CHAPTER25【強敵】
「急げ!急いで回復を!」
ライガとドナルドはもう数時間は礎に向かってケアル系統魔法を使い続けている。礎のヒビは少しずつ消えてきたが、もうすでに二人の体力と魔力は限界だ。だがそれでも礎を復活させなければ、アンチネス達が永久に現れ続け、仕舞いにはこの城の全てが占領されてしまう。二人には休んでいる暇などない。
「グワワァーーッ!癒しを!!」
「ザ・ケアルミスト!」
二人が健闘している一方で、ソラとシュージの二人もアンチネス達を倒し終わっていた。お互いに油断は出来ない為かまだキーブレードを持っている。
「やったなシュージさん!」
「あぁ。それより、礎が気になる。礎の間に行こう。」
まだ礎の状態を知らないシュージとソラは礎の間に行くために、まずは謁見室へと足を踏み入れる。そこには大量のアンチネスと、アンチネスと戦っているダークと黒凰の姿があった。
「二人とも!」
叫んだソラが大きくキーブレードを振るい、アンチネス達を凪ぎ払った。ダーク達はソラ達が来たことに気付き、黒凰がソラの背後にいるアンチネスを倒した。
「後ろががら空きだぞ?」
「へへっ。」
黒凰がソラに警告をする。先程のダークといい、黒凰はよく警告をするようだ。その一方でシュージは、チャムナルによってレの音、シの音、ラの音を奏で、緑色の巨大な音符を産み出し、それに乗った。
「これがマジカルライドだ!」
マジカルライドとは、人が一人乗れるくらいの大きさの音符を産み出し、それに乗って戦うという物。シュージは空中戦が何よりも得意であるため、楽にアンチネスの数を減らしていけた。
「超天空!」
ダークが天高く放り投げた太刀を空中でキャッチし、そのまま相手に向かって勢いよく落ちながら斬りかかった。四人の活躍によって謁見室のアンチネスは全滅したようだ
その時、突如拍手の音が三回ほど聞こえた。音は謁見室の出口からだった。四人が出口の方へ振り向くと、そこには白い機関コートを着た人物がいた。だが、先程ミッキーを襲った人物とは別人のようだ。顔がフードで隠されていてわからないのは同じだが、体つきが明らかに女性の物だった。
「見事な物ね、キーブレード使いのみなさん。」
謎の女性がこちらに向かって歩いてくる。シュージ、ダーク、黒凰は彼女を睨むが、謎の女性の視線は三人ではなくソラをずっと見ていた。謎の女性が右腕を軽く振ると、ソラ以外の三人が突然吹っ飛ばされた。
「うっ!」
「ぐわぁ!」
「うわぁ!」
そのまま三人は壁にもたれ掛かったまま気絶した。
「みんな!」
ソラが三人をそれぞれ心配そうに見つめる。本当に気絶しているようだ。ソラは怒りの表情で謎の女性を睨み付ける。
「邪魔だったんだ。その人達。」
謎の女性がそう言った。邪魔だったから三人を吹っ飛ばしたと言うのか。しかも片腕を降るだけで。ソラは感じていた。彼女はこれまでにない強敵だと。
「お前は、一体………?」
「知りたい?」
謎の女性がそう聞くと、ソラは頷く。もはやソラの視界には彼女以外の物が写っていない。謎の女性は静かにソラに近づきながら答える。
「私の名は【ヘルツ】。地獄の声を聞くもの。」
そう言うと謎の女性、ヘルツがようやくフードを外した。その素顔に、ソラは驚愕することになる