ここはレイベス地方の南に位置するエリア“そよ風村”。大変豊かな田舎町で俺やフィオ、ダークの故郷である。ちなみにクロナは先程行ったドナイタウン出身で、このそよ風村は、他の場所がどんなに悪天候でも何故かここだけは常にそよ風が吹いているという不思議な場所。故に観光客が多く、俺の家――ディアス家が観光客の為の宿舎になっている。

「久しぶりだな。そよ風村………」

故郷の風を気持ちよく浴びながら言った。明るい笑顔を作り再び歩き出すと、ずっと向こうから誰かが走ってくるのが見えた。薄茶色でツインテールが爆発したような独自の髪形をしており、俺とよく似た顔立ちで青い瞳。一頭身くらい低い身長の少女。それを見て俺はすぐにわかった。少女が俺の前で止まり、笑顔を作った。

「お兄ちゃん！」

少女がそう言うと、いきなり抱き付いて来た。そして勢いにそのまま倒される。俺は自分の顔の右隣にある少女の顔を見て言う

「ヒトミ！元気そうだね」

俺に突然抱き付いた少女――ヒトミが離れ立ち上がった。ヒトミは一才違いの妹で、兄である俺の事が誰よりも大好きでもし兄弟で無ければもうすでに告白しているのだと断言するほどのブラコンだ。その兄の為に様々な行動をするのは良いが、早とちり過ぎてよく失敗する。だが、持ち前の明るさで周りを和ませるムードメーカーである。

「お兄ちゃんも元気そうだね！そっちの人達は？」

ヒトミが後ろにいたソラ達を見て言った。ソラがレイの左隣に行き自己紹介をする

「俺はソラ！このアヒルがドナルドで、この犬みたいなのがグーフィー。」
「ふーん」
「え？何？」

その様子を不思議に思ったのか、ソラが少し動揺する。

「中々良い顔立ちじゃないの〜……でも、お兄ちゃんほどでは無いかな。」

ヒトミがソラを誉めたのか俺を称えたのかよくわからない事を言った。ヒトミはブラコンである為俺が超イケメンに見えるらしいのだが、実際には女々しい顔つきなのでお世辞にもイケメンとは言えない。

「そうだ！お姉ちゃんが探してたよ！行こう！」
「うん！」

そうして、一同は俺の家にたどり着いた。家は先程言った通り宿舎なので、このそよ風村の中でも一際大きく、両親を亡くしたフィオとダークも５年前から居候していた。ちなみに俺は、この家には居候のフィオとダークを含め５人で住んでいた。ヒトミ、フィオ、ダーク、あと一人がヒトミも言っていた俺の姉だ。

「あらレイ。お帰りなさい」
「ただいま、ナタネェ！」

家の中に久々に上がり、真っ先にお帰りと言ったこの女性こそ俺の姉ヒナタ。水色のカイリのような髪形で、俺とヒトミとは違って藍色の目。そしてかなりの長身の持ち主で、早くに両親を亡くした俺とヒトミにとっては母親のような存在。しかもディアス族の末裔はこのそよ風村を納めるという決まりがあり、ナタ姉がそよ風村を納めているのだ。

「ナタネェ、俺を探してるって？」
「えぇ……でも、そこに新しい友達もいるみたいだし、これまでの事を教えてもらおうかしら」

俺とソラは頷き、ナタ姉にこれまでの事を詳しく話した。その途中、ドナルドやグーフィー、クロナ等から補正があった物の、ナタ姉とヒトミは理解することが出来た。

「そう、色々と大変だったのね」
「はい、機関やアンチネスの出現で、良くない事が、起きそうなんです。」

ソラが俯いて言った。新たな驚異や探している友達の事で頭がいっぱいになり、自然と不安になっているのだろう。するとナタ姉がソラを見下ろし、ソラを優しく撫でた。

「え？」

ソラはナタ姉を見上げて驚く。するとナタ姉は笑顔で口を開き言った

「何も不安にならなくて良いの。その顔を見ればわかるわ。大丈夫って自分の心に言ってみて」

ヒナタの言った言葉に頷き、目を閉じるソラ。“大丈夫”そう自分の心に言い聞かせた。するとソラは不思議と安心感を強く持ち、ナタ姉に笑顔を見せた。

「そう。それが似合うわ」

「さてと、そろそろ本題に入りましょうか。」

ヒナタの言葉で、レイ達全員が静寂な雰囲気に包まれ、静まり返り、みんながヒナタの藍色の目をしっかりと見ている。そして、ヒナタが口を開いた