――久しぶりに踏み締めるアースの大地は懐かしく、こうしてダーク君とフィオ君と３人で歩いているとあの頃を思い出す。あの時は私がいてレイ君がいて、ダーク君とフィオ君にヒトミちゃんがいた。他にも先輩達やたくさんの仲間。楽しかったあの頃を取り戻す為には、やはり彼を見つけなければならない。如何に私自身がここに帰ってきたとしても、君がいなければ私の明日は始まらない

何となく以前のように適当に駄弁りながら歩いているとχブレード再来事件以来大分復興が進みつつあるプラズマイトに辿り着き、再び目に写る懐かしい光景に言葉に言い表せないほどの感動を覚えていた

「本当に戻って来たんだ……ここに」

「あぁ。けど、まだ帰ってきてないやつがいるからな」

「大丈夫、見つけ出した時にはもう離してあげないから」

あの日いなくなってしまった君を２度と行方不明にしない為にも見つけたらまず真っ先にその手を掴み、思いっきり抱き締める。そのまま流れで告白するのが理想だが、正直何の手掛かりもないためまだまだ先の話である

「所でさ、白凰達って何処にいるんだろう？もしかして、復興を手伝ってるとか？」

「まぁ、白凰のやつならあり得るな。あいつ、自分の身分が高い癖にボランティアでも何でもして人の為になることをするやつだし」

ヒナタさん曰く貴族らしくない貴族こと白夜白凰、見た目は貴族中身は庶民と言っても言い過ぎではないほどに親しみやすい人物であり、言動だけみれば身分の高いお坊っちゃまだがその性格は下手な大人よりも俄然親切である

「こうなりゃ、全力で名前叫んでみっか？」

「いや、それは近所迷惑じゃ……」

「はぁくおーーー！！」

「「すでに叫んでる人いたっ！？」」

ダーク君には悪いが、気が付けば身体が行動を起こしていた。仲良し凸凹コンビの切れ味抜群のツッコミがこの機械の町で炸裂し、全力の叫びは町中に木霊した

「これで来るのよね？」

「なぁにやりきったみてーな顔してんだ！？お前そんなキャラだったか？」

「え？だって、白凰達を探すなら名前を呼ばなきゃ」

「まぁ、間違いでは無いよね……」

フィオ君の表情が心なしか呆れているように見え、ダーク君に限ってはどういうわけか『１枚、２枚』と数えながら酷く暗い雰囲気で俯いていた。

「誰が我の名前を呼んだかと思ったら、クロナではないか」

そんな半分茶番な状態に割って入ったのは白髪の一見高貴な少年こと白凰その人であり、姿を見ること自体何だか久しぶりな気がするが多分気のせいだろう

「久しいな、クロナ」

「白凰も久しぶり！黒凰は一緒じゃないの？」

「あぁ、今は我と交代する形で復興を手伝っている」

「あぁ、なるほどね」

白凰はやはり予想通りだったが、流石にあの黒凰が復興を手伝っているとは思いもよらなかった。何せ彼は白凰の対の存在とまで呼ばれるほどの性格をしており、めんどくさがりな印象さえ受けてしまうのだがこの１年で何かが変わったと言う事だろうか

「所でクロナよ、あの話は聞いたか？」

「えぇ……私達はあの人達と戦う。その為に、また新たな１歩を踏み出す」

「ならば戦いの勘を取り戻しておかねばなるまい。どれ、我が相手をしてやる」

そう言って白凰は何時か王様から使わせてもらっていたスターシーカーなるキーブレードを出現させ、私もまた何時もと変わらぬ自身のフェイバリッドであるキーブレード“シャインセイバー”を左手に出現させた

「行くぞ、せい！」

先手を打つように白凰の斬撃が降り下ろされるが、それを後ろに飛んで回避し走って彼の元へ向かうと通常人には見えない早さで得物を操りその速度を見せつけた

「やるではないか！それに相変わらずのその攻撃速度、鈍っていないな」

「お褒めに預かり光栄よ、白凰。これなら問題ないかしら？」



「いや、まだ魔法は確かめちゃないね」

めんどくさそうなトーンの低い声がしたと思ったらいつの間にか黒凰がこちらに向かって歩いてきていた。生気が感じられないと言うのは流石に言い過ぎだが、毒舌かつ誰にでもストイックである事から生き死神とも言われているとか何とか

「黒凰、終わったのか？」

「まぁね。それより白凰、次は君の番だ」

「分かった」

そう言って白凰は黒凰と入れ替わるようにして去っていった。先程白凰自身が彼と交代で復興を手伝っていると言っていたので特に問題はなく、次に得物を構えた黒凰が私の前に立ち塞がった

「さぁ、クロナ。久しぶりに会って早々で悪いけど、魔法を試させてもらおうか」

「相変わらず、その雰囲気はデフォルトだね。けど、だからこそ黒凰なんだけどね。良いよ、見せて上げる……私の魔法！凍てつけ、ブリザガ！」

これからの戦いに挑む力があるか、その力量を確かめる為に私の前に立ち塞がってくれた白凰と黒凰。私はその二人に敬意を示し、今出せる最高のブリザガを放った。その一撃は黒凰の鬼神剣を防がれたものの、彼の表情は満足そうに笑っており、私もみんなも今の自分達の実力を理解し合い固い握手を交わした