CHAPTER23【力無き礎】
「くっ!」
シュージはディズニーキャッスルの廊下に大量出現したアンチネス達をたった一人で食い止めていた。元々偵察だけだったのだが、突然アンチネス達の動きが変わり、無差別に暴れていたのが急に組織的に動き出し、全員が光の礎を目指しているのだ。しかし、疑問が1つあった。光の礎はもう解放したのに何故か闇であるアンチネス達がここにいる。どういう事なのだろうか?
「シュージさん!」
「遅いぞソラ!」
走って駆けつけてきたソラにシュージは言う。すぐにソラはキーブレードを出現させ、シュージの左隣で構えた。シュージも同じくチャムナルを右手で構えて隣にいるソラに向かって言った。
「やれるか?この数。」
シュージの問いにソラはアンチネス達を睨みながら答える。
「さぁ?後一匹増えたら難しいかもな?」
ソラの答えにシュージはフッと笑ってからアンチネス達の方を向き言った。
「その時は、俺が一匹多く倒すさ。」
「なぁんだ、シュージさんも戦うのか。」
シュージは頷き、二人はほぼ同時にアンチネス達に突っ込んでいく。幸い雑魚アンチネスばかりだったので、どんどんその数を減らしていける。一方庭の方でも、アンチネス達は現れていた。
「どうしてここにアンチネスが?」
先程までこの庭を散歩していたクロナがアンチネス達にキーブレードの矛先を向けながら言った。やはりクロナもこの状況を理解出来ていないようだ。そこにちょうど俺と白凰が駆けつけ、キーブレードをそれぞれ構える。
「大丈夫か、クロナ!」
「レイ君!うん、ダイジョバ……」
「それならばよい!二人とも、行くぞ!」
三人は一成にアンチネス達に攻撃を仕掛ける。ここのアンチネス達も数は多いがやはり雑魚で、俺達は庭エリアのアンチネス達をサクサク倒していった。レイとクロナはお互いに背中を合わせ、キーブレードの剣の先を正面に向ける。
「ねぇレイ君?」
「何?」
後ろにいるクロナから突然話しかけられ思わず動揺する。しかし、振り向いている場合ではない。何故なら目の前に戦うべき相手がいるのだから。だがそんな事はお構い無しにクロナは俺に言った。
「私が、君を守るから……」
とても優しい声だった。その言葉を聞いた時は俺は申し訳なさそうな顔をして俯いたが、すぐに顔を上げて頷いた。そして二人で協力してアンチネス達の討伐に挑む。
「じゃあ、俺も君を守る。それで良いだろ?」
そしてアンチネス達はD班の所にも現れていた。だがやはり数が多いだけの雑魚だったので、メンバーの中では実力の劣るグーフィーでも倒せる始末。フィオは紫音を守りながらアンチネス達と戦っているが、もうそろそろ体力の限界だ。フィオは目の前が見えなくなってきた。目の前が真っ暗になるという感じだろう。もう息をするのがやっとだ。その様子を後ろから見ていた紫音は、フィオを救おうとアンチネス達の前に立ちはだかった。
「紫音?」
フィオが目の前にいる紫音の行動に対して疑問を持つ。紫音は一瞬フィオの顔を見てからアンチネス達を睨み付け、言った。
「今の私に、記憶なんて物はない…………だから自分の大切な物がわからない…………でも、これだけは言える………!フィオさんは私を助けてくれた!だから、私はフィオさんにお礼がしたい!フィオさんを……………守りたい………!今の私にとっては、フィオさんやヒナタさんにヒトミさん、ダークさん、それにレイさん。私を家族と認めてくれた、今の家族が、今の私の大切な宝物!」
紫音がそう心の中で硬く決意すると、紫音の右手に白いキーブレードが現れた。キーチェーンはピンク色で星みたいな形のお守りだった。紫音はそのキーブレードを見てそれの名前を呟いた
「約束のお守り………。」
おそらく『約束のお守り』と言うのがこのキーブレードの名前なのだろう。しかし、何故紫音がこの名前を知っていたのか誰にもわからない、紫音本人でさえも。紫音はそのキーブレードを構え、アンチネス達に向かっていく。
「紫音…………。」
「フィオ、紫音は君の為に戦いたいんだよ。」
「グーフィー…………、だよね。でも、妙だよね。」
「え?」
「だって、アンチネス達が現れた途端、鈴神さんが姿を消した。それって、おかしくない?」
「いち早くアンチネス達の気配を察して倒しに行ったとか?」
「それならもう数千は数が減ってるはずさ。でも、気配すらしないんだ。鈴神さんの。」
「えぇ!?」
そう。何故かアンチネス達が現れてから鈴神を見かけない。アンチネスを倒しに行ったとしても、リーダー故に他のメンバーよりも強いので、すでに数千は数が減ってるはずなのだが、鈴神の気配すら感じないという事態が起こっていた。まさかとは思うが、やられてしまったのだろうか?そんな疑問を抱くフィオと、それを全力で守ろうとする紫音。紫音はキーブレードや魔法をフルに使ってアンチネス達を薙ぎ倒している。記憶のない紫音だが、ここまで力があるとなると、記憶があった頃に戦った事があると言う事だろうか?そんな疑問達が過るばかりである。
唯一アンチネス達が現れていないのは、B班のいる礎の間であった。B班は先程この部屋に到達したばかりで、ここをアンチネスから守ろうとここに来たのだが、B班はそこで衝撃的な光景を目の当たりにするのだった。
「嘘だろ………?これって………!?」
「あり得ねぇ………!」
「グワァ………!」
「光の…………礎が………!」
ライガが光の礎の前に立ち、なにかとんでもない物を見るような目で礎を見詰めて言った。
「間違いない…………光の礎に、ヒビが入ってる………!」