CHAPTER21【ミッキーに迫る危機】
その頃、ディズニーキャッスルの礎の間では、ミッキーが光の礎と呼ばれる物を見詰めていた。これが無事だったから今もこうしてこの城に平和が続いていると改めて感じる。この光の礎のように、今の世界は輝いているだろうか
「調子はどうですか?」
ふいに後ろから声が聞こえたので、振り向いて見ると、そこには機関のコートをそのまま真っ白色にしたような物を身に纏った謎の人物だった。身体つきからするに、恐らく十五歳くらいの少年だろう。顔はフードを被っていて見えない。
「君は!?」
ミッキーはすぐにこの人物から危険な物を察知し、キーブレード:キングダムチェーンD(ダークサイド)を瞬間的に構えた。この人物は明らかに怪しいのだが、光の礎のあるこの城に入って来れるという事は、恐らく闇を持たないのだろう。
「やれやれ、やはり勘は良いようですね。」
その声も明らかに少年の物だった。しかもその声は前の明るかった時の自分に近く、謎の人物は右手から氷魔法ブリザガを放った。だが、それはブリザガであってブリザガでは無かった。なんと氷の弾丸の色がない、無色なのだ。先程光の礎に影響されない事から闇の存在ではない事は確実だが、このブリザガと彼からは光さえも感じない。光でも闇でもない、中間――つまり混沌と言ったところか。
「はっ!」
間一髪、ミッキーは避けた。しかし、混沌のブリザガはそのまま光の礎に直撃してしまい、無色の氷に包まれるかのように凍り付けになってしまった。
「そんな………光の礎が!」
「さて、これで闇の力も使えますね。」
「……っ!どういう事だ!?」
「私は光も闇も混沌も、何時でも封印出来るし使えるという事です。」
その言葉にミッキーは驚くしか無かった。一見するとこんな言葉は信じられないのだが、急に彼から光と闇も感じるようになった為、ミッキーは信じざるを得なかった。しかし、三つの力を同時に使える者などこの世に存在しただろうか。そう考えるミッキーの記憶にはそんな人物はいない。謎の人物はこれまでの敵とは違う、新たな驚異とでも言うのか。その謎の人物が右腕をスッと上げ言った。
「来なさいアンチネス!」
その高らかな号令と共に、ディズニーキャッスルに大量のアンチネスが現れ、城内に散らばり始めた。ミッキーはそれを止めようと追いかけようとするが、謎の人物に阻まれる。
「さてミッキー王。貴方にはそろそろ、」
「…………………っ!」
「消えてもらいましょう!」
謎の人物が一瞬のうちに全てが光で出来たような不思議な剣、エアリアルブレードを右手に出現させ、ミッキーに斬りかかる。その瞬間、少しだけミッキーには彼の素顔が見えた。
「そんな………!君は…………」
ミッキーは一瞬で壁にまで吹っ飛ばされ、気絶した。キーブレードも同時になんと折れてしまった。キーブレードが折れるという前代未聞の事態が起こっている現状、もう今何が起きても可笑しくなどない。ミッキーが気絶して数秒たったころに俺達が到着し、謎の人物はもうすでに去っていった。
「黒みみ!」
そう叫び、倒れているミッキーに駆け寄る。白凰はミッキーから借りたキーブレード、スターシーカーを、シュージはチャムナル――楽器のような剣――をそれぞれ構え、光の礎を覆う無色の氷を破壊し、光の礎を解放した。俺はミッキーを背負い、とりあえずみんなの元へ向かう事に。