SONG18【絆、繋がりの心】
「全員、集まったね」
あのウェンヴィスとの交戦の後私はすぐにみんなを連れて二人を追い、彼らに連れられるようにしてそのまま再びシュージ先輩の家にお邪魔した。一部意外すぎる人物もいるが協力者の加入により最初に訪れた時よりメンバーが3人ほど増加しているが、この3名が来ることは先輩自身約1名遅れてくる事を除いては想定内のようで私達が家に入るのも暗黙の了解だった
「クロナはもう知っているが、改めて自己紹介しよう。彼の名前はウェンヴィス・エクスペリエンス。俺の知り合いの旅商人で、あの写真は彼が提供してくれた」
今回の事の発端である謎の5人組の写る写真の提供者と言う言葉に白凰と黒凰は反応を隠せず、ダーク君に関しては『嘘だろ』と声に出して驚愕していた。実際私もシュージ先輩の言葉を疑うほどに驚いてしまったので正直気持ちは分かるが、聞いた話によるとこれでも大人らしい。もっとも、見た目だけなら私達とそこまで変わらないが
「そんな訳で、宜しくッス!」
掴み所のない陽気な明るさをアピールするウェンヴィスであるが、先程シュージ先輩が紹介した通り彼が情報提供者と言う事実はそれをみんなを受け付けさせない状況を生み出すのは言わば必然であり、彼らの集まる視線から『早く教えてくれ』と内心思っているのだとウェンヴィスは容易に察した
「……えー、明るい話なしにいきなり話せと?」
「……当たり前」
あくまでもシリアスなムードを切り替えようとするウェンヴィスであるが、それは黒凰の毒舌かつ適切なツッコミによりあっさりと断たれる。『そりゃねぇぜ』とぼやくウェンヴィスであるが、今なら私ですら黒凰と同じ事が言えるかもしれない。何せあの5人組の件は今のこの世界の不安の原因なのだから
「全く……そんなに強ばってたら、肩こるぜ?まぁ、話すけどよ」
「随分暢気だけど、大変な事が分かったんだろ?」
まるで何処かの誰かのように平和的に親交を深めようとしつつ本題に入ろうとするウェンヴィスにまさにその誰かであるダーク君が肝心の本題を問い、ウェンヴィスは『そうだ』と言い強く頷くとやっとその緩い表情を険しいものに変えた
「やつらは謎の人物と契約し、何か良からぬ事をしようとしてるって事は知ってるな?それについて、色々分かったぜ
まずやつらの名は、レジェンドマスター……未来の代表たる5人らしいぜ」
「伝説の主君……まさに、未来の代表を名乗るのに相応しい組織名だねぇ」
「チビスケの言う通り、こいつらの組織名からは何か嫌な予感しかしねぇ。そしてその仮面のガキはホワイトって言うらしくて、本当にレジェンドマスターとは独立してるそうだ」
「やっぱり……でも、なら何故彼らに協力を?」
「傭兵みたいなものって考えるのが自然だろうな。現に契約現場を目撃してんだし、こいつも同じ方法で雇ったって思うのが妥当だろうよ」
「確かに……その方が自然ではあるだろうが、我としてはこんな人物今まで見たことも聞いたこともあるまいぞ」
その白凰の何気ない一言に全員がハッとした。ウェンヴィスの意見通り雇われたと考えるのがもっとも自然ではあるが、レジェンドマスターは科学者を相応の技術があると認めて契約を持ち掛けている。そうなるとホワイトも凄まじい実力を持っている事になるが、にしては全くと言って良いほどその評判を聞かない。つまり、彼は実質突然現れた事になるのだ
「まさか、突然ひょこっと出てきて協力させてくれとでも言ったのかよ?」
「分からぬ。しかし、やつの存在が妙に引っ掛かるのだ……」
「まぁ、お坊ちゃんの言うことも分からんでもねぇ。それにレジェンドマスターのリーダー、こいつの『実行するか』って質問にもちろんって答えてた」
「実行……?」
「その時何とは言わなかったが、あるぜ……この世界に忍び寄る何かがな」
態々未来からこの時代にやって来て、そこから何をしようとしているのかはまだ誰にも分からない未知の領域。まだそれは羽休めをする小鳥のように息を潜め、こちらの世界を覗いている。その上水面下で謎の科学者やホワイトのような様々なエキスパートを雇っていっているのだとしたら、当然“彼”を狙わない訳がない
「まさか、レイ君も危険なんじゃ……!」
「クロナ、実は俺も同じ事を考えていたよ」
彼とは長い付き合いであるシュージ先輩もまた同意見のようで、先程から喋っていたウェンヴィスの代わりに前に出てその思っていることを全員に話した。その際表情は何時にも増して深刻なものとなって
「特にあの“ブラックパラデス”を1度所持して手放した人間は、最終的に記憶が全て忘却する。そんな状態の彼を狙えば、簡単に引き入れる事も可能だからな……」
――ブラックパラデス、それはダークエンド事件の際にレイ君が一時的に使っていた闇の属性を持ったキーブレード。その実態はダークエンドにより生成された偽の鍵であり、所持した者に呪いを与える。それにより闇の力を操る事が可能になり圧倒的に強くなるが、1度でもその所有権を離すと徐々にその記憶が忘れ去られてしまう。特に心に一切の闇を持っていなかったとされるレイ君の純粋な光だったからこそ、闇の侵食の影響は強いはずだ。この時点でまず記憶が危うい事は確定していると言って良い
「……言いにくいけど、そりゃあ希望はねぇかもな。俺の知る限りじゃ、記憶が消えたやつが戻った所を見たことねぇッス。だから、レイもきっと……」
