SONG19【久しぶりの運命島】
「……ついに!」
『デン』と言う何処かのバラエティ番組で聞きそうな効果音と共に機嫌の良さそうな声が響き、同時に青空に浮かぶ太陽が写し出される。左上にあるバッテリー表示からそれが何かは一目瞭然であり、興奮のせいかそれを持つ手が震えている為に写る景色も地震が起きている
「南国に!」
再び同じ効果音で今度は浜辺が写され、行って帰ってを繰り返す波が貝殻を連れてきてはさらい、そしてそれが何度も繰り返される。そしてその海は太陽の光に照らされ、この世界の美しさをそれだけで表していた
「「「来たーーーっ!!」」」
最後に『デデデデーン』ともはや完璧にバラエティ番組気分で盛り上がるウェンヴィス、ダーク君、そしてフィオ君が一斉に声をあげ、そして何処からともなくいつの間にか準備されていた歓声が沸く。中には口笛もあり一体どこから出ているかなどもはや検討が着くのだが、流石に茶番はここまでだ。次の瞬間にウェンヴィスの持つデジカメが独りでに凍り付いた
「ギャー!冷たいッス!」
酷く情けない断末魔を上げ、巻き添えを喰らって凍ってしまった右手にファイアを軽く当てる事で氷を溶かしたが今度は多少火傷してしまい、次に『熱いッスーー』と叫び砂浜を慌てふためきながら走り始めた
「全く貴方達は……ぶれないのは良いことだけど、遊びに来たんじゃないよ?」
彼がいたころから何時も明るく盛り上がる時には盛り上がる事を欠かさないダーク君とフィオ君のコンビにさらに初めて南国に来ると言うウェンヴィスが加わり強力な3バカになるのは良いのだが、にしたって旅行に来た両親の子供のようにはしゃぎすぎである。それを言ってしまっては、私がこのチームのお母さんみたいだが
「まぁクロナ、そう言ってやんなよ。特に俺とフィオは、第2の故郷に里帰りなんだからさ」
そう言えばダーク君とフィオ君はレイ君に着いていく形で共に旅立ち、その過程で二人もまたこの世界に住んでいたのだった。それを思い出して二人がはしゃぐのに今更ながら納得が行き、まだ熱いだの冷たいだの騒いでいるウェンヴィスを他所に海の向こうの小島を見つめる。あそこはかつてある3人の仲の良い少年少女達が思い出を作り未来を思い描いた記憶の島だ
「そうそう!クロナちゃんって、こう言うときには真面目だからなぁ」
「わ、悪かったよ。それに私も、実は1度来てみたかったんだよね」
「奇遇だな、我もだ」
偶然にも同じくここを訪れたいと思っていた白凰もまた彼らと同じように目を輝かせているが、彼の性格上と言う事もあるかもしれないが隣に相棒的存在であり一番のストッパーである黒凰が控えている為にはしゃぐような事はまるでしようとしない。それに私自身は夢の世界でなら行ったことはあるが、それは彼の記憶の世界のようなもので本物ではない。だからやっと今こうして、本物の地に降り立ち砂浜を踏み締めているのだ。そう、この世界の名前は
「……“デスティニーアイランド”、だよね」
ボソッと呟くようにしてこの世界の名前を出す黒凰に相方である白凰は頷き、熱いのか冷たいのか良く分からない男ことウェンヴィス・エクスペリエンスもやっと落ち着いたのか手を擦りながら強く頷いた。やはり彼も情報だけは仕入れていて何時か行きたいと願っていたのか、それとも単に南国に来たことに喜んでいるのかは不明だが
「さて、今の世界の状況を知るためにはやはり現場にいた人の証言が納得が行くだろうね。この南国に受かれてるバカ四人はともかく、最近はハートレスの数も減っているから恐らくあのキーブレード使い達が教えてくれるだろうさ」
「だからシュージ先輩は、ここを指定したんだね。でも、教えてもらうったって……一体何処に――」
「やれやれ、天然巫女ご一行は凍ったカメラで観光するのが趣味なのか?」
そんな冗談混じりの発言と共に本島町の方角から現れた大人びた銀髪の少年、キーブレードの勇者の一人にしてマスターであるリクは多少ながらも明るい表情で出迎えてくれた。以前と比べると影が無くなっており、雰囲気が大分丸くなったと言える。やはり世界が平和となって、気が楽になったのだろうか。まぁ平和になっとと言っても、私は何をすることでそうなり何が解決されたのかは知らない訳だが
