DREAM87【破壊神】
「私は負けるわけにはいかない……何があろうと!」
ベネトナシュは不思議な波動をその右手から放ち、いつの間にかその手には5枚のカードが握られていた。よく見るとそれにはそれぞれ仲間達の聖獣が描かれており、その内1枚をベネトナシュはもう片方の手に取った
「“テクスキャプチャー”、これを使って貴女の使った力をコピーさせてもらった」
その言葉通り手に取った1枚が独りでに壊れると同時にガントラが姿を現し、ダーク君が使っていた連携技の構えを取った
「フレアスマッシュ!」
それはガントラの拳共々高速で飛んできた。動きなどは完全に同じだが、ダーク君のそれと違うのはなんと何もない空間の部分を強制的に物質化させてそれを打っていると言う事。その為視眼では確認出来ないが幸い音で感じる事が出来た為、ギリギリの所でキーブレードで防ぐと同時に凍てつかせた
「アルティマヴォルト!」
ガントラが音も無く消滅してすぐ次の1枚からシュラが現れ、ベネトナシュの放った雷とシュラの無数の腕から放たれる雷が合わさり、稲妻の竜巻と言わんばかりの激しい一撃が降り注ぎ直撃すると言う所でファラフェニックスが守ってくれたが聖獣のダメージは私にも共有されるので相応の痛みは当然ある
「ぐっ……まだまだ……!」
「マイ・ソウル!」
もはや言うまでもなくシュラの代わりにブラックソードが現れ、今度はマイ・ソウルを放ってきた。幾ら氷の勇者に覚醒していようと聖獣が傷つき、体力を消費した今の状態ではこの攻撃を避ける事は出来なかった
「きゃあーーっ!!」
圧倒的な攻撃に成す術無く吹っ飛ばされ、立ち上がろうと力を振り絞るも容赦なくベネトナシュの攻撃は続いた
「ロストメモリア!」
肉体的にも精神的にも私を追い詰めるかのようにベネトナシュによりコピーされたメシアライブとベネトナシュの連携により放たれたロストメモリアは今いるバトルフィールドすらも割り、辛うじて着地したときにはマトモな足場は残っていなかった
「クロナ!大丈夫か!?」
本物の聖獣ガントラの背中に乗って先程の攻撃にダーク君達は巻き込まれずに済んだようで、そこには意識を失ったローグとルプクスの姿もあった
「ライブラリーオブ・ユニバース!」
それを確認している隙にベネトナシュが聖獣ダークエンドを召喚し、ライブラの最高形態かつ聖獣無しでは使用出来ない“ライブラリーオブ・ユニバース”を使用しその金色に変化した瞳は確かに私を捕らえた
「たった今、貴女の思い出から様々な記憶を読み取った。つまり、今まで貴女が出会ったどんな人物の技をも使える」
「そんな!」
「まさか、あの一瞬でクロナの記憶に残っている者の技をコピーしたのか!?」
瞳の色が青色に戻ったベネトナシュは静かにキーブレードを構え、殺意を秘めた目を細めた。確実に標的を仕留める為に、力の出し惜しみはしてはくれないようだ
「きっと……ライブラリーオブ・ユニバースと先程のテクスキャプチャーと言う技を、同時に使用したのでしょう。それならすぐに様々な人の技が使えても、おかしくありません」
「ニードルボール」
鈴神さんの予感が的中し、ベネトナシュは何時かのDEDの幹部クラクションが使用していたメタルボールを無より生み出し、瞬時にそれをニードルボールへと変貌させそれをオーバーヘッドストライクで蹴り飛ばした。しかしそれはいつの間にか現れていたシュラの弾丸に弾かれ、事なきを得た
「クロナちゃん、大丈夫!?」
このシュラもガントラ同様本物のようで、ベネトナシュの攻撃から私を守ってくれた。その後も続くベネトナシュの波状攻撃を凌いでいくに連れ、私は彼女の使う技にある疑問を抱いた。そう、自分自身の――クロナの技を一切使用して来ないのである。夢の存在ならば、ましてや記憶を読み取ったのなら私の技の一つや二つ使ってきてもおかしくは無いはずなのに、ベネトナシュは全く放ってこない。まるで自分から使う事を避けているような、何かに怯えた表情でコピーした技を放つベネトナシュは何処か儚さを放っていた
「ファンタジーブルーム!」
今度は私から攻撃を仕掛け、ベネトナシュに確実な一撃を与える。ファンタジーブルームは相手のシールドさえ凍てつかせる技なのでどんな守りも意味を成さず、確実にダメージを喰らってしまうのである
「くっ……青龍!」
続いてベネトナシュにより召喚されたのはミゾールが使っていた聖獣こと青龍だった
「行け、青龍!」
「ファラフェニックス!」
青龍が空中から突進してくるもファラフェニックスがそれを凍らせつつ吹っ飛ばし、その隙に私はベネトナシュに“サウザンドレイピア”を放つが相手もそれを防ぐように応戦してきた為再び鍔迫り合いとなった
「私は壊す、この世界と現実世界を!」
「そんなこと、させない……させる訳にはいかない!!」
今度は鍔迫り合いに勝ち、ベネトナシュに隙が生まれた所で再びサウザンドレイピアを決めた。この一撃はかなり効いているようで、ベネトナシュの表情にも焦りが見えてきた
「何故……私が押されている!?こんなこと、あっちゃいけない!!絶対っ!!」
ベネトナシュの強い復讐心とその執念は再び聖獣ミゼリオンをこの場に呼び戻させ、復活を遂げた聖獣とその宿主はこれまでとは比べ物にならない程の力を手にしていた