「戻るよ」
ウェンヴィスの申し訳なさそうな言葉に一閃、私の言葉が部屋中に突き刺さる。曇りきった空に一筋の太陽の光が差し込むように自身の瞳は前を向き、かざした左手から決意の鍵は降臨した。シャインセイバー、これまでずっと私を支えてくれていたキーブレード。私はそのキーチェーンを、静かに外した
「……忘れるって言うのは、消えるんじゃない。ただ心の奥底に行っちゃうだけ。タイムカプセルに入れたものを今放って大人になったらそれを探すように、何時かはそれを取り出す事になる。記憶も同じ。
1度忘れても、心の奥には必ずある。そしてそれをもう一度取り戻したとき、それは思い出となるのよ」
外したキーチェーンを音もなく懐にしまい、瞬間キーブレードが無機質な姿に変貌する。しかしそれも本の一時のみで存在と言うのは常に変化をし続けるもの、それはキーブレードであっても同じ。そしてそれは新たなキーチェーンを装着することで発生する
「レイ君は忘れても、私は覚えている。心が繋がってるから、絶対思い出せる」
眩き光が輝き一瞬の閃光と共に迸るとそれはキーブレードに宿り、神々しい光の中から現れたそれは私達全員が見知った得物へと姿を変えていた。その名は『レイムチェーン』、これまでずっと彼を何処までも支え英雄の力にもなった伝説の力。それが今異なる色を得て私のキーブレードに宿り、輝きから解放されたそのキーチェーンは彼が首から下げていたネックレスそのもの。これにより新たなレイムチェーンの可能性、『レイムチェーンQ』が誕生した
「そしてこのキーブレードこそ、心の繋がりの象徴!」
紫色のその柄は美しく輝き、純白に煌めくその刃身は何処か私好みの配色でそれを認めるかのように仲間達も笑顔を浮かべていた。新たなキーブレードの誕生と言う驚きよりも、心の絆の繋がりの形を見た喜びの方が大きいからだ
「……ほんと、あいつに似てるわ」
何かを含んだようなウェンヴィスの言葉はこの時誰の耳にも届かず、彼自身も独り言の感覚で言っていたようで少し複雑そうな表情だった。まだ彼の事をよく知らない私達だけど、協力者として仲間になってくれるのならそれ以上は望まない。何時も通り、レイ君のように正面からぶつかるのみ
「さて、ウェンヴィス。言いたい事は、分かるわよね?」
「……おう、良いぜ。お前らに着いていってやらぁ。俺の情報網、きっと役立つぜ」
「ありがとう、ウェンヴィス!」
ウェンヴィスと私の右手は互いを掴み合い、固い握手を交わした。新たな仲間の誕生に誰もが笑みを浮かべ、中にはウェンヴィスの加入を祝うように歓声を挙げるガッカリ王子の姿もあった。これでメンバーは合計6人、戦うには充分だ
「なぁクロナ、これからデスティニーアイランドへ行ってみてはどうだ?」
「デスティニーアイランド、ですか?」
「あぁ。より詳しく現状を知ってもらいたいし、何より情報集めも大事だからな」
「……決まったッスね」
シュージ先輩の提案により新しく編成されたチームの最初の仕事としてデスティニーアイランドに情報集めと現状把握をしに行く事になり、私達は各々の準備の為に解散しながらもこれから自分達の描く未来に胸を踊らすのだった
「……お兄ちゃん……」
そして一人の妹もまた、私達の知らない所で動き出そうとしていた
■作者メッセージ
どうも、レイラですです
お知らせになりますが、キャラ紹介の方で『レイ、クロナ、ダーク、フィオ、ディアさん、ライガ、鈴神、紫音、ヒトミ』の9人のイラストを一新しました!
全て手描き&多少の編集ありなので、見て頂けるとありがたいです
そして同じくキャラ紹介の方でプロメッサの欄を更新しました。見ると言う方は、ネタバレ注意とハンカチの用意を……
そしてキャラ紹介から離れますが、この度あの第1期をリメイクする事にしました。
まだ考えが幼かったあの頃、きっと皆様初期の頃は読みづらいと思ってる人がいるかもしれない。そうであれば、これから読む人やまた振り返ろうと言う人に取っては読んでいて辛いかもしれない……
そう思って、リメイクを決定しました。
何時からやるかは未定ですが、すでにタイトルだけはリメイクしてあります。なので内容がいつの間にか大きく変わっていたら、その時は開始されたと考えください。ストーリーは変えるつもりはありませんが、多少やり残した事は付け加えようと思います
ではでは
お知らせになりますが、キャラ紹介の方で『レイ、クロナ、ダーク、フィオ、ディアさん、ライガ、鈴神、紫音、ヒトミ』の9人のイラストを一新しました!
全て手描き&多少の編集ありなので、見て頂けるとありがたいです
そして同じくキャラ紹介の方でプロメッサの欄を更新しました。見ると言う方は、ネタバレ注意とハンカチの用意を……
そしてキャラ紹介から離れますが、この度あの第1期をリメイクする事にしました。
まだ考えが幼かったあの頃、きっと皆様初期の頃は読みづらいと思ってる人がいるかもしれない。そうであれば、これから読む人やまた振り返ろうと言う人に取っては読んでいて辛いかもしれない……
そう思って、リメイクを決定しました。
何時からやるかは未定ですが、すでにタイトルだけはリメイクしてあります。なので内容がいつの間にか大きく変わっていたら、その時は開始されたと考えください。ストーリーは変えるつもりはありませんが、多少やり残した事は付け加えようと思います
ではでは