「リクさん、久しぶりね」
「本当にな、無事で良かったよ。他のみんなも元気そうだし、何やら新顔もいるようだな」
「あぁ、あの焼き頃冷凍男の事だろ?」
『どんな名前だよ』と思わず突っ込みたくなるような黒凰のふざけたアダ名で指名されたウェンヴィスは幾らキーブレードを扱い様々な世界を渡れると言ってもリクとはどうやら面識はなかったようで、もし仮に出会っていたとしたらまず真っ先にイエン・シッド氏に情報が届き戦いに参加させられていたであろうウェンヴィスが特にそう言うのを知らない辺り、人知れず活動しているキーブレード使いだったのかもしれない。今はそれは本題ではないため置いておくが、大事なのは現状把握だ
「よ、呼び名はともかく……その様子だとクロナは、今の世界について分からないみたいだな?」
「そうなの、だからもっとも知ってそうなリクさんに聞こうと思ってね」
何処かで上に見える青いものと本島を囲む青い海の名前を持った二人が『解せぬ』と言っていそうではあるが、実際こう言うことはリクの方が頼りになるだろう。ゆっくりと頷くとリクは『歩きながら説明する』と言って本島町の方角へ足を進め始めた。無論私達一行もそれに続き、不名誉な呼ばれ方をしてしまったウェンヴィスも当然同行した
「レイが行方不明となってクロナが夢の世界で戦い眠りに着いた後、俺達はついにマスター・ゼアノートとの最後の戦いに挑んだ。様々な世界を巡り、]V機関の面々を倒すことでまた1つと真実に近付き、そしてやつを討つ事に成功したんだ」
「じゃあ、もう]V機関所かゼアノートもいねぇってこったな」
「そう言うことだ。だがハートレスは数が減っただけでまだ少なからずいるから、注意は必要だな。ゼアノートを倒しても世界に闇が有る限り、やつらは現れる」
「ダークエンドを倒したらアンチネスは消えたって言うのに、理不尽な話だねぇ」
「アンチネスの場合はハートレスに力を与えていたからな、要はせっかく着た鎧を没収されたって事さ。
でも鎧を脱いでも本体はそこに残る、それだけの事だ。と言ってもゼアノートが倒された影響で、数は激減してるがな」
「つまり、今世界はもう完全に平和って事よね」
その言葉にリクが頷いてくれた為に、それは証明された。今ではゼアノートの驚異はすでに世界になく、ハートレスの数も大幅に減りほぼ平和が約束されたも同然の状態だった。これまでの一連の出来事の多くの黒幕がいなくなった為に世界の闇の多くが光に溶け、たくさんの人々が希望を抱く度に闇の魔物の数は減っていく。そうして、世界は平和になっていくのかもしれない
「さて、お前達の話も聞きたいし俺の家に行こうか。着いたらお茶くらい出すよ」
「忝ない、リクよ」
こちらの話を出す際にレジェンドマスターの事を相談すれば、恐らくリク達も力を貸してくれる。未だ噂程度にしか広まっていない彼らの驚異は何時来るか分からないため、このようにゼアノートの野望を止めた英雄の一人が手を貸してくれるともなれば準備万端なんてレベルではない。それどころか百人力である。そんな彼の家に招待してもらえた際に白凰はお礼を述べ、その隣の黒凰はずっと遠方にある草木を見つめていた。そして物音がしたとき、彼の表情が一瞬にして強ばる。『ガサガサ』と響く不気味な音が徐々に迫り、咄嗟に得物を出現させたと同時にそれは草木の中から飛び出した
それは数が減ってきているとされるハートレスの基本的な姿であるシャドウだった。それに気が付き私達も得物を構えた時にはすでに7体が周囲を囲んでおり、さらに出現したリーダー格であるネオシャドウが町の方角へと向かっていった
「くっ、まさか残党!?」
「そのようだな。俺はやつを追う、こいつらは任せられるか?」
「当然よ、私を誰だと思っているの?」
夢の世界でのローグの誘いが役に立ったのか、もはや緊張感に慣れてしまった為に今では堂々とした発言も問題なく口にし、そしてその意思の強さは間違いなく“彼”にもらったもの。リクは包囲網を脱出し急いでネオシャドウを追い、私達は残党であるシャドウの迎撃を始める
