CHAPTER15【謎の少女】
ヒトミとヒナタが決意を固め直した頃、フィオとダークはアースのレイベス地方の北に位置する森、北の森を散歩していた。昼間の日差しが大地を照らし、小鳥達の歌を歌うように優しい鳴き声も聞こえてくる。
「なぁ……会議で出されたあの話、どう思う?」
ダークが自分の左隣にいるフィオに聞く。その表情はとても深刻だった。フィオも同じく深刻そうな顔で呟いた。
「DEDと機関の関係だよね………。」
ダークはフィオの方を少しも見ずに、表情を変えず頷いた。
「DEDの出現は、機関と手を組んでいたセイと、入れ替わったみたいだった……。」
「三日と経たず出てきたな。」
「しかも、人々をアンチネスに変えたり、機関にとって都合の良いように行動しているようだし……。」
「ハートレスとアンチネスをキーブレード使いが倒せば、ハートレスらが食らった心は解き放たれ、機関の城にあるキングダムハーツへと集まる。どうすれば?」
「わからないよ。そもそも僕らはDEDはおろか、機関すら見たこと無いんだし。」
「だよな………。」
そうして話していると、いつの間にか森の中にある洞穴の入口前に来ていた。この洞穴は通称修行の洞穴と呼ばれており、フィオ達もよくここで遊びついでに洞穴のトラップなどを利用して修行していた。
二人は修行の洞穴に懐かしさを覚え、久しぶりに入る事にした。洞穴に入ってすぐに2つの炬を見つける。2つの炬には火が灯っておらず、その近くの黒い扉は開いていた。
「?」
ダークはこの様子に違和感を覚えた。フィオはダークの表情を見て言った
「どうしたの?」
「おかしいんだ。この扉は、炬に灯っている炎を2つとも消す事で開く仕掛けだったはず。だが開いている。これは一体……?」
「確かに、どういう事なんだろ?」
ダークの話でやっと違和感を覚えたフィオ。この二人と俺は昔はよくここに来ていたので、大抵の仕掛けは把握していた。だが、何故か最初から解かれているとなると、二人の考える事は1つだった。
「「誰かがここに?」」
二人は息ピッタリにその言葉を言い放つと、一目散に走り出した。ダークが先頭を走り、その後をフィオが同じくらいのスピードで追いかける。
「全速前進?」
「全速前進だ!」
フィオが走りながら質問をし、同じく走りながらダークは答える。普段ならこの時点で体力切れなのだが、誰かがこの洞穴に来ているとなると、気になって仕方無くなり、二人は走れているのだ。それも有名な陸上選手が大きくビックリする程に早く。
二人の背後から大きな音が響いた。走りながら二人が振り向くと、そこには巨大な岩があり、しかもそれはこちらにむかって転がって来る。
「「ゲッ!!」」
二人は立ち止まり、お互いに顔を見つめ合い、当然の如く二人同時に頷くと、
「「ニゲロォォォォォォォォッ!!」」
そう叫んで岩のある方とは逆方向に走り出した。岩がこちらに転がって来るスピードは人で表すなら50m6.9秒くらいだろう。当然だが二人の走る速度よりも早い。
「そう言えば、こんな仕掛けあったっけ!?」
「いやこんなのは無かったはずだ!!」
二人が走りながら話しているうちにどんどん岩は近づいて来る。このままでは確実に二人とも岩の下敷きになってしまうだろう。もう駄目だと二人ともそう思った時、フィオがとある物を指差した。
「ダークあそこ!」
それは人が丁度通れそうなほど小さな穴だった。もう岩は二人のすぐ背後にまで近づいている。迷う暇もなく二人はその穴に転がり落ちた。
そして穴から落ち、坂道でボールのようにコロコロと転がり落ちる二人。やっと身体の回転が止まったと思ったら、大きな穴の上に二人は打ち上げられ、悲鳴を上げながら二人は落ちていく。
「「うわぁぁぁぁぁぁ………!」」
何かが洞穴の一室に落ちる音が響いた。言わなくてもわかるが、落ちたのはフィオとダークだった。二人はしりもちの状態から痛みを堪えて立ち上がり、周囲を見渡す。
「お前達。」
二人が振り向いた方には昨夜シュージとライガの所に現れた黒いコートの男がいた。よく見ると男の後ろに扉がある。
「お前達。ここに何のようだ?」
男が二人にそう聞くと、ダークが言った。
「お前か?あの扉を開いてこの洞穴に入って来たのは。」
「まあな。ちょっと調べものを。」
男が後ろにある扉を指差し言った
「この先に用があったんだが、ここはお前達に任せてみる。」
と言い、二人の間を横切って去っていった。二人は男が何者なのかが少し疑問だったが、とりあえず扉の先に進む事にした。
「えっ?」
フィオがその部屋の中に見たものは、先程の男と同じような黒コートを着た黒い髪の少女が倒れている姿だった。その顔つきはカイリととてもよく似ている。
「カイリじゃ………ないよな?」
ダークが倒れている少女を見て言った。しかしカイリは二日前にDEDの一員、ベクセスに連れ去られたばかりで、この少女はカイリではない。その少女をフィオが突然自分の肩に担ぎ始めた。
「フィオ、何を?」
ダークがフィオに聞くと、フィオは少女をしっかりと抱えてから言った
「この子を連れていくんだよ。ここに残しといたら危ないし。」
フィオの身体は今抱えている少女よりも小さいが、それなりに力はあるのでお姫様抱っこくらいは簡単である。
「だな。」
ダークはフィオの言葉に納得し、二人は少女をしっかりと守りながらこの洞穴を脱出した