DREAM88【究極の絶望VS究極の希望】
「ミゼリオンが……」
「復活しただと!?」
「もう許さない……お前達全員葬り去ってあげるわ!」
ベネトナシュは両腕を高く振り上げ、その中心に赤色の強大なエネルギーを集め始めた。それはただの赤色と言う訳ではなくむしろ血に近い感じであり、その技が彼女の復讐と破壊の結晶である事を示していた
「まずいです皆さん!」
「どうした鈴神!?」
聖獣ダークエンドを出現させて同じくライブラリーオブ・ユニバースを発動させていた鈴神さんは自身の調べた情報を全員に伝えた
「あの技は……この夢の世界に生きる全ての人の憎悪その物です!あれをマトモに喰らえば……クロナさんは持たないかもしれません!!」
「嘘だろ……!?」
今まで私達が倒してきた七星座のメンバー達や全ての夢の世界の住人の憎悪やそれを含む負の感情全てがあのエネルギーの塊と化した球体に集まっており、先程私の記憶を読み取ったからこそ使える技でもあるが数々の絶望を乗り越えてきたベネトナシュだからこその大技と言える
「止める方法は無いのか!?」
ベネトナシュの究極の絶望に打ち勝つ方法があるかは分からないが少なくともこの攻撃を避けきる方法が無いかディアは必死になり、鈴神さんは冷静に答えた
「あるとすれば……究極の絶望の対――“希望”をぶつける事です。けど、今すぐに用意出来る物でもない……!」
あれが人々の絶望の総意だとすればこちらも希望の総意を集めなければならないが、鈴神さんの言う通りすぐに用意出来るような物ではない。避けるにしても球体はどんどん大きくなっていき、ただでさえ不安定になったこのフィールドで避ける事は皆無に等しかった
「そんな……ちっくしょぉ!ここまで来たのに、どうにもなんねぇのかよ!!」
「ベネトナシュを倒す事は難しいって分かってたけど……ここまでなんて……」
ダーク君やフィオ君までもが挫折しそうになり、球体は今もその大きさを増している。例え今ある残り時間全てを使っても集まる希望の数などたかが知れており、その上全ての世界にドリームイーターが大量に徘徊している為希望を持つ住人も限られている現状でどうしようも無いと思われたその時、聞き覚えのある声が聞こえた
『諦めるな!』
何処からか響いたその声の主を探そうと仲間達が周囲を見渡していると、鈴神さんがある一つの物を発見した
「あれを!」
それは空中に浮かんだモニターであり、そこにはレイディアントガーデンに再び急襲してきたドリームイーターに対抗するレンの姿があった
『諦めるな!夢の世界は必ずクロナ達が救ってくれる!それを手助けする為に、ローグ達も行ったんだ!だからみんな、それまで持ちこたえるんだ!俺達は、レイディアントガーデンを守る兵団だ!』
レン率いるレイディアントガーデンの守護兵団がドリームイーターの大群に立ち向かっていく所で映像が変わり、次はオリンポスコロシアムの風景が映った。そこにもやはりドリームイーターが大量出現しており、それにアクアさんが応戦していた
『今この世界の何処かでクロナ達が頑張っているのだとしたら、何もしない訳には行かない!だからヴェン、テラ、私に力を貸して!!』
オリンポスコロシアムをドリームイーター達から守る為にアクアさんもまた立ち向かっていき、次にディズニーキャッスルで敵の大群に応戦する王様の姿が映った
『僕には分かる!きっとあのときの少年少女達も、今何処かで戦っている。だから僕達も出来る限りの事をするんだ!』
様々な世界で出会った仲間達は諦めておらず、やがてそのモニターが消えるとそれは意識を奇跡的に取り戻したローグが発生させた物だと気づいた
「ローグ!大丈夫なのか!?」
「あぁ、まぁな」
ガントラの背中でクロさんがローグを支え、彼女に助けられながらも立ち上がったローグは希望を失いかけていた仲間達にこう言った
「みんな、希望を捨てるな!それじゃあベネトナシュと同じ道を歩むことになるぞ!そうなればここでやつを倒しても、夢の世界を脅かす物は連鎖し、やがては完全に滅びるだけだ!!」
そう、究極の絶望に勝つには究極の希望しかないのだ。今までに出会った数々の仲間達の戦う勇姿を見て仲間達は励まされ、プロメッサは何かを発見した
「あれを見て!」
プロメッサが指を指したのはバトルフィールドの中央でベネトナシュを指差すようにして人差し指を立てた私であり、その先端からは眩い光が放たれていた
「まさかクロナ……最初から諦めていなかったのか……!」
「クロナ……やっぱり、貴女は強いね。フフッ……私の使命、取られちゃったな」
――諦めるものか。私にはみんなとの約束がある。それにベネトナシュを止めることがνの願いでもあり、この世界を救う事にもなる。あの絶望を越えるほどのみんなの希望を指先に集め、やがてそれはベネトナシュのそれを飲み込むほどの大きさとなった
「なっ……!?」
「終わりにしよう、ベネトナシュ」
「……終わりは無い!!私はまだ全ての世界に復讐していない!!」
「ベネトナシュ、もしまだ貴女を絶望が包むなら……」
瞳を閉じ指先に集めた大いなる光を空にかざし、自分さえも消える事を決意すると共にベネトナシュにこう叫んだ
「その悪夢すら凍らせる!!」
その叫びと共に大いなる光は輝きを増し、絶望の球体ごとベネトナシュの全ての苦しみを消し去った。善の心を追い出し悪の部分しか残っていなかったベネトナシュから絶望が消え去ると言う事は彼女の消滅を意味しており、文字通り彼女は消滅したがそれは私の消滅をも意味していた
「悪夢は……終わったのよ」