CHAPTER28【方針】
「すみません……私の不注意で………。」
やっと戻ってきた鈴神が謁見室に集めたメンバー全員に頭を下げた。メンバーのほとんどが鈴神にリーダーのせいじゃないと口々にする。話を聞くところ、これからの方針を考える為に様々な世界を調べに行っていたらしい。鈴神は顔を上げて、メンバー全員を見る。
「みなさん、我々の方針がやっと決まりました!」
「「「「!」」」」
その言葉で、メンバー全員の視線が一気に鈴神に集まる。特にそれぞれの班のリーダーは鈴神を早く言えと言わんばかりの視線で見つめている。
「まず、A、B班は【ユナイテッド・サテライト】という世界に行ってください。」
「あの、何ですか?そのユナイテッド・サテライトって?」
鈴神に質問をしたのはクロナだった。無論、他のメンバーもこの名前は初耳であり、皆気になっている。
「ユナイテッド・サテライトと言うのは、人間が住んでおらず、ロボットのみが生活する世界です。」
「では、何故その世界へ?」
次に質問をしたのはシュージだった。確かにそんな未知の世界へ行くとなると、何の目的か気になる所だ。
「最近ユナイテッド・サテライトに、白いコートを着た謎の集団が出没しているそうです。しかも、聞いた話では明らかにロボットではなかったとか。」
「まさか、DED?」
「その通りですライガさん。ユナイテッド・サテライトに彼らの拠点があると考えて良いでしょう。ですからA、B班はその世界に行き、拠点を叩いてきてください!」
「「「「「「「「はい!」」」」」」」」
A班とB班の全メンバー、合計8人が鈴神の命令を受け入れ、大きく返事をした。それに鈴神はしっかりと頷き、言った。
「頼みましたよ。」
鈴神がそう言うと、AB連合軍の全員は頷く。
「そして、C、D班には、トワイライトタウンへ行ってもらいます。そこに機関の城への入口があるらしいので。」
「えっ!?」
鈴神の放った言葉に、驚きを隠せないソラ。なんと機関の城のヒントがトワイライトタウンにあると言うのだ。鈴神は話を続ける。
「人手が減って大変ですが、頑張りましょう!」
鈴神の言葉に、C、D班のメンバーは頷く。しかし、ソラだけはしなかった。正確には出来なかったのだ。ソラの頭の中はヘルツ、つまりカイリの事でいっぱいだった。
(何故なんだ?何故カイリは………?)
ソラはあのときの事を思い出しながら心の中で呟いた。それと同時に疑問も抱く。あのとき自分を見ていたカイリの目は、避難の視線だった。まるでこちらに対して深い憎悪を持った、そんな目だった。
「カイリ………。」
思わず流れる一筋の涙。右手を強く握り、震える。あの笑顔がもう二度と戻らなくなるのは嫌だ。そう自分に言い聞かせた。
『ソラ!』
『ソラ……。』
何度も彼女に自分の名前を呼ばれてきた。それは今まで自分を求めていたからだと、初めて実感する。しかし、今では逆に自分が彼女を求めている。
「さてと、」
鈴神が俺の元まで歩きその左隣を指差した。
「そこにいるんでしょう?セイ!」
そう言うと鈴神は右手をかざし、そこから金色の光を放ち、なんとそこから精霊と化してしまっているセイがその姿を現した。しかもセイの姿は何故かみんなに見えてしまっている。
「あっ!」
「「セイ!?」」
思わずみんなが驚く。セイは以前、世界を崩壊まで追い詰めた敵だった。それが今、目の前にいるのだ。
《何故わかったか知らないが、なにか用か?》
セイが空中で腕組をしながら鈴神を見下ろす。鈴神はセイを見上げ言う
「貴方にも協力して欲しいんです!」
《まさに外道だな……それで、どうしろと?》
答えになっていない所か、逆に質問をした。だが、この発言からするにセイはOKという事なのだろう。
「貴方には、ソラのサポートをお願いしたいのですが……。」
その言葉にソラは鈴神に食い付きそうになったが、セイの発言に止められる事になる。
《良いだろう。ただし、これからの俺はセイじゃない。》
「?」
《これからは、【ディア・マークス】。ディアと名乗らせてもらう。》
セイ改めディアは鈴神の頼みを聞き入れた。鈴神が右手を差し出し、ディアと握手をする。その時、突然金色の光が放たれ、ディアの身体は精霊の物から人間の物へと変わっていた。
「こ、これは!?」
流石のディアもこれには驚く。鈴神が握手していた右手を外し、言った。
「頼みましたよ。」
「あぁ。」
「それではみなさん、出発は三日後!それまでにしっかりと準備しておいてください!」
「「「「はい!!」」」」
こうして、今日の会議は終わり、メンバーは解散する