SONG7【ディアと鈴神】
リューザはウェンヴィスの計らいにより用意された船でレイベスへと向かっていた。当然親友であるアキラは――ノーバディなどの事は伏せたが――これを聞いて黙ってはいなかったが、今回は一人で行きたいと断った。その為今回は旅行と言う事になっており、図らずも嘘をついてしまった事になる。ちなみにキーブレードに関する事に詳しいとされる人物へはウェンヴィスが連絡してくれているので、船を降りてすぐ迎えに来てくれる事になっている
ボウフは確かに少し離れた場所にあると言えど船で六時間と言った距離にレイベスはあり、船を降りて港を歩いていると何処からか声が聞こえた
「おーい、こっちだ」
少し離れた所で黒髪の男の人が手を振っているのが見えるが、あまりにも大人びた雰囲気を纏っている為わからなかったがどうやらリューザとほぼ同い年くらいの少年のようだ。その金色の瞳は黄昏時でも輝いており、赤と白を中心とした服装は彼の暗黒的な雰囲気にマッチしていた
「聞いてたより落ち着いてるな?」
「もしかして貴方が?」
「あぁ、俺はディア・マークス。話はあの旅商人から聞いてる。で、お前がリューザだよな?」
「あ、はい」
「フッ、まさに外道だな……」
恐らく旅商人での仕事中に知り合ったのだろうこのディアと名乗った少年が突然言い出した意味不明な台詞にリューザは困惑を隠しきれず、ディアを完全に変な目で見そうになったが途中で自分を静止させた
「失礼。あいつと似て、男らしくない顔だと思ってな」
「は、はぁ……“あいつ”って、レイっすか?」
「察しが良いな」
そう言ってディアは指を鳴らすと何処からともなく携帯を取り出して電話を掛けた。その相手はリューザが誰かを聞くより早く出て、ディアはその笑顔を崩す事なく喋りだした
「鈴神、今から客を連れてくるんだが……」
『あっ、ディアさん!お客さんですね?分かりました、準備しておきます!』
「頼んだぞ」
その言葉と共に電話は切れ、やっと口を開く事が出来たリューザは先程聞きたかった事を言った
「あの……誰すか?」
「あぁ、俺のパートナーだ……一応。お前を迎えに行くのに留守を任せてな。家は割りと近いから歩いて行くぞ」
「はい」
港から歩き出す事10分、リューザは以前出会ったライガと言う少年が着けていないか警戒しつつディアに着いていくと町の中でも特に目立たない場所にある4階建てのマンションの303号室――つまり彼の家にたどり着いた。同じマンション暮らしで若干親近感が沸きつつもディアの家の中が割りと清潔である事に関心していた。部屋の殆どは白黒で染まっており、家具さえもそれである事はディアらしさをよく表していた
「鈴神、今帰ったぞ」
「お帰りなさい、ディアさん!」
奥から現れたのはディア同様に落ち着いた雰囲気の女性であり、白いロングヘアーに茶色の瞳と言った容姿はディアと対照的だ。小柄な身体と計り違えたようなサイズが特徴的である――何とは言わないが
「この人がさっきの?」
「あぁ。鈴神 毎夜、俺のパートナーだ」
「宜しくお願いします。それで、貴方がリューザさんですね?」
「は、はい!」
「ま、とりあえず上がれ」
ウェンヴィスに助けられっぱなしだとは思いつつもリューザは自身の正体を掴むべくディアの家に上がらせてもらった
「じゃあ、何か作るから待ってろ」
そう言ってディアはキッチンへと向かいエプロンをしたが、それを見てリューザは不覚にも吹き出しそうになった。なんとエプロンには縦で“外道”と書かれており、それも堂々と真ん中に描かれていた。ある意味凄いと言うかどうにもセンスがずれている気がするものの、この家に一人暮らしである彼の事だから一体誰がこれを選んだのかはすでに明確だった
「……あぁ、ディアさんか……」
「どうしました?」
「いや、何でも……」
クールかつカリスマ臭全開かと思いきや行くところまで外道なディア、胸部が計り違えたような印象の鈴神に振り回されながらも3人で食卓を囲み、様々な事を話し合った。特に話題となったのがディアの料理であり、高級レストランに出ていてもおかしくないほど美味しかった。ディア自身も料理には相当な自身を持っているようで、夢は三ツ星シェフだとか