つの攻撃をかき消したと言う事である
「はぁっ!」
彼女の双剣がドリームイーターを斬り裂き、ディア達3人も聖獣を使って襲い来る敵を全滅させたようだ。
それにしても気になるのがプロメッサの事だ。彼女はνに使命を果たす為にこの夢の世界にやって来た、だが彼女だって自身の大切な人に会いたい気持ちくらいあるはずだ。その気持ちを放り出してまでこの夢の世界を守りベネトナシュを止めると言う使命を真っ当しなければならない何かがあるのか。ここへ来たからには相応の覚悟があるのだろうが
それにνはプロメッサにこう言ったのだと言う、“使命を果たすまでは生きられる”と。果たす“までは”と言う事はもしベネトナシュを止めたら、彼女は一体どうなってしまうのだろうか。また記憶を失うだけならまだ良いだろう、しかし最悪の場合プロメッサ――ルミナは今度こそ成仏されてしまう。そうなってしまえばルミナはライガに会う機会を一生失ってしまうが、彼女の瞳に迷いは無かった
「クロナ、行こう」
「……うん」
プロメッサも自身の想いと向き合っている、そして今度は私自身が自分の想いと向き合う時だ。ベネトナシュを倒せば自分も消えると言う試練を乗り越え、みんなを救って見せると決めたから
城の内部を進んでいくにつれて敵の数も強さと共に増加していき、苦戦を強いられたが聖獣やチームワークでなんとか切り抜けて行った
「D-Link、レイ!」
ワンダーランド以来のD-Linkを発動し、レイ君の力を借りてドリームイーターを蹴散らしつつ道を切り開いて行った。中にはバレットガゴイルやスペルカンと言った今まで戦ってきたドリームイーターがいたが今の私達の敵ではなく、ファラフェニックスの放つ冷気のみで倒す事が出来た
レイ君に託された想いやみんなの想いを胸に七星座の城を進んでいくと、以前ベネトナシュの乱入により倒し損ねたミゾールが姿を現した
「ミゾール!」
「ふぅん……まさかここまで来るとはな。正直驚いたぞ。だが、ここは通さない」
「なら、強行突破するまでです!」
鈴神さんの言うとおり立ちはだかるならば強行突破するしかない。ミゾールは以前にタキオンクローと聖獣を倒されている為にそれらを出してこず、自らの武器である大太刀を構え走ってきた
「ここは俺が受け止める!」
ダーク君がすかさず前に出て太刀同士をぶつけた。大太刀と普通の太刀ではやはり力の差が激しく、ダーク君一人ではもう間もなくやられてしまうだろう
「ダーク!僕も!」
しかしその寸前にフィオ君がダークの太刀を操る腕を支え、二人の力で見事ミゾールの攻撃を弾き返した
「サンダガ!」
その隙を突いてクロさんが雷魔法“サンダガ”を放ちミゾールを攻撃した。それにさらに追い討ちをかけるようにアディアがドリームラビットを放ちミゾールの足止めに終止符を打った
「くっ……一時撤退だ……」
そう言ってミゾールは無の中に姿を消し、それに呼応するかのように奥の扉が開いた
「クロナ、アディア、みんな!」
振り向くとそこにはレイディアントガーデンに残ったはずのローグとルプクスがいた。二人ともそれぞれの武器を持っており、ここまで戦いながらやって来たようだ
「二人とも、何でここに?」
「アンセムさんが“みんなの事が心配だから、サポートに行け”って」
「まぁ、俺達も同じ気持ちだったがな」
「二人とも……うん、行こう!」
ローグとルプクスも合流し、新たに10人で七星座の城を進んでいく。その途中幾度も敵に出会したが新たに加入したローグとルプクスが疲れている私達に変わり倒してくれた。
その道中、最上階へ登る為の階段の隣に一つの小さな扉を見つけた。城の内部には他にも扉はあったがこれはそれらよりも一際小さく、精々2メートルと言う所だった
「この部屋は……」
恐る恐る扉を開けると、そこには割れた窓ガラスや倒れたベッドなどと言った残骸が散開している荒れ果てた姿の部屋があった。その部屋の中で唯一全く荒れず乱れていないのが入ってすぐ横にある棚であり、その上にはある一枚の写真が飾られていた
「これって……!」
それはこの世界の私ことベネトナシュの過去の姿こと夢クロナと、夢の世界のレイ君が笑顔で寄り添い合うと言うツーショットだった。その幸せそうな表情を見て、私は思わず涙を流した