SONG10【親友(とも)よ】
リューザがレイベスへと向かってから三時間が経過した頃、彼の親友であり同級生であるアキラは街の書店に来ていた。もうすぐ自分は高校生、だから今のうちに勉強しておこうと学習用の参考書を購入したのだ。すぐにでも家に帰り勉学に励もうとした矢先、帰り道で彼と遭遇した
「おっ、アキラじゃないか」
「ウェンヴィスさん!お久しぶりです」
旅商人ことウェンヴィスはリューザの友達、故に彼の親友であるアキラと面識があるのは必然である。自分自身の勉強の事も気になるが時期を考えると試験はまだ先、1日くらい割いても問題は無いと考えアキラはウェンヴィスを自分の家に招き入れる事にした
「ここが、アキラの部屋っスか……思いの外、かたずいてるな」
ウェンヴィスの言う通り、アキラの部屋はこの歳の男子の部屋としては珍しくまるで引っ越して1週間ほどしか経っていない新部屋のように綺麗だった。それはウェンヴィスを驚かせるには充分であり、自身の生活力の無さを悟った。実を言うとこの男、少年時代は自室の中が塵屋敷同然の状態が3年ほど続いたと言う大変嬉しくない記録がある。それに比べて今目の前にいる後輩は生活力のあるしっかり者だった
「まあ、男子の部屋って散らかってるイメージありますよね」
「あ、あぁ……そうっスね……アハハ」
アキラ本人はそのつもりが無いとしても自分の事を言われたような気がして、ウェンヴィスは言葉のみの笑いを見せた。無論目は笑っておらず、それどころか片目が半泣き状態である
「な、何でもないっスよ?断じて何でもないっ」
「そ、そうですか……そう言えばウェンヴィスさん。リューザの事、何か知りませんか?」
「リューザ?」
「はい、このところ様子がおかしいんです。訳を聞いても、適当にはぐらかされるし……前は話してくれたんだけど」
最近様子がおかしいと言うリューザの状態をウェンヴィスは知っていたが、正真正銘の一般人であるアキラには当然真実は知るよしも無い。そしてその一般人と言う事実は、リューザが何故親友に訳を話さなかったかを示していた。だがウェンヴィスはそれを決して口にはせず、あえてこう言った
「ほ、ほら……あれだよ!きっと最近寝不足なんじゃないかな?この頃変な夢ばかり見てるって言うし、良く眠れて無いんじゃ……」
一般人であるアキラを巻き込めるはずがない、だから今は誤魔化すしかなかった。しかしそんな虚像は彼には通用せず、真実を追及するべく問い詰めてきた
「それは違う。リューザの身の回りには、あまりにも不可思議な事が起きすぎている。ある日には黒い怪物が現れて、またある日には正体不明の怪我……これは寝不足じゃなく、間違いなくリューザは他人には言えない、何かを抱えていると言う事!教えて、ウェンヴィスさん。リューザは一体何を隠しているの!?」
リューザの親友を豪語するだけあってアキラは彼の事を誰より理解し、彼の異変にすら気がついていた。ハートレスの出現や正体不明の怪我、さらにはこの頃何度も見るリューザの不安そうな顔。それらはアキラの予想に確信を持たせるには充分すぎる条件だ
ウェンヴィスは顔をしかめながらも躊躇いがちにアキラに真実を伝えようと、その口を開いた
「……リューザは、人間じゃない」
「人間じゃないって……どういう事!?」
「彼の正体はノーバディと言う魔物で、彼は今、自分の存在について悩んでいる。もっとも、これまでそれに気付いていなかったから、話すにも話せないけどな。でも、それを知って尚更話せなくなった。ましてや、自分が消えるかもしれないから」
「リューザが……消える!?」
「ノーバディは闇に溶けやすい……しかも、ノーバディとその対であるハートレスが消えると、元々の人間が蘇生されると言われている。実際、その為にリューザを殺しに来た者がいたらしい。だからリューザは、最悪の場合……」
「元々の人間の蘇生の為に殺される……いや、自殺する!?」
「もしくは、その本体に会いに行くと思う。しかし、重要なのはどちらにせよもうリューザには会えなくなると言う事」
「そんなっ!?」
親友にもう2度と会えなくなる、その言葉はアキラの中の大切な物を全て奪い去った。圧倒的な虚無感を心に生み出し、無二の親友の事を思い浮かべる。人間ではないとしても、たった一人の大切な親友の姿を。そんな彼に居なくなって欲しくない。そう思ったアキラは、1つの決心をする
「ウェンヴィスさん」
「アキラ……?」
「僕、リューザを止めます。何があろうと、親友を死なせはしない……!」
「アキラ!?」
「僕にはリューザの苦しみが分からないかもしれない。でも、分からないまま勝手に居なくなられるのは絶対に嫌だ!僕は……戦う」
大切な親友を守りたいと言う想いは、果たして少年達をどのような結果に誘うのか、それは誰にも分からない。常に結果は、人々の想いが決める物。一番想いの強かった物が真に望む物、それが運命なのだ。誰にも分からない、これから作られる運命
■作者メッセージ
そう言えば、本作のイメージOPEDを紹介したいと思います。
毎回後書きが無いのはちょっとつまらないので(笑)
一話毎に順番に紹介していきます。まずは第1期のOPEDから!
OP:Crossing field
ED:響―こえ―
皆さん恐らく知っている曲かと思われます。興味があれば聞いてみてください!では!
毎回後書きが無いのはちょっとつまらないので(笑)
一話毎に順番に紹介していきます。まずは第1期のOPEDから!
OP:Crossing field
ED:響―こえ―
皆さん恐らく知っている曲かと思われます。興味があれば聞いてみてください!では!