「さて、コンサートの開演だよ」
「「「「「おー!」」」」」
久しぶりにあの舞台に立ったような気分でメンバー達を指揮し、白凰は以前と変わらない所かさらに磨きのかかったスピードで動き回り、今も王様より借りているスターシーカーによる連続攻撃で敵一体を怯ませた。その隙に黒凰の重量級の一撃が炸裂し、あえなくシャドウの一体は退場した。やはり白黒コンビ、チームワークが一線を画している
「すげぇな……あの二人は」
「だったら僕達も、自分達にしか出来ない事で!」
そしてフィオ君は夢の世界で得た力である聖獣こと複数の腕を持つスナイパー“白銀のシュラ”を召喚し、その発砲の1つで1度に2体のハートレスが爆発に巻き込まれ吹き飛ばされる。それを当然ダーク君が見過ごすはずもなく、咄嗟に指を鳴らした
「来やがれガントラ!」
燃え盛るようなオレンジ色の身体に黒色の戦国武将のような鎧を装着した炎の武竜“黒炎竜ガントラ”が燃える炎の中から現出し、その拳で吹っ飛ばされたハートレスを容赦なく打ち返し野球の審判が見たら間違いなくホームランクラスと言うほどに天高く飛ばした。
一方でウェンヴィスもまた私との戦いで垣間見せたスピードレイヴを使い難なく応戦しており、数に反してこちらの方が優勢に見えるが、それは初めから一体だけこの戦場から逃げ出していたからだった。たった今それに気が付いた私は即座に逃げるもう一体を視界に捉え、それを追いかけるようにして島の森へと入っていった。その中心部でついにその個体を見つけ、キーブレードの1突きで倒した
「……ふぅ……っ!?」
安心したのも束の間、いつの間にか背後にネオシャドウが出現しその魔爪を今にも振り下ろそうとしていた。丸い目は黄色く不気味に輝き、そこには1滴の光すらない
「しまっ……――」
ネオシャドウは一体ではないと理解する前にその魔爪が振り下ろされ、私はそれに引き裂かれると思われた――しかしそれは1つの細い剣により弾かれ、次にその刃がネオシャドウの腹を貫いた。いつの間にか目の前には白いマントを着用し見事な茶髪を持った少年がおり、彼は即座に剣を引き抜くとこちらに向いてその顔に着けた白い仮面を露にした
「貴方は!」
「っ!早く!」
間違いなくレジェンドマスターと共にいたあの仮面の少年ではあるが、今はそんな場合ではない。彼と息を合わせるようにして得物を振るい、前方から私が、後方から仮面の少年がそれぞれネオシャドウの身体を切り裂き見事にその影は消滅した。敵が一応いなくなった所で仮面の少年が剣を腰に着けた鞘に納めた所で、私は警戒しつつも彼にこう声をかけた
「貴方は……一体……?」
「……」
■作者メッセージ
本編を読んでお察しの方もいらっしゃるかもしれませんが、本作品ではゼアノートが倒された後と言う設定にさせていただきます。
と言うのも第4期は元々KH3後の時系列と決めており、未だそれが発売されず待っていては皆さんを待たせてしまう事になり、それは流石に申し訳ないと思った末にこう言う二次設定となりました。もちろんまだ原作KH3が出ていないため、あちらと設定が幾つか違う事になる可能性があることはご理解ください。
今回の話でゼアノートの名前が出て思い出しましたが、マスター・ゼアノートの中の人はもうお亡くなりになられているんですよね。ヴィクセンの声優さんも昔に亡くなられ、とても悲しく思います
お二人のご冥福を、この場を借りてお祈りします
ではでは
と言うのも第4期は元々KH3後の時系列と決めており、未だそれが発売されず待っていては皆さんを待たせてしまう事になり、それは流石に申し訳ないと思った末にこう言う二次設定となりました。もちろんまだ原作KH3が出ていないため、あちらと設定が幾つか違う事になる可能性があることはご理解ください。
今回の話でゼアノートの名前が出て思い出しましたが、マスター・ゼアノートの中の人はもうお亡くなりになられているんですよね。ヴィクセンの声優さんも昔に亡くなられ、とても悲しく思います
お二人のご冥福を、この場を借りてお祈りします
ではでは